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2/22 ブルームバーグ コラム

日銀利上げは福井総裁が「青」で岩田副総裁は「赤」-第2の柱が鍵
2月22日(ブルームバーグ):福井俊彦総裁は青、武藤敏郎副総裁は黄、岩田一政副総裁は赤。日銀が8対1の賛成多数で0.25%の利上げを決めた21日、執行部の3人が身に付けていたネクタイの色だ。「利上げに対する意欲の表れだったのでは。青はGO、黄色はためらいながらも青につく。そして赤はやはりNOだった」(大和証券SMBCの岩下真理シニアストラテジスト)――。

執行部が分かれたのは、政策委員会での合議制が始まった1998年の新日銀法施行後はもちろん、総裁や一部幹部が水面下で政策を決めていた旧日銀法時代を含め、日銀の歴史で初めてのこと。市場では「執行部は一枚岩という慣例を打ち破った」(バークレイズ・キャピタル証の小林益久チーフ債券ストラテジスト)と評価する声が多い。しかし、今回の決定を評価する声ばかりではない。

そもそも、9人の政策委員は1月会合で既に、先行きの経済・物価情勢は「おおむね『見通し』に沿って推移する」ことで見方が一致していた。にもかかわらず利上げが見送られたことで、「市場は日銀の発信する情報と実際の行動との落差に戸惑ったが、今回利上げに踏み切ったことで、日銀はぎりぎりのところで景気判断と金融政策の整合性を維持した」(モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕エコノミスト)。しかし、それでも「後味の悪い決定」と佐藤氏は語る。

コアCPIマイナス転落の中での利上げ

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは今回の利上げについて「『説明責任』や『首尾一貫した市場との対話の確保』が軽視された追加利上げの強行」と批判する。福井総裁が昨年12月会合後の会見で利上げ見送りの理由として挙げた「個人消費」と「消費者物価」は、これまでのところ「先行きの上昇トレンドを確信させるような数字は出ておらず、毎月勤労統計などは逆に下振れを警戒させるものになっていた」(同氏)。

特に、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比上昇率については「1、2月分はゼロ%となる可能性がある。3月分は前年比マイナスに転落の可能性が濃厚」(佐藤氏)との見方もある。日銀も利上げ決定後に公表した金融経済月報で「目先、原油価格反落の影響などからゼロ近傍となる可能性がある」として、コアCPIの判断を下方修正した。

岩田副総裁が利上げに反対したのも、「物価の先行き見通しの不確実性に強い力点を置いた」(福井総裁)ためだった。いずれにせよ、日銀がこうした状況で利上げに踏み切ったことで、「どのような理由であれ一時的にでも物価が下落すれば、日銀は利上げができないという考えは、これで払しょくされる」(バークレイズ・キャピタル証の会田卓司チーフエコノミスト)のは間違いない。

追加利上げは第2の柱も適用

福井総裁は21日の会見で「実質2%絡みの成長がもし安定的に続く、物価水準は非常に低けれども、というふうに考えた場合でも、やはり0.25%とか 0.5%という金利水準は相対的に非常に低いことは、すぐにお分かりいただけると思う」と語った。会田氏は「実質2%程度の安定的な成長が続く限り、フォワード・ルッキング(先見的)な金融政策を維持し、金利正常化を進めていく日銀の姿勢が確認された」と指摘する。

金利正常化に向けた動きとともに重要なのは、利上げの論理として、2つの柱のうちの第2の柱が使われたことだ。2つの柱とは、蓋然(がいぜん)性の高い経済・物価シナリオの点検(=第1の柱)と、リスクシナリオの点検(=第2の柱)。後者については「起こる蓋然(がいぜん)性はそう高くなくても、起これば影響が大きいリスクをあらゆる角度から点検する」(福井総裁)。

この日の利上げは2つの柱のうちどちらの考え方が適用されたのか、という問いに対し、福井総裁は次のように答えた。「今回の政策変更はあくまで、2つの柱による点検を踏まえたものだ。第1の柱、第2の柱とも、十分に点検したものだ。(中略)日銀としては声明でも『2つの「柱」による点検を踏まえた上で』と明記している。この声明からみても明確にしたつもりだ」――。

説明責任と結果責任

この日の声明にはこうある。「仮に低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合、行き過ぎた金融・経済活動を通じて資金の流れや資源配分に歪みが生じ、息の長い成長が阻害される可能性がある」。昨年7月のゼロ金利解除の声明も「これまでの政策金利水準を維持し続けると、結果として将来、経済・物価が大きく変動する可能性がある」としていたが、ゼロ金利解除の論理は第1の柱だった、というのが日銀内の共通の理解だ。

日銀内では昨年10月の展望リポート策定時に、第2の柱を前面に出すべきかどうかで議論が行われたが、結局見送られた。それが今回の利上げでは、第2の柱の比重が増したことがうかがわれる。「インフレの兆候が全くない中で利上げを進めるためには、リスク管理の論理(=第2の柱)に依拠せざるを得なかったことになる」(日興シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト)。

ただ「リスク管理のための利上げという理屈が金融市場や国民にとって十分に説得的である保証はない」(同氏)のも事実。自民党の中川秀直幹事長は利上げを受けて「日銀は国民への『説明責任』を果たすとともに、『結果責任』についても負っていただけるものと考えている」と述べた。これからも青信号が続くことを、日銀は経済・物価の実績とともに示していかなければならない。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京・日高正裕 Masahiro Hidaka mhidaka@bloomberg.net 東京・大久保義人 Yoshito Okubo yokubo1@bloomberg.net

David Tweed dtweed@bloomberg.net

更新日時 : 2007/02/22 08:03 JST