10月対米輸出は数量ベースで増加、米国減速の影響ないがIT調整を懸念
〔焦点〕10月対米輸出は数量ベースで増加、米国減速の影響ないがIT調整を懸念
06/11/22 16:33
寺脇 麻理記者
[東京 22日 ロイター] 10月貿易統計で輸出の伸び率は鈍化したものの、価格変動の影響を除く数量ベースで対米輸出はむしろ増加し、米国の景気減速に起因した輸出失速の兆候は出ていない。ただ、IT関連での生産調整への懸念が一部で指摘されている。
<輸出数量の伸び減速も米国向けは堅調>
財務省が22日午前に発表した10月の貿易黒字は、前年比24.8%減の6147億円となり、3カ月ぶりに減少した。今年4月の前年比31.4%減以来の大幅減となり、ロイターの事前予測を下回った。 為替など価格変動を除く数量ベースでみると、10月の輸出は前年比2.2%増(9月7.5%増)と伸び率が鈍化しており、トレンドとしては「多少先行きに懸念がもたれる」(カリヨン証券・チーフエコノミスト・加藤進氏)との声が出ている。
数量ベースでみると、10月はEU向け輸出の減少が大きく「米国向けはむしろ好調で、アジア向けも大きく減速感は出ておらず、輸出の減速は緩やかと判断する」(第一生命経済研究所・副主任エコノミスト・長谷山則昭氏)との見方が多い。 米国向けは伸び率が拡大した一方で、アジア向けは増加ペースが鈍化。EU向けは6カ月ぶりに減少に転じた。米国向けは自動車やパソコン関連が好調なことから前年比10.4%増(9月7.5%増)と堅調に推移し、アジア向けは7.3%増(9月13.1%増)。EU向けは自動車輸出の減少が響き、前年比2.2%減(9月7.1%増)だった。 米国経済は潜在成長率並みの成長が続くとの見通しが示される中で「外需の減速が日本の景気拡大の腰折れにつながるとは予想していない。貿易統計でも、米国経済の減速の大きな影響はまだ確認できない」(バークレイズキャピタル・チーフエコノミスト・会田卓司氏)という。 財務省の貿易統計を受けて、日銀が22日午後に発表した10月の実質輸出は前月比0.3%増の143.9(2000年=100.0)となった。ただ、過去最高だった8月の147.2には及ばなかった。
<生産調整リスクなど先行きに懸念も>
エコノミストからは、生産調整リスクが高まったとの声も出ている。自動車や機械は依然堅調なことから、輸出全体が失速する兆候はみられないものの「10、11月の生産統計で示されていた10月以降の電子部品・半導体等のハイテクセクターの生産調整のリスクが、輸出サイドからも裏付けられた格好だ」(ゴールドマンサックス証券・シニアエコノミスト・村上尚己氏)との指摘があった。 半導体等電子部品は、金額ベースで10月は前年比8.1%増となり、9月の同9.2%増から伸び率が鈍化している。 7─9月期国内総生産(GDP)では、外需などが押し上げ要因となったが「10月時点での実質輸出、実質輸入から判断すると、10─12月期の実質GDPに対して、実質純輸出は小幅マイナスの寄与となる可能性が生じている」(野村証券金融経済研究所・シニアエコノミスト・木内登英氏)との見方も浮上している。