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株売買急増の一因にアルゴリズム取引-システム処理が市場変革も(2)
3月27日(ブルームバーグ):東京証券取引所では3月、1日平均株式注文件数が26日までの集計で688万件となり、過去最高となった。2006年1月はライブドア事件後で注文・約定件数が急増したが、これを上回った。この背景には、証券会社が機関投資家からの注文を特定の論理やルールに従って自動的に処理するアルゴリズム取引が一段と普及してきたことがあるとみられる。
注文・約定件数の急増に関して、クレディ・スイス証券エレクトロニックトレーディング部長の濱田智彦氏は「アルゴリズム取引の増加」を指摘する。アルゴリズム取引とは、「コンピュータシステムが自動的に発注処理を行う仕組み」(野村総合研究所・金融ITイノベーション研究部の田中隆博上級研究員)と概括できる。
証券会社では、手作業だった売買業務のシステム化は行われていた。田中氏は「取引所で扱うすべての銘柄について、どの銘柄を、いつ、どれくらい売買したなどの情報をリアルタイムに活用することで、システムが相場状況を判断し、その状況に最適な取引価格や数量、取引タイミングを自動的に発注していくのがアルゴリズム取引だ」とし、「現在日本で多くは外資系だが、日本でも一気に普及する」という。
東京証券取引所の西室泰三社長は27日の記者会見で、システムを利用した注文急増に関して、「アルゴリズム取引の利用状況については個別に情報を収集してきたが、システムの全容を把握するのは困難になってきた」という。また、「アルゴリズム取引など人手を介さない取引については全体の取引に対しての比率や増減の予測、現在の発注件数、システム増強に伴う発注可能件数の増減予定など取引参加者に売買システムの利用状況について定期的に報告する仕組みをつくりたいと考えている。今年の秋には実施したい」と述べた。
取引システム自体が商品価値を持つ
従来の自動化システムとの違いについて、田中氏は「システム自体が商品化されていること」と指摘し、「各証券会社の売買執行がうまいか、自己売買で対応できるかなどの各社が持つ独自のプログラムとして取り入れ、そこに付加価値を置いてもらうことだ」という。証券会社は「売買の執行方法のアドバイザー」として、他社とどのように差別化してサービスを提供していくかにかかっているという。
クレディ・スイス証券の濱田氏は「トレーディングに対するサービスがより明確化される」とし、「今まで証券会社はリサーチやセールスに対する対価として手数料が支払われていたが、今後はトレーディングの執行サービスに対して手数料をもらうようになる」という。さらに、濱田氏は「トレーディングやリサーチに特化した証券会社も出現していくようになる」とも述べ、「証券会社は事後執行分析のリポートを出し、顧客に最適な執行を提供していく執行コンサルタントへと変化する」という。
戦略的な取引として活用
一方、市場関係者にはアルゴリズム取引について、戦略的に活用できるとの見方もある。野村資本市場研究所の井上武主任研究員は「アルゴリズムは市場のインパクトを抑えるだけでなく、より戦略的な取引のために活用できる」とし、「アルゴリズム取引の入力パラメータにニュースを取り込むようなものも出てきている」と語る。企業の発表情報やニュースが出た場合、その株式売買の注文をコンピューターが判断して自動的に執行させることも可能という。
また、井上氏は、適時に公表されず、事後的にしかその存在が確認できない取引需要(流動性)の総称である「ダーク・プール」という言葉を用い、「アルゴリズム取引でダーク・プールが拡大している。市場にさらされない形で売買執行も可能だ」と述べる。アルゴリズム取引を使うと、密かに売買を執行することも可能になるという。
米国の動向に追随
クレディ・スイス証券の濱田氏は、アメリカのアルゴリズム動向について「本年度中にアメリカでのアルゴリズム取引は取引全体の3分の1以上を占めるようになる。あと3年後には5割を超えるだろう」と予測している。
野村資本市場研究所の井上氏は、アメリカの株式市場間競争のなかで「流動性の分散が市場内外で拡大してきている」とし、「アメリカでのアルゴリズム取引の普及が、循環的に流動性の分散を促す要因になっている」と指摘する。また、「日本の市場はアメリカとの共通点が多く、取り扱う注文量の増大などアルゴリズム取引も同様の道をたどる」とみている。
