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米株式投信のリターンに衰え、住宅ローン焦げ付き問題が株価に足かせ
3月29日(ブルームバーグ):米株式投資信託の1-3月(第1四半期)のリターンは2.7%と、前四半期の半分未満にとどまった。約10年ぶりの住宅市場の落ち込みが、株式相場上昇に足かせとなっているためだ。
2006年10-12月の株式投信の平均リターンは7.8%。業界全体の投信運用資産は同期に初めて10兆ドルを超えた。ファンドマネジャーらはその後、リターン低下に見舞われている。
投信調査会社モーニングスターのデータによると、金融株に投資するファンドのリターンはマイナス1.2%。住宅の差し押さえ増加を受けた銀行や住宅金融会社の株価下落が響いた。公共株に投資するファンドのリターンは3月27日時点で7.9%と好調。債券ファンドの年初来の平均リターンは1.3%。高利回り債ファンドが債券ファンドのリターンがけん引した。
モーニングスターのアナリスト、ジョン・クマリアノス氏は「誰もが、サブプライムという新しい言葉を学んだ」と述べ、「もっと大きな問題は、信用が全面的に引き締まり、住宅市場の減速が一段と劇的に進むかどうかという点だ」と指摘した。
株式投信の種類別では、時価総額が10億―80億ドルの中型株を運用対象としたファンドが好調で、年初来の運用成績上位10本では6本が中型株ファンドだった。クマリアノス氏は、中型株の利益成長率は大型株を上回る一方、小型株よりも低リスクだと受け止められているため、「中型株が支配的な状況だ」と指摘した
住宅ローン返済が米消費者に重荷-ホーム・デポやウォルマートに影響も
3月29日(ブルームバーグ):米ミネソタ州アップルバレーに住むアル・ヤニゲスさん(65)が最初に家を買ったのは2004年のことだが、昨年10月以来、毎月の住宅ローンの返済額が16%増えて2417ドル(約28万3000円)となった。来月1日からは再び引き上げられる。
独立して音楽を教えているヤニゲスさんの1カ月の稼ぎは2800ドル。今は1日1回しか食事をしていない。公共料金も支払っていない。毎月の住宅ローン返済も遅れ、「住宅ローンがすべてを変えてしまった」と語り、「本当にやってられない」と嘆く。
信用力の低い借り手を対象としたいわゆるサブプライムローンで住宅を購入した人は全米で約80万人に達する。ヤニゲスさんもその1人で、彼のような人々は今、毎月のローン返済に苦しんでいる。こうした消費者が家具や衣料品への支出を抑えれば、米住宅関連用品小売り会社のホーム・デポや小売り世界最大手、米ウォルマート・ストアーズも影響を受ける公算大だ。
ニューヨークの小売りコンサルタント会社、ダビドウィッツ・アンド・アソシエーツのハワード・ダビドウィッツ会長は「消費の中心は食品のような必需品になっていくだろう」とし、「消費者は締め付けられることになる」と語る。
全米抵当貸付銀行協会(MBA)は今月13日、06年10-12月(第4四半期)のサブプライムローンの延滞率が4年ぶりの高水準になったと発表。すべての住宅ローンを対象とした統計では、差し押さえが過去最悪の水準となった。
ホーム・デポ
ダビドウィッツ会長は、サブプライムローンの借り手クラスの所得者層をターゲットとした住宅関連用品販売業者や小売業者は最大のピンチだと感じている可能性があると指摘する。ホーム・デポの広報担当、ジェリー・シールズ氏はコメントを控えている。
アトランタに本社を置くホーム・デポは先月、08年1月期は少なくとも1990 年以来で初の減益になるとの見通しを示し、住宅市場の低迷をその理由に挙げた。
ウォルマート株を含む90億ドル相当を運用するシアトルの投資会社ウエントワース・ハウザー・アンド・バイオリッチのファンドマネジャー、パトリシア・エドワーズ氏は、ウォルマートでは衣料品やDVD(デジタル多用途ディスク)などの製品の売上高が減少すると見込んでいる。
ウォルマートの広報担当、ジョン・シンプリー氏はコメントを差し控えた。同社は3月の売上高を4月12日に発表する。ウォルマートによれば、06年の既存店売上高は少なくとも27年ぶりの低い伸びとなった。
住宅市場の低迷はレジャー関連産業にも影響を与えそうだ。世界最大のクルーズ会社、米カーニバルは国内の消費者が休暇での支出を減らしていることを受け、今月、カリブ海旅行を値下げした。
