11/11 ブルームバーグ コラム
社会保障費の高コスト構造是正計画の策定を-諮問会議で民間議員
11月10日(ブルームバーグ):経済財政諮問会議(議長:安倍晋三首相)の民間議員は10日の会議で、急速な高齢化や団塊の世代の退職などにより増加が見込まれる社会保障費の改革について、医療・介護などのサービスを提供する側のコスト削減を図るため、2007年度から5年間で実行する「高コスト構造是正プログラム」の策定が必要だと提言した。
民間議員は、柳沢伯夫厚生労働相に今年度中を目途に同計画を作成し、諮問会議に提出することを求めた。同計画の策定に際し提言では、「国民の負担増や給付削減」を求める前に、供給側の高コスト体質の是正を指摘しており、安倍内閣が掲げる国民負担の最小化を目指す方針を反映している。
具体的には医療に関して、①診療報酬体系で包括払い制度の確立②電子カルテ化などによるIT(情報技術)化の徹底と医療の標準化に向けたデータ整備③ 重複、不要検査の是正や後発医薬品の使用促進④公立病院の高コスト是正―などを挙げている。介護については、①介護施設経営への参入促進と社会福祉法人の改革②介護専門職の業務内容の高度化・省力化-を求めている。
政府は7月に「骨太の方針2006」で、2011年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化達成のために、必要な財源不足額16兆5000億円の最大9割は歳出削減を通じて解消することを決めている。このうち社会保障費は、5年間で1兆6000億円程度(うち国が1兆1000億円)の自然増を抑制する。
民間議員は、国による1兆1000億円抑制の改革努力のうち、社会保障コスト是正計画を通じ、どの程度達成可能であるか数値目標を明示するよう求めている。さらにコスト削減やサービスの質向上に関する目標を毎年設定し、PDCA(目標設定→実行→評価→反映)サイクルを当てはめ、同5年間の数値目標を達成するべきだとしている。
会議後に記者会見した大田弘子経財相によると、会議に参加した柳沢厚労相は民間議員の提言に対し、高コスト構造を是正することには同意したものの、数値目標を定めることには反対した。このため今後は、数値目標の代わりに民間議員が一定の推計を出し、それを基に計画策定を検討していくことを決めた。大田経財相は策定の時期について、年度内を目指す考えを示した。
3%削減継続は困難
骨太の方針で、今後5年間でマイナス1%から3%の削減を定めた公共投資については、民間議員が07年度予算では前年度比3%削減を行うべきだと提言し、さらにその後4年間についても3%削減を継続することを求めた。
経財相は同提言に対し、07年度予算については3%削減することで会議では一致したと述べた。ただ、会議に出席した冬柴鉄三国土交通相から08年度以降については、デフレ脱却による資材価格の上昇が予想されることなどから、08 年度以降継続して3%削減するのは困難との見解が示されたという。