さらに、井上氏は「日本も複数市場へのアクセスがネットワーク技術の進展によって、より広範囲の市場を対象に、アルゴリズム取引で積極的に流動性を探しにいく形へと進化していくだろう」という。日本もアメリカ市場に追随し、取引所や証券会社のアルゴリズムシステムが進化して、優劣も明確になりそうだ。
【月別東証の株式注文件数平均一覧】
<2007年>
1月 2月 3月(3月26日まで)
6,113,014件 6,723,069件 6,886,891件
<2006年>
1月 2月 3月 4月
5,945,473件 5,941,453件 4,943,244件 5,350,214件
5月 6月 7月 8月
5,567,336件 5,431,398件 5,215,527件 5,032,476件
9月 10月 11月 12月
5,043,623件 5,496,439件 5,764,445件 5,212,119件
<2005年>
1月 2月 3月 4月
2,811,650件 3,066,316件 3,249,952件 3,057,459件
5月 6月 7月 8月
2,989,018件 3,168,633件 3,276,829件 3,854,986件
9月 10月 11月 12月
4,383,201件 4,883,653件 5,039,559件 5,404,503件
2007年03月26日号【決意】
村上正邦元労相の冤罪が懲役2年2月という1、2審判決を「みちゃぁいられない」ので月刊タイムスに「検察ウォッチャー50年がみた政財界汚職と検察の実像 ファッショの道を歩き始めた検察の変貌を村上事件で検証!」と題する手記を連載することにした。
戦後検察の歴史を彩った「岸本義廣も馬場義続も布施健も伊藤栄樹も地下で「ファッショの道を歩き始めた検察の変貌を怒っている」とも思うからだ
●連載は5項目で構成
連載は13日発売の「月刊タイムス」から始まった。「“悪のイメージ”を増幅された岸本」「経済検察VS思想検察の暗闘の果て」「『村上逮捕』で変質した検察の体質」「検察史に残る汚点を印した村上逮捕」「検察の体質を決定づける村上事件」の5項目から成る。
検察ファッショというのは捜査不備、証拠隠しが目立ち、明らかに恣意捜査により逮捕、起訴が行われているからだ。
●受託収賄は冤罪
裁判記録からみた村上事件は「政治資金規正法違反事件」であって「受託収賄事件」ではない。罪刑法定主義からいえば受託収賄というのは冤罪である。冤罪がどうして懲役2年2月なのか。
それは検察の公訴事実に対し適切な防御活動がなされていないからだ。7日に提出された上告趣意補充書によれば「代表質問に関する初めての最高裁判断」「斉藤十朗・元参院議長の「所見」」「憲法51条違反」「証人尋問の必要性」の4項からなり、「代表質問に関して刑事責任を問うことは憲法51条に反し許されない」としている。
●公訴事実
起訴状などによると、
1996年1月10日、参議院議員会館731号室にKSDの古関忠男理事長の訪問を受けた村上被告が約2週間後に予定されていた参院本会議で行う代表質問で大学設置の後押しを頼まれた。
同年6月上旬ごろにもほかの議員にこの問題に取り組むよう勧誘説得することを古関元理事長から頼まれ、その見返りとして
同年6月25日から平成10年7月26日までの間、前後26回にわたり、村上が実質的借主である東京都千代田区永田町所在のメタボ阪急永田町ビル701号室及び702号室の賃料相当額合計2、288万円を、大和銀行参議院支店に開設された正邦会中野茂宏名義の普通預金口座に振込送金を受け、あるいは、現金による支払を受けて収受した。
村上が、平成8年10月2日ころ、議員会館・村上事務所において、古関から、現金5000万円を収受した。
●憲法51条違反なら
繰り返すが、上告趣意補充書で主張する「代表質問に関して刑事責任を問うことは憲法51条に反し許されない」なら、1審初公判における村上側の対応は「憲法51条違反」を柱に「公訴棄却」の申立をするのが適切な防御策なのである。罪状認否で検察側提出の証拠採用に同意するなど愚の骨頂、明らかによる準備不足による防御過誤。
防御過誤は被告人の自己責任で、2年2月も刑務所に行かねばならないなど記者(鷲見一雄)は断じて納得ではないところである