同社のハワード・フランク最高業務責任者(COO)は16日、消費者が「依然としてガソリンの値上がりや金利上昇、住宅ローン返済、不動産税の影響を感じている」と指摘した上で、「サブプライムローンの問題が一定の役割を演じている」との見方を示した。
住宅ローン返済に苦しむヤニゲスさんは、ショッピングやクルーズは最も縁遠いものだと話す。今は「自宅を取られないよう闘っている」のだという。
市場の【視点】業績予想はなぜ慎重か、変質がもたらす投資の新時間軸
3月29日(ブルームバーグ):その差6%――。昨年3月時点で大手証券系シンクタンク2社のアナリストによる2006年度の主要上場企業の増益率予想と、その後実際に会社側が示した計画数値との間にはこれだけの開きがあった。投資家は思わぬ下振れを知ったその瞬間、失望感に襲われる。
昨年5月中旬から1カ月あまりかけ、日経平均株価が1万7000円台から1万4000円付近まで大幅下落した一因とされたのが、市場における業績への期待感と、保守的な企業側見解とのギャップだ。日経平均は3月から4月上旬まで業績の伸びを見込んで10%以上上昇していたため、投資指標が割高となってその理論的根拠を失い、水準訂正を強いられた。
06年度の場合、最終的にはアナリスト予想の水準方向に収れんされる見通しであるものの、当初これほどまでに両社の見解にギャップがあるのはなぜなのか。背後にはどうやら、会社側計画の性格が以前と比べて変質したことがあるようだ。今年も間もなく、温度差を感じそうな季節を迎える。
有力視される6期連続増益
3月期末までわずかとなり、今年も投資家の関心は4、5月に明らかになる企業の07年度業績計画に移ってきた。06年度は5期連続増益となり、1970 年以降で過去最長だった第1次オイルショック時(1976-80年度)と並ぶ見込み。07年度についても、企業の設備投資の高まりや原材料価格の上昇一服による利益率改善を原動力に、初の6期連続増益が有力視されている。
主要企業の利益見通しについて、野村証券金融経済研究所(NOMURA 400ベース)では06年度が同8.4%増、続く07年度は今年度予想比12.2%増と予測。大和総研(DIR310ベース)でも、06年度は前期比7.9%増、07年度は7.9%増との試算結果だ。
第一生命保険相互株式部の国井保博課長は、「来年度業績は最終的に経常2けた増益を予想している。ただし、為替の不透明要因や株式市場のプレッシャーから期初の会社計画は保守的になりそうだ。おそらく期初計画は、5%増益以下で出てくるのではないか」と予測する。
4分の3を終えても慎重維持
保守的な企業側の姿勢は今期の場合、第3四半期(10-12月)が終わっても維持されていた。これまでの各四半期業績がすべて経常2けた増益となりながら、通期の会社計画は前期比4.9%増益。第3四半期までの進ちょく率が 79.4%、今年に入ってマクロ情勢に大きな変化がない中でも、アナリスト予想比で会社計画は低水準に放置されたままだ。
ちょうど1年前にも「アナリストは強気、会社計画は慎重」という構図は見られた。まだ05年度だった昨年3月時点でのアナリストによる翌年度(06 年度)予想は、野村金融研が7.0%増益、大和総研が7.6%増。これに対し、会社側が4、5月に発表した06年度の経常増益率は1.6%増。この約6%のギャップが投資家の間で失望を招き、株式相場は大きく調整する。
06年度業績について、「期初の会社計画だった1%増益に対し、最終的には2けた増益に届きそうな状況。保守的な見通しも、あまりに度が過ぎているのではないか」――。企業側の公表姿勢に、苦言を呈するようにこう指摘するのは野村金融研の海津政信所長。期初時点での同研究所と会社計画とのかい離率を見ると、98年から02年までは会社計画がおおむねアナリスト予想を上回るが、逆に03年以降は会社計画が常にアナリスト予想を下回る傾向という。
還元礼賛、先鋭さ増す株価も一因
今年度に保守的な期初計画が目立った企業の1つが、システムインテグレーションサービスなどを手掛ける野村総合研究所だ。同社の06年度連結経常利益予想は期初が前期比0.6%増だったが、第1四半期終了時には11%増、中間決算では16%増へとそれぞれ増額修正。しかし、UBS証券が最終的に 24%増を予想するなどアナリストは依然、会社計画は控え目だと見ている。
同社の藤沼彰久社長は、「各現場から積み上げたものをまとめるプロセス重視の予算の作り方をしている。現場が抑え気味に予算を出してくると、結果として保守的になってしまう傾向があり、経営課題として認識している」と説明した。その上で藤沼社長は、「業績が計画に比べて下振れするよりは上振れした方が良いという一面もある」と述べている。
