3/5 司法ジャーナル 【粉飾決算】
2007年03月05日号【粉飾決算】
情報技術(IT)業界での不正経理がまた明らかに、大阪地検特捜部、アイ・エックス・アイを、証券取引等監視委員会、沖縄の「サイバーファーム」を捜索
●日本IBM大阪事業所なども
大阪地検特捜部と証券取引等監視委員会は28日、大阪市の情報システム会社アイ・エックス・アイ=IXI、民事再生手続き中=が、複数業者間で架空の取引を繰り返し決算を粉飾していた疑いが強まったとして、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑などで同社本社など関係先を捜索した。
取引先となった日本IBM大阪事業所(大阪市)や大手リース会社の東京リース(東京)なども捜索、各社の幹部社員らから任意で事情聴取した。
●ヘラクレス上場「サイバーファーム」も
証券取引等監視委員会は28日、「アイ・エックス・アイ」の架空循環取引事件に絡み、大証ヘラクレス上場のITベンチャー「サイバーファーム」(本社・那覇市)にも、IXIや金融会社「東京リース」との間で架空循環取引を行い、売上高を水増ししていた疑いのあることを把握、粉飾決算の疑いがあるとみて、那覇市の本社など4カ所を証券取引法違反容疑で家宅捜索した。
●架空循環取引という手口
捜査当局の調べなどによると、IXIは日本IBMと東京リースの取引に介在。資金と伝票だけを10社前後の下請け協力会社(IT企業)の間で回し、多額の売り上げがあったように装う架空循環取引を行っていた。サイバー社も当初、この架空循環取引に参加し、手数料を得ていたという。
関係者によると、サイバー社もIXIと同様、複数の協力会社を使った循環取引を計画。昨年夏ごろ、東京リースとの間で数億円規模の取引を始めた。これを受けて東京リースはソフトウエア開発(商品)に協力する下請け会社(協力会社)に代金を先払いした。
しかし、今年1月にIXIが経営破たん。これを機に、サイバー社は東京リースに代金を支払わなくなった。サイバー社は「(IXIと)今は取引がなく、債権はない」と否定している。
また、東京リースを利用した架空循環取引の取りまとめ役をしていた会社が別に2社あり、同社へは総額約50億円が未払いになっているという。
●売上高の8-9割が水増し
ところで管財人から一連の架空循環取引に関与したとみられ、特別背任容疑で告発された元常務ら4人のうちのAが「03年ごろから架空循環取引を始めた。売上高の8-9割を水増しした」と説明したことも判明。特捜部は監視委と協力して押収書類を分析、不正経理の実態解明を進める。
関係者によるとIXIは昨年7-8月、東京リースに約100億円のソフトウエア開発を発注した日本IBMとの間で債務引き受け契約を締結。東京リースの下請け業者からソフトの納入を受けて販売し、東京リースに代金を支払うはずだったが、結局、当時担当だった元常務らが簿外処理し、会社に約103億円の損害を与えたとされる。
この取引では、ソフトは実際にはどこにも納品されず所在不明であることが管財人らの調査で発覚。当初から架空だった可能性もあるという。
●アイ・エックス・アイ
IXIは89年設立で、資本金約42億6000万円。簿外債務の存在が表面化した今年1月、大阪地裁に民事再生法の適用を申請。負債総額は119億円。同社は元常務らの不正取引が発覚し、決算の半期報告書が作成できない状態だった。東証は同日、同社株を2月22日に上場廃止とした。
有価証券報告書によると、売上高は03年3月期で約55億円だが、架空循環取引を始めたとされる同年以降、飛躍的に増加。06年3月期では約400億円に達した。
●鷲見一雄のコメント
「情報技術(IT)業界での不正経理がまた明らかになった。最近の粉飾決算事件では、大阪地検が04年、新興企業向けヘラクレス市場に上場していたコンピューター関連会社「メディア・リンクス」(大阪市)を摘発。約80社のIT関連企業との間で架空取引をやり、03年3月期決算で売り上げを約140億円水増ししたとして社長らが起訴された。
粉飾決済はライブドアでも発覚し、東京地検特捜部が当時の堀江貴文(ほりえ・たかふみ)社長らを起訴。04年9月期連結決算で経常赤字だったのを約50億円の経常黒字に粉飾したといわれている。
参入障壁が低く、ソフトウエアなど“無形の資産”が主役のIT業界。ほとんどが新興企業で、経営実態が不透明、不正経理が表に出るのは氷山の一角。IT業界での不適正な決算処理は今後も減る公算は薄い。監視体制強化の必要性を指摘したい」