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日本株(終了)輸出中心に続落、米国の居所探る-ソフバンク午後急落
3月1日(ブルームバーグ):東京株式相場は続落。米国景気と株価動向の先行き懸念から輸出関連株中心に売られ、中国株急落で始まった今回の世界連鎖株安の影響が残った。キヤノンなど電機株、トヨタ自動車など自動車株が下げ、三菱UFJフィナンシャル・グループなど銀行株やオリックスなどのその他金融株も売られた。セブン&アイ・ホールディングスなどの小売株も安い。個別では、CLSAアジア・パシフィック・マーケッツのアナリストが不適切会計を指摘したソフトバンクが一時9%安と急落した。
岡三投資顧問の伊藤嘉洋常務は、「一本調子で上昇してきた米国株の居所を待たなくてはいけない。10-12月期のGDPが下方修正され、米景気に対して悲観的な見方が増えてきたが、プラス成長は続いており、緩やかな成長を示している。高値圏で推移していた日本株も支援材料を必要としていただけに、高水準の裁定買い残を背景に、株価指数先物・オプションの特別清算値(SQ)までは調整してもおかしくはない」と見ている。
日経平均株価の終値は、前日比150円61銭(0.9%)安の1万7453円51銭。TOPIXは同12.63ポイント(0.7%)安の1740.11。東証1部の売買高は概算で31億8024万株。東証業種別33指数は、28業種が安く、上昇は5。
中国株急落で見えてきた
世界同時株安から一夜明けた東京市場では、日経平均が午前の取引中ごろからじわじわ下げ、相場の過熱を調整する動きが継続した。取引中盤に始まった中国上海株が安く始まると、下げを拡大する場面もあった。東証1部の騰落状況を見ると、値下がりは1037銘柄まで膨らみ、全体のおよそ6割が売られる展開。売りの主役は外国人投資家との見方が多い。取引開始前に伝わった外資系証券経由の売買動向は2040万株の売り越し観測となり、昨日に続いての大幅な売り越し観測となった。日経平均先物3月物の出来高は14万枚と、1日を通して活況といわれる10万枚を3日続けて超えた。
注視されていた前日の米株式相場も反発で終えたとはいえ、ダウ平均株価指数が前日比で0.4%高となるなど小幅高。世界株安の震源地となった中国の金融引き締め観測はきっかけに過ぎなかったとして、市場では「底流に流れているのは米景気減速懸念」(東海東京調査センターの矢野正義シニアマーケットアナリスト)との見方が支配的になりつつある。過剰流動性による株高に隠れていた米景気減速が、にわかにクローズアップされた格好だ。
米経済指標は、弱めの数字が相次いでいる。2月27日に発表された1月の米製造業耐久財受注額は予想以上の落ち込み。前日は1月の米新築住宅販売が過去13年で最大の落ち込みとなったほか、06年10-12月(第4四半期)の国内総生産(GDP、季節調整済み、年率)改定値は実質ベースで前期比年率2.2%増加と、速報値の3.5%増から下方修正された。ブルームバーグ・ニュースが事前にまとめたエコノミストの予想中央値(2.3%増)を下回った。
1日の米市場では、景気の先行きを占う上で重要視される1月の個人所得・消費支出、2月のISM製造業景気指数などが発表される。経済指標の内容と米株式相場の反応があす以降の相場動向に影響を与えそうだ。
売買代金は高水準、鉄鋼戻す
もっとも、相場の雰囲気は悪くない。投資家の中期的な先高期待は変っておらず、下値を積極的に買う動きが見られた。東証1部の売買代金は3兆9983億円と7営業日連続の3兆円超えとなった。午後の取引で日経平均は一時300円超安まであったが、こうした中、大手鉄鋼各社が業績見通しを発表。発表直前まで下げていた新日本製鉄は下げ幅を縮小し、上昇に転じた。午後1時30分に07年3月期の連結純利益予想は3100億円から3450億円に11%引き上げたほか、年間配当を1円増配し、新たに上限1億5000万株、金額にして1000億円とした自社株取得枠の設定も発表した。製造業を中心に、同社の高級鋼板に対する強い引き合いが背景にある。
