11/11 ブルームバーグ 記事
ソニーPS3、日本発売に前夜から長蛇の列-量産の遅れで品薄(2)
11月11日(ブルームバーグ):ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は11日、家庭用新ゲーム機「プレイステーション3(PS3)」を日本で発売した。都内の一部家電量販店では午前7時から販売が開始され、秋葉原のヨドバシカメラでは、前夜から1000人以上が長蛇の列を作った。
SCEは部品調達の遅れを理由に2006年のPS3の出荷台数見通しを当初の半分とし、国内での初期出荷台数を10万台に限定したため、需要が供給を大きく上回るとみられる。価格は当初、廉価版で5万9800円としていたが、ユーザーの不満に配慮し9月に4万9980円に引き下げた。米国では11月17 日に発売する。
東京在住の会社員、大川亮博さん(25)も秋葉原のヨドバシカメラで前夜から並んだ一人。PS3とゲームソフトを手にした大川さんは、ソニーがPS3を最初に発表した時に本当に欲しくなったものの、高額なため購入を思いとどまったという。ただ、その後で値下げを聞いて買うことにしたと語った。
ヨドバシカメラのマルチメディアAkibaの足達信一店長によると、同店舗の入荷数は日本で最大の1980台。足達店長は、4000台入荷していても今日中に売り切れだっただろうと述べ、次の入荷時期を知りたいがソニーは明らかにしていないと語った。
PS3は、スーパーコンピューター並みの能力を持つ超小型演算処理装置(MPU)の「Cell(セル)」や大容量記憶媒体の「ブルーレイ・ディスク(BD)」といった次世代部品を内蔵する。
PS3の頭脳部分である「セル」はソニーと東芝、米IBMが01年から共同で開発。ソニー広報センターの今田真実氏によると、ソニーグループだけでセルに計2000億円もの巨費を投じてきた。SCEは、PS3の持ち味である超高精細映像でもゲームファンを魅了し、ライバルの任天堂に対抗したい考え。任天堂の新型機「Wii(ウィー)」は米国で11月19日に発売される。日本の発売日はその2週間後。
岩田日銀副総裁:円相場、ファンダメンタルズに回帰へ、内需は鈍化(2)
11月10日(ブルームバーグ):日銀の岩田副総裁は10日、フランクフルトでの会議で、円相場は最終的には「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映した水準」に戻る可能性があるとの見解を示した。
円相場は10月には対ユーロで、1ユーロ=150円74銭の過去最安値に下落。エコノミストらは円相場の下落はいわゆるキャリートレード(低金利の円を調達して高金利資産に投資する取引)が一因だと指摘している。
岩田副総裁はこの日、キャリートレードの影響について質問され、日本の 0.25%という政策金利と他の諸国の借入コストの間に差が生じているものの、最終的には円相場は基礎的な経済によって決定されることになろうと述べた。
同副総裁はこの会議で、「市場に強い弾性があるとすれば、為替相場の動向はファンダメンタルに基づく水準に復帰することが可能だ」と述べた。
日欧の当局者はこのところ、円相場の下落について、困惑と懸念を表明。日本の景気拡大やゼロ金利解除という状況下での円の下落は説明がつかないとの見方で一致している。
同副総裁は、景気拡大は現在鈍化しつつあるとの見方を示した。その上で、「国内需要の鈍化がみられる」と語った。
同副総裁はこれに先立ち、日銀が今後数カ月間で借入コストを引き上げるかどうかに対してはコメントを避け、「経済がわれわれの見込み通りとなれば、金利水準に緩やかな調整」が生じると述べた。
米国市場のアジア株(10日):下落、BHPなど資源株とトヨタ下落
11月10日(ブルームバーグ):米国市場のアジア株は下落。銅、原油相場の値下がりを受け、BHPビリトンなどの資源株が売られた。
バンク・オブ・ニューヨークによるアジア企業のADR(米穀預託証券)指数は前日比0.2%安の147.87。今週1週間では0.2%上昇。日本企業のADR指数は、前日比0.09ポイント高の114.97。
世界最大の鉱山会社、BHPは66セント安の42.31ドル。銅相場は、在庫増加を受けて中国での需要鈍化観測が再燃したことから、6月以降で最大の下げを演じた。原油価格は今月最大の下げ。国際エネルギー機関(IEA)が3カ月連続で需要予測を下方修正したのが背景にある。中国最大の石油会社、ペトロチャイナ(中国石油)は1.05ドル安の115.44ドル。
