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「投資ポルノ」はご法度-米投資会社DFAが説くファマ教授の教え
3月27日(ブルームバーグ):ウェストン・ウェリントン氏は新しいメンバーを見渡すと、ウォール街での最大の弊害の1つである「投資ポルノ」には手を染めるなと警告した。
同氏は投資運用会社ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズ(DFA、カリフォルニア州サンタモニカ)のバイスプレジデント。満員の会場で「次なるマイクロソフト」「ハイテク株でみんなリッチに」といった雑誌の見出しのスライドを見せては、こうした内容を読み銘柄研究を徹底的にする投資家は自らを欺いていると説く。運用資産1230億ドル(約14兆4970億円)のDFAは株式投資する企業の動向や収益を気にしない手法を取っているのだ。
その投資手法について「目隠ししながら歩くようなもの」と語るウェリントン氏はじめDFAの面々は、誰にも将来の株価は予想できないと説く。この信条の基にあるのはシカゴ大学教授でDFAの取締役でもある経済学者のユージーン・ファマ氏の唱えた効率的市場仮説で、株価は既に市場参加者全員が持つ情報すべてを反映しているので、積極的に銘柄選択する投資家は長期的に市場に勝つことはできないというもの。
この教えは、DFAがこれまでに契約した独立ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)500社を通じて、広められている。DFAの資産は過去10年で5倍に拡大しているが、その最大の理由の1つがこうした信奉者の存在だ。
DFAは26年前の設立以来の大半を年金基金や企業といった大規模な投資家向けの運用を手掛け、個人投資家は相手にしてこなかったが、このところ、その逆の方向に向かっている。現在、運用資産の6割以上を個人投資家からの資産が占め、5年前の43%から割合が増えた。
資金は順調に流入している。DFAは資金調達規模で米投資運用会社5位だ。DFAはこれをほとんど広告宣伝活動抜きに成し遂げた。
皆無に等しい銘柄研究
ファマ氏の教えにのっとり、DFAのファンドマネジャーが行う銘柄研究は皆無に等しい。企業の最高経営責任者(CEO)と話をすることもなければ、決算発表の電話会議に参加することもない。銘柄売買において人間の判断よりも定量分析に重きを置いているからだ。
S&P500種などの株価指数を構成するすべての銘柄を購入するインデックス投資ファンドマネジャーとは異なり、DFAは無差別に選別されたようにもみえる大量の株式を買う。同社は企業の時価総額や株価に対する簿価を基準に独自の資産クラスを定義し、売買すると比較的コストが高いためあまり取引されていない銘柄を取り除いていく。
かくして、同社の旗艦ファンド、DFA米マイクロキャップ・ポートフォリオは時価総額5億ドル未満の2487社のうち、2442銘柄を保有。小型株の99 %を保有していることになり、このファンド自体が1つの市場にみえる。投信調査会社モーニングスター傘下のイボットソン・アソーシエイツは同ファンドのリターン(投資収益率)で1982年から2006年までの小型株リターンを示す。
モーニングスターによる米マイクロキャップの格付けは3つ星(最高位は5つ)。同社のアナリスト、ソニヤ・モリス氏は同ファンドについて、同種の投信8割よりも変動度合いが大きいと指摘している。
ウォール街において、積極的に銘柄研究して投資するやり方とDFAのような受身手法のどちらが優れているかは、終わりのない論争だが、個人がDFAの投資に参加するには、同社が契約するIFAを通じてしか方法はない。IFAはDFAが主催する会議に自費で強制参加し、ファマ教授はじめ、同氏の効率的市場仮説に貢献したダートマス大学のケネス・フレンチ教授らを含む取締役の講演を聞く。DFAが1981年設立当初に個人投資家の参加を避けたのは、時勢に流される傾向があるためだったという。