セシールや三洋電、日興コが大幅高
個別では、東証1部の値上り上位には、カタログを刷新し4期ぶりに黒字を確保したセシールが急騰したほか、2月28日深夜に共同通信が証券取引等監視委員会は刑事告発などの処分を見送る方針を固めたと報じた三洋電機も大幅反発した。 このほか、米国の投資顧問ハリス・アソシエイツ(イリノイ州シカゴ市)による株式買い増しが分かった日興コーディアルグループも大幅高。新日本製鐵が発行済み株式の7%超を保有していることが分かった名村造船所も急反発し、昨年来高値を更新した。
新興市場も安い
国内新興3市場では、ジャスダック指数が前日比0.9%安の88.30、東証マザーズ指数は同2.9%安の1081.37、大証ヘラクレス指数が1.9%安の1784.66。いずれの指数も小幅高で始まったものの、マイナス圏で終えた。
ジャスダック市場では、楽天やヤフー、スパークス・グループなどが安い。半面、九九プラスがストップ高(値幅制限いっぱいの上昇)。同社はローソンと資本・業務提携すると発表。ローソンが第三者割当増資38億円を引き受け、九九プラスに20%出資する。
東証マザーズ市場では、ACCESSやGCA、エリアリンク、WOWOWなどが安い。半面、07年12月期は黒字化見通しとなったシコー技研が4日ぶりに大幅反発。アクロディア、ブイ・テクノロジー、日本レップなども買われた。
大証ヘラクレス市場では、子会社の連結化が遅れたことなどで経常黒字見通しから赤字予想に修正したクインランドが大幅反落したほか、07年9月期中間業績予想を経常黒字から赤字見通しに修正したサンライズ・テクノロジーも大幅安となった。半面、FCM、ファンダンゴは買われた。
失敗から学んだバーナンキFRB議長、株価急落後に市場を元気付け
3月1日(ブルームバーグ):バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は28日、前日の米国株急落について慎重に言葉を選んで市場に安心感を与え、投資家からの評価を高めたようだ。
バーナンキFRB議長は議会証言後の質疑応答の場を利用し、金融市場は「十分に機能している」と述べるとともに、米経済は勢いを増していくとの見通しを示した。投資家はこの発言を前向きに受け止め、株式相場は議長発言後に値上がりし、米国債利回りも上昇した。
ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は、「議長は金融市場の火消し役を演じたようだ」と述べ、「金融システムの安定確保も、米金融当局の役割の一部だ。当局がその任務を怠ってはいないと議長は保証した」と指摘した。
バーナンキ議長は1年ほど前、市場との対話でつまずき、インフレ抑制への取り組みに関して投資家の一部に疑念を生じさせるような状況に直面した経緯がある。それだけに、今回の株価急落への対応は、議長に対する信頼感を高めるとみられる。
ノーザン・トラスト・セキュリティーズの経済調査責任者、ポール・カスリエル氏は、「議長は失敗から学んだ」と評価し、「議長のすべての言葉を市場がじっと聴いていることを十分に承知している」と指摘した。
議長はまた、連邦準備制度のみならず、大統領作業部会に加わっているほかの金融監督当局者らも「金融市場の動向を注視している」とも述べ、中国株急落を引き金とする世界市場の動揺を受けても、米連邦準備制度の経済見通しに変わりはないと言明した。
ポールソン米財務長官は、今回の株価急落に関してまだ公式見解を示していない。ブッシュ政権のほかの当局者は、経済成長は引き続き堅固だとするバーナンキ議長の見解に同調している。ポールソン長官はコメントを控えており、財務省のブルックリー・マクラフリン報道官は、「財務省当局者は定期的に市場を監視しており、今後もそれを継続する」と説明した。
