1/25 司法ジャーナル 【名古屋地検特捜部】
2007年01月22日号【名古屋地検特捜部】
近く大手ゼネコンに競売入札妨害(談合)容疑で地下鉄談合に本格メス、狙いは東海地方の土木談合のドン、大林組名古屋支店元顧問、柴田政宏被告から地下鉄以外の不正を引き出すこと?
●ゼネコン数社を捜索
名古屋地検特捜部は名古屋市発注の地下鉄工事をめぐる談合疑惑で、ゼネコン各社が談合で落札する共同企業体(JV)を決めていた疑いが強まったとして近く、競売入札妨害(談合)容疑でゼネコン数社を捜索する方針を固めた模様。
談合の疑いを抱いているのは、昨年2月と6月に入札が行われた同市営地下鉄6号線(桜通線)延伸工事の5工区。それぞれの入札に3~6のJVが参加し、ハザマ、前田建設工業、清水建設、鹿島、奥村組を筆頭とした各JVが落札。落札額は19億5000万~62億1000万円で落札率(予定価格に対する落札額の割合)は94・06~92・25%だったとされる。
談合を仕切ったのは、同市の下水道談合事件で特捜部に起訴された「大林組」名古屋支店元顧問・柴田政宏被告(70)。同被告は東海地方の土木談合のドンとして政界、闇世界にも広く知られた存在。
同被告はこれまでの調べに対し、談合を主導したことを認めているが、一部のゼネコンが否認しているとされる。特捜部は、全容を解明するため、鹿島などゼネコンの捜索が必要不可欠と判断した公算が強い。
●公正取引委員会
公正取引委員会も同じく名古屋市発注の地下鉄桜通線延伸工事をめぐる談合疑惑で、昨年入札が行われた5工区だけでなく、今年入札分の4工区も合わせ、全9工区を一括して、談合で落札する共同企業体(JV)を決めていたことを把握、9工区の談合での刑事告発を視野に調査を進めている。
4工区はまだ入札が行われていないが、公正取引委員会は、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑の成立に必要な「談合の基本合意の成立」や「相互拘束」などの条件を満たしていると判断したとされているからだ。
●柴田政宏被告
公取委や特捜部の調べに対し、入札に参加したほとんどのゼネコンの営業担当者は「地下鉄も柴田被告の仕切りで談合が行われた」と供述しているという。
今年入札分の4工区のうち事業が最大規模になると予想される残り1工区はドンの支配力がものを言い大林組が入るJVが落札することで合意したという。
●永田町界隈では
ところで、永田町界隈では「中部国際空港の埋め立てに使用された砂利を大量に使う工事の受注調整に自民党の大物政治家が関わった」という情報が流れている。この情報にも柴田被告が出てくる。そこで名古屋地検特捜部が地下鉄談合をめぐる競売入札妨害(談合)容疑を突破口に中部国際空港の汚職事件摘発のきっかけを作るかどうか、中央政界が極めて注目しているというわけだ。
●鷲見一雄のコメント
「名古屋地検特捜部は96年5月が発足だったと記憶しているが、立派に成長した。初代部長は有田知徳現最高検公安部長、2代目は鈴木和宏最高検公判部長、3代目が長井博美長野地検検事正、4代目は粂原研二・さいたま地検次席検事、5代渡辺徳昭東京高検検事、6代は北島孝久・元東京地検特捜部副部長が候補に上がっていたが、どういうわけか北島氏は06年3月退官、4月山田賀規・東京地検刑事部副部長が就任した。
山田氏が指揮を執る名古屋地検特捜部に「東海地方の土木談合のドンとの対決」に期待を寄せているのは私だけではない」