株主還元への高まりによる公約配当性向導入が、慎重な計画の一因とする見方もある。公約配当性向を打ち出す企業は、業績が下方修正となれば、配当を連動して引き下げる必要性が生じる。ある機関投資家が保守的な予想を発表する企業トップに理由を正したところ、経営者として減配は耐えられないとの答えが返ってくることが少なくないそうだ。
総合化学大手の昭和電工の高橋恭平社長は、「期待が高まったり、あるいは逆になったりという市場の反応が非常に先鋭的で、しかも想定より大きい。これは多くの経営者が感じていることだと思う」と語る。株主重視の姿勢が企業側に求められる風潮の昨今だけに、マイナス材料を出してしまった時の恐さを経営陣も重々感じている。
実際、業績修正に対する株価の感応度は徐々に強まっているようだ。野村金融研が95年から99年、2000年から06年5月にかけての業績と株価との関連性をそれぞれ調べたところ、1%の会社業績修正に対する相対リターンの感応度は、95-99年が上方修正でプラス0.02%、下方修正でマイナス0.03%。これに対し2000-06年5月になると、上方修正でプラス0.05%、下方修正でマイナス0.05%と数値が拡大。また2000年以降は、「下方修正で売られる方の株価反応度が大きくなる傾向にある」(松浦寿雄ストラテジスト)という。
投資家層が変化、皮肉な格差演出
業績反応度の高まりは、投資家層の変化が後押しした側面がある。90年に 50%程度だった広義の株式持ち合い比率は95年以降に急速に低下、現在では 20%程度と半分以下の水準だ。代わって純粋な運用成果を求める外国人投資家の存在感が高まり、さらに「最近では外国人の資金が短期化し、彼らが四半期決算の動向も注視している」(コメルツ投信投資顧問・山本平社長)。
特に下方修正時の敏感さに関連し、会社の業績計画そのものの意味合いが以前と比べて変質したと指摘するのはT&Dアセットマネジメントの衣川明秀チーフ・ファンドマネージャー。「多少の経済変動があってもこの水準は必ず確保するというコミットメント(公約)へと性格が変わった」(同氏)ため、達成できなかった場合、当事者でさえ予測できない悪材料が内包されているのではないかとの危惧が株価の大きな変動を引き起こしやすいという。
会社計画が「必達目標化」する中、堅めの期初計画を徐々に増額していくケースと、そうでないケースでは同じような業績内容でも株価推移に明確な違いが出てくる。07年3月期経常利益が同じ20%台の増益が見込まれるJUKIとトプコンがその例だ。工業用ミシン世界トップのJUKIは、期初計画が 15%減益だったが、第1四半期から第3四半期まで四半期ごとに予想を増額し続け、現在は29%増益見通し。半面、測量機大手のトプコンは期初計画が 22%増益で、中間決算では39%増益に増額修正。しかし、1月には一転して下方修正を発表し、現在は期初とまったく同じ22%増益見通し。増益率で見る着地点はほぼ同じ両社だが、今年度に入ってから3月28日までの年間株価パフォーマンスはJUKIがプラス3.6%、トプコンはマイナス20%と好対照だ。
控え目時代への処方箋
控え目な予想が与える一般的な株式市場への影響について、中央三井アセットマネジメントの斉藤公善取締役運用部長は、「最終的に企業業績が上方修正されれば配当も引き上げる企業が多く、中長期運用の投資家にとって実害は小さい。慎重な数値で一時的に失望売りが出るなら、買い増せば良いだけのこと」と冷静に受け止める。こうした調査分析力のある機関投資家に対し、計画値がどこまで控え目かどうかが判断しにくい個人投資家とのパフォーマンス格差は今後広がることも予想される。
一方、来月からの決算発表で保守的な期初予想が続出した場合、警戒されているのは海外投資家の反応だ。T&Dアセットの衣川氏は、「国内投資家は昨年も保守的だったとの連想が働く。しかし海外投資家は、マクロ指標などの発表数字に忠実な反応を示しやすい。保守的な計画が発表されれば失望売りが出るだろう」と予測する。海外投資家に対する警戒から、4月の決算発表シーズンが接近するとともに、株価の上値は次第に重くなる可能性がある。