バーナンキ議長とポールソン長官は、就任から比較的日が浅い。2日前にダウ工業株30種平均が416ドルの大幅安を演じるといった相場急落時など、緊迫した状況下では、金融政策や金融業界の監督を行うFRB議長や財務長官の動静に投資家の注目が集まる。グリーンスパン前FRB議長は、就任から2カ月後に発生した1987年の株式相場急落に利下げで対応し、市場の信任を獲得した。
日興コーデ株:パッシブファンドがじわり売り、上場廃止リスクを回避
3月1日(ブルームバーグ):日興コーディアルグループ株式の上場廃止報道を受け、運用会社がファンドの構成銘柄から日興コーデ株を外す動きが活発化し始めた。ベンチマークとの連動性が最も重要視されるインデックスファンドからもすでに売却の動きが出ており、投資家は日興コーデ株が上場廃止となった場合のリスクを回避しつつある。
日本投信委託は2月28日、「公募投資信託で日興コーディアルグループ株式の保有はない」とするリリースを発表。同社のホームページによると、1月 30日時点において、「セクターインデックス10(日興コーデの対純資産比率 0.46%)」「日本インデックスオープン225(対純資産比率0.16%)」など5本のインデックスファンドで日興コーデ株を保有していた。
日本投信企画部の加藤道高氏は、「トラッキングエラーを抑える意味では持っていなくてはいけないかも知れない。ただ今回の件に限らず、定期的にリスクを計っている。基本的には、決算情報を使って定量的なモデルを使っている。 225ではなく、223だったりする時期もあった」と話した。
同投信が運用する「日本インデックスオープン225」のマザーファンドの約款によると、日経225採用銘柄のうち200銘柄以上に原則等株数投資を行うとした上で、ただし書きとして「流動性に著しく欠ける銘柄や信用リスクが高いと判断される銘柄の組み入れは行なわないことがある」としている。
DKAの225ファンドは1月末まで全銘柄保有
また、第一勧業アセットマネジメントも28日、「設定・運用する投資信託における日興コーデ株式の保有はない」とのリリースを発表した。同アセットが運用するファンドでは最大規模で、運用資産が1600億円超の「株式インデックスファンド」の前期決算期末(2006年10月24日)における運用報告書を見ると、日興コーデ株を25万株保有していた。1月末時点の月次レポートでは225 銘柄すべてを保有していたが、2月に入って16日時点の組み入れ銘柄数は224、 23日時点では223に減っている、
インデックスファンドは、TOPIXや日経平均株価と連動した値動きを目指すファンド。原則として、TOPIXや日経平均を構成する銘柄を同じ比率でファンドに組み入れている。独自の視点・運用方法を行うアクティブファンドとは違い、インデックスとの連動性を重視した低リスク金融商品である。
日興コーデ株は日経平均225の採用銘柄。このため、運用会社が顧客と結んだ約款にもよるが、インデックスファンドから採用銘柄を外すことはなかなか難しい。日興コーデに対する支援策が具現化し、上場廃止にならずに株価が上昇傾向をたどった場合、インデックスと連動した値動きができずにトラッキングエラーが発生する可能性もある。ブルームバーグ・プロフェッショナルによると、日興コーデの指数寄与度は0.143%で、255位中174位だ。
28日付の日本経済新聞は、東京証券取引所が日興コーデ株を上場廃止にする方向で最終調整に入ったと報じた。昨年12月に発覚した不正会計が組織ぐるみで悪質と判断、日興が同日提出した訂正有価証券報告書を精査した上で正式に決定するという。 同報道を受けて東証は、「現時点では結論に結びつくような方向性を一切有しておらず、報道については事実誤認と言わざるを得ない」とのコメントを発表。3月中旬をめどに結果を発表できるよう、予断を持たずに審査を進めているとした上で、「結論が得られ次第すみやかに発表する」という。