強い生産で景気に明るい展望、12月追加利上げ観測強まる
〔焦点〕強い生産で景気に明るい展望、12月追加利上げ観測強まる
06/11/29 13:07
寺脇 麻理記者
[東京 29日 ロイター] 景気の先行きを占う上で注目されていた10月鉱工業生産は、予想を上回る強さとなり、10─12月期は5四半期連続の明確な上昇が見込まれるなど、明るい展望を描ける結果となった。一部でIT在庫の増加に懸念を示す声が出ているものの、年内利上げを模索する日銀はハードルの1つをクリアしたとの観測が広がっている。
10月鉱工業生産指数は107.8と過去最高を更新したほか、前月比では1.6%上昇となり市場のマイナス予想を大幅に上回った。一般機械工業や輸送機械工業に加え、低下予想に反して電子部品・デバイス工業等も押し上げ要因となった。 東京市場が円高、株高、金利高で反応する中で「全体として生産の増加基調の腰が折れていないことを確認した」(大和住銀投信投資顧問・債券運用部チーフエコノミスト・大中道康浩氏)との声が出ている。
このところ設備投資の先行指標は弱めの数値が出ていたが、今回の鉱工業生産を踏まえて、10─12月期は持ち直すとの見方が広がっている。 経済産業省は11月の予測指数を前月比2.7%上昇と大幅に上方修正し、12月は同0.1%上昇を見込んでいる。これを踏まえて民間エコノミストは、10─12月期の鉱工業生産は前期比で1%から2%台後半程度の上昇になると予想。実現すれば5四半期連続で前期比上昇となり、堅調な生産拡大が見込まれている。 ただ、10月の在庫は前月比0.8%上昇となり、3カ月連続で上昇している。注目のIT在庫では、10月の電子部品・デバイス工業の在庫は前月比で0.1%上昇に留まったものの、出荷・在庫バランスはマイナス29.0%となり、前月のマイナス21.0%から悪化するなど、IT在庫は一段と積み上がっているのが現状だ。 エコノミストからは「次世代ゲーム機の売れ行きや、携帯電話の動向次第では、先行き在庫調整的な動きが出る可能性は否定できない」(農林中金総合研究所・主任研究員・南武志氏)として、IT在庫増への懸念が出ている。 もっとも生産全体が調整局面入りすることは避けられるとの見方が多い。IT関連財の在庫増について「ハイテク分野の需要増を見込んで在庫を積み増している面があることや、一部製品では出荷の遅れなどから在庫が一時的に積み上がっていることが指摘できる」(第一生命経済研究所・副主任エコノミスト・長谷山則昭氏)という。
10月鉱工業生産を受けて、12月の追加利上げへの思惑も高まっている。金融市場では「日銀が12月18、19日の金融政策決定会合で追加利上げを実施するためにクリアーしなければならないハードルの1つを突破したことを意味する」(ドイツ証券・シニアエコノミスト・安達誠司氏)との声が出ている。 また「日銀は強気となり12月の日銀短観がよければ、12月の決定会合で0.25%ポイントの追加利上げを実施する可能性が高い」(三井住友アセットマネジメント・チーフエコノミスト・宅森昭吉氏)として、引き続き発表される重要指標への注目度が高い。消費者物価指数や機械受注、日銀短観などのハードルも踏まえて、日銀は追加利上げの時期を探ると市場ではみられている。