トヨタ自動車は57セント安の121.82ドル。トヨタ自動車が米国で展開しているブランド「サイオン」部門のブランドマネジャー、マーク・テンプリン氏によると、3つの車種のうち2車種を入れ替えるため、年末にかけて売り上げが鈍化し、来年は販売が減少する見通し。
シカゴ商業取引所(CME)の日経平均先物(12月限)は1万6090円。シンガポール取引所の終値は1万6105円、大阪証券取引所の終値は1万6080円だった。
NY銅相場(10日):急落、6月以来最大の下げ-中国の在庫増を嫌気
11月10日(ブルームバーグ):ニューヨーク銅相場は6月以来最大の下げとなった。週間ベースでは3週続落。在庫増加を受けて、銅の最大消費国である中国で需要が鈍化しているとの観測が再燃した。
北京の通関当局が8日発表したところによると、上海先物取引所の指定倉庫在庫は今週15%増加するとともに、今年1-10月の中国の銅輸入量は22%減少した。5月には中国からの需要拡大を背景に、銅相場は最高値を付けた。
金属リサイクル業者のメタルスコで銅取引に携わるブレット・トーベン氏は、「米国内の需要は完全に尽きてしまった」とし、「今、銅スクラップを売りたいとすれば、アジアで売るしかない。しかもアジアでの需要にもむらがある」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)COMEX部門の銅先物12月限は22.05セント(6.7%)安の1ポンド=3.0885ドル。6月13日以来最大の下げとなり、終値ベースでも6月27日以来の安値。銅相場は週間ベースでは7%安。これも9月中旬以来最大の下げ。また、5月11日に付けた過去最高値の同4.04ドルからは24%下落している。
ロンドン金属取引所(LME)の銅3カ月物は1トン=6920ドルと、前日比で405ドル(5.5%)下落した。
米国株(10日):小幅高、週間ベースでも上昇-住宅建設株が堅調(2)
11月10日(ブルームバーグ):米国株式相場は小幅上昇。週間ベースでは過去7週間で6週目の上昇となった。原油価格の下落で、景気動向に敏感な企業が堅調となった。
タングルウッド・キャピタル・マネジメント(ヒューストン)で約4億 7500万ドルの資産管理に携わるジョン・メリル氏は、「基本的なファンダメンタルズ(基礎的諸条件)が再び回復していることから、わたしはこの相場を非常に好感している」とし、「好決算を実現するのは難しいが、市場には上昇余地がある」と述べた。
KBホームやD.R.ホートン、センテックスといった住宅建設大手が高い。業種別で住宅建設企業からなる指数がS&P500種の業種別指数中でもっとも堅調だった。また、電子機器受託生産で世界2位のソレクトロンが、利益見通しを達成もしくは上回ると明らかにしたことが好感され、S&P500種構成銘柄中で最大の上げとなった。
S&P500種株価指数終値は前日比2.57ポイント(0.2%)上げて 1380.90。ナスダック総合指数は同13.71ポイント(0.6%)上げて2389.72。これは終値ベースで2001年2月以来の高値。ダウ工業株30種平均は同5.13 ドル高の12108.43ドル。
米メディア2位のウォルト・ディズニーがダウ工業株30種平均の上値を抑えた。同社は税率上昇で来年の業績が悪化する可能性があると示唆した。
原油相場がこの日、今月に入って最大の下げとなったことを映して、エネルギー株が下落。国際エネルギー機関(IEA)が原油の需要見通しを下方修正したことが原油相場の下落につながった。原材料関連企業も下げた。銅が6月以来最大の下げとなったことを嫌気した。
週間ベースではS&P500種株価指数は1.2%上昇。ダウは同1%高、ナスダック総合指数は2.5%上げた。今週は、テクノロジー企業が好決算に加え、民主党の躍進で新たな規制の阻止や歳出抑制などが期待されて堅調となり、株価指数の週間ベースでの上昇を主導した。
住宅建設企業が堅調
住宅建設株に買いが入り、住宅建設株で構成する指数は3.7%上昇と、9月12日以来最大の上昇率となった。
コマース・トラストで120億ドルの資産運用にあたるジョゼフ・ウィリアムズ氏は、「市場参加者は住宅市場の低迷が終結したかどうか見極めようとしている」とし、「住宅購入者は価格が非常に魅力的だとみている」と述べた。