もっとも、4-6月期にいったんアナリスト予想が会社計画にさや寄せして株価が伸び悩めば、7-9月期には上方修正期待も再び高まりやすい。GCIアセット・マネジメントの末永孝彦社長は、「東京市場のバリュエーションが高くないことから、グローバル成長が続くなら株価の調整幅は大きくないだろう。企業側の慎重スタンスが発表されて下げたところを、丹念に拾うアプローチが有効ではないか」と指南する。
企業側の慎重計画派が優勢になる中、少数派ながら異論を唱える向きもある。軸受け大手メーカーのNTNは06年度の期初計画から10%増益を見込み、中間決算で23%増益へと増額した。鈴木泰信社長は、「06年度期初計画は過去の営業努力が花開くとの『背水の陣』で予想を出した。中間段階の増額も為替の追い風が大きかったため」と一線を画す。その上で鈴木氏は、「経営に携わる者の目線が控え目だけで良いはずがない。いつまで円安の追い風が続くかが分からない07年度は企業にとって実力が試される年。経営者の目線によって業績に差が出てくるだろう」と意気込んだ。
投資家マーク・ファーバー氏:米国株式市場、「弱気相場の始まり」(2)
3月29日(ブルームバーグ):1987年の米株急落を言い当てたことで知られる投資家マーク・ファーバー氏は、コペンハーゲンでインタビューに応じ、S&P500種株価指数が2月20日に付けた6年ぶりの高値を上抜く可能性よりも、下落する可能性の方が高いとの見方を示した。物価上昇率の加速と景気減速の継続が理由。
同氏は「まさに弱気相場が始まろうとしている。通常、金融株の動向があまり良くないことは相場にとって悪い予兆だ」と述べた。
ファーバー氏はインフレと原油高が経済成長を抑制し、S&P500 種が4年ぶりの大幅安となった2月27日から戻り切らない可能性があるとした。
さらに「米政府がインフレとして発表している指標は平均世帯の生活費の上昇を示していない」と指摘。トウモロコシや小麦、大豆、食肉の価格は食費を押し上げていると語った。
同氏によると、原油高のほか、米国の信用力の低い個人向け住宅ローンの不履行により、新興市場への投資資金が減るため、株価の下落は中国など新興市場の方が大きくなる。また、米国の経常赤字の拡大が世界の株価を押し上げていると付け加えた。
ジム・ロジャーズ氏:米のサブプライム住宅ローン問題は悪化も
3月29日(ブルームバーグ):著名投資家のジム・ロジャーズ氏は29日、信用力の低い借り手向けのサブプライム住宅ローンをめぐる問題は悪化するとの見方を示した。米投資会社ビーランド・インタレスツの会長であるロジャーズ氏は同日香港で開かれた会合で発言した。
米国ではサブプライム住宅ローンの焦げ付き急増で、過去1年間に30社あまりが営業停止や経営破たん、身売りに追い込まれている。
ロジャーズ氏は、「米国はこの数百年で、住宅バブルを何回も経験した。今回は最悪になるだろう。以前は、住宅を買うには何か資産が必要だったが、今のように1ペンスの頭金すら払わずに家を買える状況は、歴史的にも初めてのことだ。サブプライムローン市場は悪化するだろう」との見方を示した。
また「わたしなら、ファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)を空売りする」と述べた。
債券は上昇、長期債など幅広く押し目買い―10年利回り1.64%(終了)
3月29日(ブルームバーグ):債券相場は上昇(利回りは低下)。28日の米国株式相場が連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の議会証言後に下げたことを受けて国内株相場が続落して始まり、日経平均株価が一時200 円を超す大幅な下げとなったことが債券先物の買いを促したほか、前日までの下落で長期債など現物債に幅広く押し目買いが入ったことも相場の支えとなった。株価は午後に戻したものの、根強い需要を背景に堅調地合いを持続した。
T&Dアセットマネジメントの竹田竜彦ファンドマネジャーは、このところ相場が調整していたので買いが入ったことや、最終的にはプラスになったものの、日経平均が大幅に下げていたので買い戻しを促したと指摘。「何か新しい話が出たわけではなく、あす物価や生産の指標が発表されるので、売り持ちに傾いていた向きが中立に戻したに過ぎない」と話した。
東京先物市場の中心限月6月物は、前日比16銭高い134円10銭で始まった。いったんは134円5銭にやや伸び悩んだが、日経平均の下げ幅が拡大すると買いが優勢になり、29銭高い134円23銭まで上昇した。午前の取引終盤には、株価の下げ渋りで上値は重くなり、午後に入ると再び134円5銭まで水準を下げたが、1時半以降は134円15銭前後での推移となり、結局は24銭高い134 円18銭で取引を終了した。
