海外勢は日本株の本格上昇に懐疑的、安倍政権の改革度見極めも | 20年間で5000万作る資産運用方法を考える・・・>゜)))彡◆

海外勢は日本株の本格上昇に懐疑的、安倍政権の改革度見極めも

〔クロスマーケット〕海外勢は日本株の本格上昇に懐疑的、安倍政権の改革度見極めも
06/11/30 16:58


<東京市場 30日>
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日経平均   |国債先物12月限| 国債283回債  |ドル/円(16:50)  |
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  16274.33円 | 135.09円  |  1.650%    | 116.13/15円   |
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+198.13円 | +0.34円   | -0.030    | 116.36/39円   |
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注:日経平均、国債先物、現物の価格は大引けまたは午後3時半の値。
下段は前日終値比。為替は前日NY終値。

 橋本 浩記者

 [東京 30日 ロイター] 鉱工業生産の予想外の増加で反転してきた東京株式市場
だが、多くの海外投資家は日本株の本格的な上昇に懐疑的で、目立った物色はみられない
。一部の海外勢の中は、郵政造反議員の復党を安倍晋三首相が認めたことで、企業業績だ
けではなく、安倍政権の構造改革路線を見極めたい、とのムードも強まっている。安倍首
相にとって初めてとなる2007年度の予算編成でどれだけ安倍色を打ち出せるかが目先
のかぎとなる。

 <押し目買いに徹する海外資金>

 財務省が発表した11月19日─25日の対外対内証券投資状況によると、海外からの
対内株式投資は2955億円の買い越しになった。この週は週初から日経平均 <.N225> が急
落するなど下値を切り下げる一週間となったが、押し目では海外勢が着実に買いを入れて
いた。週が明けて29日は鉱工業生産がポジティブサプライズとなって日経平均は1万6
000円を回復。30日も、寄り付き前の外資系証券13社経由の注文状況が2430万
株の買い越しとなり、海外からの投資資金の流入が推測された。
 ただ、バリュエーション面で割安感が出ていたことが買いの最大の背景とみられている
。財務省の担当者は前週の動きについて「確かに買い越しにはなっているが、買い越し額
自体は大きくなく、海外勢の買いが鮮明になっているわけではない」と説明している。

 実際、30日の日経平均の上昇についても「海外勢の買いではなく、国内年金勢の月末
における買いが大勢だったようだ」(外資系証券)との見方が多く、海外勢が日本株の評
価を本格的に引き上げて、再び買ってきた様子はうかがえない。

 ある欧州系の投資顧問会社の幹部は「今の日本の株式市場でパフォーマンスを継続的に
上げるのは難しい」と話す。今年の日本株運用の成績は思わしくなく、今夏以降、顧客の
欧州の年金勢が日本株から資金を引き揚げた、という。現在、海外の投資家は来年の運用
方針を決める時期にあたるが、この幹部は「日本株ファンドの販売は苦戦している」と語
る。いったん引き揚げた資金を元のアセットに戻すのは容易ではない、という。
 ゴールドマン・サックスが先ごろ英国・欧州で行った調査でも、同地域の投資家の日本
株の組み入れ比率はニュートラルないしアンダーウエイトに落ち込んでいる、という。同
社によると、世界経済の減速の影響や財政・金融政策の方向性、低水準にとどまっている
M&Aが懸念材料に挙げられていた。

 <円安頼みの相場には限界>

 第一生命経済研究所の主席エコノミスト、熊野英生氏は、今後の海外勢の投資行動に関
して「企業業績に対する期待次第だろう。4日の7―9月期法人企業統計調査や15日の
日銀短観などのマクロ指標で景気の底堅さが確認されれば、買い出動する1つの契機にな
る」と読む。そのうえで「5月の世界的な株価調整の後、日本株だけが取り残されたが、
世界の株価が日本株にさや寄せして調整するのか、日本株が出遅れを取り戻すのか岐路に
ある」とみている。その際、米国経済の減速が世界経済にどこまでマイナスの影響を与え
るのかがポイントとしている。
 また、日本株の弱さとして指摘されているのが為替頼みの相場展開だ。足元で日本経済
の外需依存度が高まっているため、為替が円安に振れると輸出関連が買われ、円高になる
と逆に売られる展開になり、相場の焦点が定まらず、腰の入った資金は入ってきにくい。
 14日に発表された06年7―9月期実質国内総生産(GDP)は前期比プラス0.5
%の成長となったが、寄与度をみると、内需はプラス0.1%にとどまり、外需はプラス
0.4%だ。
 史上最高値を更新するユーロ/円相場は、個人資金の海外流出といった実需が背景にあ
るとはいえ、投機筋がそれに乗って仕掛けている面も強く、円安に頼った株買いは一時の
値幅取り、と割り切った面が強い。
 クレディ・スイス証券、チーフエコノミストの白川浩道氏は「最近の局面での海外資金
は、日計り的な足の速い資金だろう」とみる。本格的に資金が流入してこない理由につい
て白川氏は、海外勢が描いていたシナリオと現在のシナリオに狂いが出ていることを指摘
する。当初は、企業収益の拡大が個人消費につながり、それが物価に波及、デフレ脱却が
明確になり、金利が上昇に転じる、との姿を描いていた、という。こうしたシナリオでは
、消費関連や銀行株といった内需の本命銘柄が相場をけん引するが、現在はそうした展開
は見込みにくい。中期的に強気見通しを示すゴールドマン・サックスも短期的には慎重な
スタンスを維持している。

 <安倍政権の改革路線を見極め>

 さらに市場にとって「ボディーブローのように効いてくる」(第一生命研の熊野氏)と
して、警戒されているのが安倍政権の構造改革に対する意欲だ。来年7月の参院選挙をに
らんで11人の郵政造反議員の復党を安倍氏が認めたことで、小泉純一郎前首相が改革の
本丸と位置づけた郵政民営化の動きが後退するのではないか、との懸念も出ているという

 何よりも郵政民営化の是非の一点に争点を絞って行った総選挙で、小泉氏に真っ向から
対立した議員が自民党に復党することで「いまだに小泉前首相の印象が強い海外勢にとっ
ては、安倍政権の改革をもう少し見極めたほうがいいのではないか、との声が出始めてい
る」(前出の欧州系投資顧問幹部)という。
 今のところ、今回の復党問題で海外勢が日本株を一段と処分している形跡はないが、無
駄を省き、規制を撤廃・軽減し、民間の力を高めて経済を活性化するという前首相の路線
に変化の兆しが出てくるようだとセンチメントは一気に悪化しかねない。
 安倍政権の経済運営を占う上で試金石になるのが、来年度の予算編成だ。税収が順調に
伸びており、新規国債の大幅な減少と首相が唱える再チャレンジなどの政策を盛り込める
余地が出てきた。また、税制改革でも、減価償却制度の見直しなど企業に対する減税や証
券税制はアピール度が高い。第一生命研の熊野氏は「郵政造反組の復党というマイナスイ
メージを、独自色のある経済政策を打ち出すことによってどこまでカバーできるかがポイ
ント」と話している。