電子機器受託生産で世界2位のソレクトロンは前日比6.1%高。主要顧客であるネットワーク機器最大手シスコシステムズがソレクトロンからの購入方法を変更する計画を延期した。この変更は、ソレクトロンの売上高減少につながると予想されている。今回の延期は、今四半期のソレクトロンの売上高が予想を上回ることを意味する。
ディズニー軟調
ウォルト・ディズニーが前日比3.5%安。同社は設備投資や税率上昇で来年の利益は1株当たり5セント縮小する可能性があると明らかにした。ロバート・アイガー最高経営責任者(CEO)は、インターネットビデオや携帯端末への投資が同社の収益に還元されるには最長で5年かかる可能性があるとの見方を示した。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)の騰落比率は2対1。出来高概算は 14億2000万株。3カ月平均を6.7%下回った。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場12月限終値が前日比2.6%安のバレル当たり59.59ドルとなったことを受けて、原油やガソリン関連企業が軟調、相場の上値を抑えた。IEAはこの日、世界の石油需要は日量平均8449万バレルと、10月時点見通しを8万バレル下方修正した。
世界最大の石油会社エクソンモービルや、油田サービス大手のシュルンベルジェがそろって下げた。
銅相場急落が波及
銅生産大手のフェルプス・ドッジは、銅相場がこの日4カ月ぶりの安値に下落したことで売りを浴びた。
長距離通信最大手AT&Tと電話大手のベライゾン・コミュニケーションズが下落。ベルサウスも下げた。民主党が過半数を占める議会について、ビデオ事業の強化を図る通信企業にとっては不利になるとアナリストらはみている。
コンタクトレンズ関連商品のボシュロムが安い。同社の06年7-9月(第3四半期)決算はコンタクトレンズケア用品の回収が響き、所得税などを差し引く前の利益が1610万ドルと前年同期の5150万ドルから大幅減少した。同社はまた、米証券取引委員会(SEC)への四半期決算提出を延期する見込みだと明らかにした。
保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が値上がり率トップとなった。同社が9日発表した2006年7-9月(第3四半期)決算は、純利益が前年同期比で2倍強に増加した。純利益は42億ドル(1株当たり1.61ドル)となり、前年同期の17億5000万ドル(同0.66ドル)から拡大した。投資損失とデリバティブ(金融派生商品)の評価額変更を反映させる前の利益は、1株当たり1.53ドルとなり、調査会社トムソン・ファイナンシャルがまとめたアナリスト予想平均の1.42ドルを上回った。
欧州株(10日):3日続落、輸出銘柄が下げる-インフィニオンに売り
11月10日(ブルームバーグ):欧州株式相場は3日続落。外国為替市場でドルが対ユーロで下げたほか、ユーロ圏での利上げ観測が台頭したことで、株式への売りがかさんだ。
独のインフィニオン・テクノロジーズや仏アルカテルをはじめ、輸出銘柄が下げた。また米国で医薬品価格が引き下げられるとの懸念を背景に、英グラクソスミスクラインを中心に製薬株は3日連続で下げた。
ダウ欧州株価指数は前日比0.1%下げて358.47。週間ベースでの値上がり率は1.2%に抑えられた。ダウ欧州50種株価指数は同0.4%安。ユーロ圏の50銘柄で構成するダウ・ユーロ50種株価指数は0.2%値下がりした。
株式相場は今週初めに6年ぶり高値まで上げていたものの、週末にかけて下げ相場が続いた。民主党が過半数を制した米議会で医薬品メーカーへの支払いを削減する法案や、これまでの減税を反転させる法案が可決されるとの見方が相場が軟調に転じた背景。またこの日は第3四半期フランス国内総生産(GDP)が前期比横ばいとなり、予想外の成長失速が明らかになったことも投資家マインドに陰を落とした。
メッツラー・インベストメント(フランクフルト)で8億3600万ドルの資産運用に携わるクラウス・ハーゲドルン氏は、「買い一服の商状」だと指摘。「マイナス材料が相俟って、利益を確定する動きにつながった」と付け加えた。
業務管理ソフトウエア最大手のインフィニオンは1.7%安。同社は売上高の約22%を米国で稼ぎ出す。
ドル安
ブロードバンド(高速大容量)通信用機器を手がけるアルカテルは1.5%下落。同社の売上高のうち、約14%を米国での売り上げが占める。