この日の債券相場は、米株安を受けた朝方の国内株続落や、海外の為替市場で1ドル=116円台と円高・ドル安基調に振れたことを好感して、予想以上に上昇した。前日までの相場下落で、長期債や超長期債利回りに値ごろ感が出ており、投資家からの買いが入ったことも相場の押し上げ要因となったもようだ。
大和証券SMBC債券調査部の鰺坂亮平チーフJGBストラテジストは長いところに買いが入っており、サポートされた格好だと説明。「きのうの売りは先物中心で、134円をいったん割り込んだが、そこではそれほど多くなかったものの、国内投資家からの買いも入っていた。カーブ上で10年ゾーンなどは安くなっていたほか、売る方もなかなか相場が下がらないので買い戻しを入れたようだ」と説明した。
この日の株式相場は、午前に大幅続落となったが、午後に戻した。バーナンキFRB議長によるインフレ警戒発言で米国の利下げ期待が後退したほか、為替相場の円高進行を受け、輸出株中心に売りが先行した。日経平均は9円21 銭高い1万7263円94銭でこの日の取引を終了。午前には218円51銭安い1万 7036円22銭まで急落する場面があった。
一方、28日の米債相場下落の影響は限定的だった。28日のロンドン市場で円債先物が上昇したものの、朝方の買い一巡後には、徐々に米金利高が反映されるとみられていたが、押し目買いの動きの影響が大きかったようだ。
バーナンキFRB議長は28日、上下両院合同経済委員会で証言し、米経済の先行きに不透明感が増したことに触れた一方、「われわれの政策はまだインフレ抑制を中心にしており、今のところそのリスクの方が高い」と述べ、インフレ警戒姿勢を緩めない立場を鮮明にした。
28日の米債市場では、弱めの経済指標を受けて買いが先行していたが、議会証言を受けて売りが優勢となった。米10年債利回りは4.62%程度まで上昇した。米財務省が午後に発表した2年債の入札結果は、応札倍率が2.81倍と前回の3.04倍から低下するなど低調な結果となった。
新発10年債利回りは1.64%
現物債市場で10年物の285回債利回りは、前日比1ベーシスポイント(bp) 低い1.66%で始まった。午前9時30分すぎから水準を切り下げて2.5bp低い 1.645%まで低下したが、午前の終値は1.65%だった。午後に入ると再び1.66%まで低下幅を縮めるが、2時すぎから再び買われる展開となり、3時すぎからは3bp低い1.64%で取引されている。
前日の取引では、新発10年債利回りが予想以上に上昇し、今月はじめ以来の高い水準となる1.67%で引けた。年度末要因で国内投資家が積極的に動けないなかで、海外投資家などからの売りが出ていたほか、利回り曲線のスティープ(傾斜)化基調に伴う売りも優勢だった。
ただ、追加利上げの時期が今夏以降との見方が市場コンセンサスになるなか、金利先高観は強まっていない。市場では「買いのターゲットとされる水準に入ってきている」(新光証券・三浦哲也債券ストラテジスト)との見方もあり、新たな材料が出ないかぎり、10年債の1.7%付近、5年債利回りの1.2%台の水準では押し目買いが入ると期待されていた。
あす重要指標発表、全国コアCPIはマイナスか
あす30日には月次ベースの重要経済指標の発表が目白押し。鉱工業生産や家計調査など発表されるが、最大の注目は2月の全国消費者物価指数(CPI)。生鮮食品を除くコアは、前年比マイナスに転じる可能性が高い。3月都区部も予想通りに横ばいになると、全国CPIのマイナスで買い安心感が広がる可能性がありそうだ。
もっとも、2月の全国コアの前年比0.1%マイナスはすでに市場で織り込み済みとの声も多い。T&Dアセットマネジメントの竹田氏は、「マイナス0.2%くらいまではある程度想定されており、さらに買い進まれる材料となるにはそれ以上の下振れが必要だ。新年度は売りからという投資家が多いので、万が一プラスに転じた場合は素直に売られるだろう」と話していた。
ブルームバーグ・ニュースが民間エコノミスト37人を対象とした調査によると、生鮮食品を除く全国のコアCPI前年同月比は0.1%下落、3月の東京都区部(中旬速報値)のコア指数は横ばいが見込まれている。
(債券価格) 前日比 利回り
長期国債先物6月物 134.18 +0.24 1.924%
売買高(億円) 36019
10年物285回債 100.51 1.64(-0.03)