外国為替市場ではドルが対ユーロで下落し、9月5日以来の安値をつけた。中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁が外貨準備を多様化する計画に変わりはないと述べたことから、ドルが売られた。
欧州株式市場が終了した現在、ドルの対ユーロ相場は1ユーロ=1.2864ドル。前日遅くのニューヨーク市場では同1.2829ドルだった。
医薬品株
グラクソは1.9%安。スイスのノバルティスは1.4%下げた。アストラゼネカは2.1%の値下がり。
ダウ欧州株価指数採用の医薬品株で構成する指数は下落し、産業別18指数のうち週間ベースで値下がりトップ。米民主党が医薬品への助成を減額するとの観測で、株価が押し下げられた。7日に実施された米中間選挙の結果、民主党が12 年ぶりに上下両院で過半数を制した。9日のニューヨーク株式市場では、S&P 500種株価指数に採用されている医薬品株で構成する指数が、この3年間で一番の値下がりを記録した。
投資判断引き下げ
欧州最大の電話会社、ドイツテレコムと、スポーツ用品大手のアディダスはいずれも、アナリストの投資判断引き下げが嫌気されて下落。
UBSはドイツテレコムの株式投資判断を「中立」から「リデュース」に引き下げ、株目標も12.5ユーロから12.2ユーロに引き下げた。ドイツテレコムの株価は2.5%下げた。
アディダスは3%安。同社が前日、2007年通期の利益見通しを引き下げたことを受け、クレディスイスをはじめ、JPモルガン、UBSなど複数のアナリストがアディダス株の投資判断を引き下げた。
英独仏の株式指標
英国のFT100指数は前日比23.10ポイント(0.37%)安の6208.40。FTオール・シェア指数は同7.50ポイント(0.23%)下げて3187.29。
ドイツのDAX指数は同0.91ポイント下げて6357.77。HDAX指数は同 0.46ポイント上昇の3266.03。
フランスのCAC40指数は同1.10ポイント下げて5447.50で終了した。
今日の国内市況:TOPIXは6連敗、債先は9月末来高値-円が堅調
11月10日(ブルームバーグ):週末の東京株式相場は、TOPIXが約半年ぶりの6営業日続落となった。機械受注が下振れるなど国内景況感の停滞を示す経済指標が相次いでいることから、景気先行きに対する不透明感が高まった。機械株など設備投資関連のほか、景況感に対する不安から銀行株や小売株など内需関連も下げた。
大和投資信託の長野吉納シニアストラテジストは、「米国景気が減速する中で国内景気も楽観できない状況となってきた。来週のGDP(国内総生産)成長率がマイナスとなる懸念もあるだけにインデックスは買いづらく、決算を見て個別への対応に限定せざるを得ない状況」と見ている。
日経平均株価の終値は86円14銭(0.5%)安の1万6112円43銭、TOPIXは7.69ポイント(0.5%)安の1581.37。東証1部の売買高は概算で19億 590万株。値上がり銘柄数は475、値下がり銘柄数は1113。
東証業種別33指数の騰落状況は、値上がり業種が10、値下がり業種が23。値上がり率では鉱業、ゴム製品、その他金融、鉄鋼、ガラス・土石などが目立ち、値下がり率では水産・農林、空運、倉庫・運輸関連、銀行、輸送用機器、機械が上位となった。
午前は米国株安を受けて安く始まったものの、きょうのオプション特別清算値(SQ)終了によって短期的な需給好転から一時的に上昇する場面も見られた。午後になっても指数の気迷い状況が続く中、状況が一変したのは午後2時の機械受注。船舶・電力を除く民需の受注額は、9月に季節調整済み前月比 7.4%減と2カ月ぶりにマイナスに転落。事前予想(1.8%増)を大きく下回った。これに先立ち、内閣府が9日発表した10月の景気ウォッチャー調査では、3カ月前と比べた景気の現状判断DIは50.8と前月の51.0から0.2ポイント低下した。消費や設備投資など国内マクロ指標で踊り場を示すケースが増えており、市場では来週14日発表の7-9月GDP成長率に関心が移っている。
ブルームバーグ・ニュースの事前調査で、7-9月GDPは前期比プラス 0.2%(4-6月期は同プラス0.2%)が見込まれる。しかし、クレディ・スイス証券がマイナス0.4%を予想するなど一部でマイナス成長も懸念されており、仮にマイナスなら2004年10-12月期以来ほぼ3年ぶりとなる。 富士投信投資顧問の岡本佳久執行役員によれば、「景気に対する不透明感が高まっているにもかかわらず、日本銀行は利上げに対する意欲を引き続き変えていない。政策のミスマッチに対する懸念も市場で認識されている」という。
債券は日銀総裁発言こなして上昇
債券相場は上昇(利回りは低下)。昼過ぎまでは福井俊彦日銀総裁の発言による早期利上げ観測に対し、足元の良好な債券需給がやや上回る格好で堅調に推移していた。午後に発表された機械受注統計が市場予想の小幅増加に反してマイナスになると買いが急増、先物相場は9月末以来の高値をつけたほか、新発10年債利回りは今年度下期の最低水準に達した。
岡三証券の坂東明継シニアストラテジストは、機械受注は予想外で、数字を見ると2002年から続くトレンドラインの下限を下回っているとの認識を示唆。10-12月期はプラスの見込みだが、それでもこれまでのパターン比較では良くないとし、「今週は、市場で期待した景気減速がそのまま出た格好。来週の国内総生産(GDP)が弱いと高値トライの場面がある」と見る。
東京先物市場の中心限月12月物は、前日比9銭高い134円68銭で始まり、直後に134円69銭まで上昇したが、次第に売りが増えると、午前9時20分前後には7銭安い134円52銭まで下げた。その後は買い戻しが優勢で134円72 銭まで上昇する場面があった。午後に入ると134円60銭台でこう着していたが、機械受注発表後には水準を大きく切り上げ、一時は134円89銭まで上昇し、9月29日以来の高値をつけた。結局は21銭高い134円80銭で終了した。
この日の債券相場は、午後2時の機械受注統計がポイントになった。10日付の読売新聞朝刊は、福井日銀総裁が同社とのインタビュー記事で、追加利上げに関して「早め、小刻みに」と述べた一方、インフレ目標導入は否定したと報じた。福井総裁をはじめ日銀サイドからの情報発信は利上げに前向きなトーンばかり。一方で、足元の経済指標はいずれも振るわず、こうした強弱材料が錯そうする中で、機械受注が下振れしたことが雌雄を決した。この結果、新発10 年債利回りは1.6%台後半に収まった。現物債市場で10年物の283回債の午前の利回りは1ベーシスポイント(bp)低い1.69%だった。機械受注発表後には2bp低い1.68%と、新発10年債として9月29日以来の低い水準となった。さらに午後2時45分前後には1.675%まで低下し、今年度下期に入って以降で最も低い水準をつけた。
円が堅調
東京外国為替市場では、円が堅調を維持。対ドルでは1ドル=117円台半ばを中心に、前日のニューヨーク時間午後遅くに付けた117円93銭と比べて円高水準で推移した。9月の機械受注統計が市場の予想以上に弱い結果となったことで、円が上昇幅を縮小する局面もみられたが、日本銀行の福井敏彦総裁が利上げに前向きな発言を繰り返していることを背景に、円買い圧力が根強く残る格好となった。
カリヨン銀行外国為替部の伊庭剛部長は、「福井総裁の発言からは利上げを前提に地ならしをしている姿勢が見受けられ、弱い経済指標を受けても市場の利上げ観測が後退する状況とはならない」として、午後の指標発表後も円が下げ渋る展開になった背景を説明した。
この日は、福井総裁の発言がドル・円相場を主導。読売新聞の報道を受けて海外時間の終盤から東京時間早朝にかけて円買いが先行し、対ドルでは海外市場で付けた1ドル=118円59銭から117円台後半まで円高が進んだ。その後、午前10時半過ぎに衆院財務金融委員会で、円キャリートレード(低金利の円で調達した資金を高金利通貨に投資する取引)について、「大変警戒」していると述べたことで、円買いが加速。対ドルでは一時117円37銭、対ユーロでも150円99銭まで円高が進んだ。
午後の取引にかけては機械受注統計の発表を控えて、様子見姿勢が強まりやや円が伸び悩む展開となったが、同統計の結果が予想以上に弱い内容となったため、いったん円の上値を追う気運が後退。117円60銭前後まで押し戻された。しかし、円の下値は堅く、その後は117円台半ば近辺で推移した。
ユーロ・円相場は前日の海外市場で1ユーロ=151円48銭と、ユーロが 1999年1月に発足して以来の高値を更新していた。 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン外国為替部の北澤純部長は、ユーロ・円相場が過去最高値を更新する中、円キャリートレードについては、どこかで巻き戻しが入るのではないかという懸念が常に付きまとっていただけに、「福井総裁の発言を受けて、このままどんどんとユーロの上値を追う雰囲気ではなくなった」と指摘する。
社会保障費の高コスト構造是正計画の策定を-諮問会議で民間議員(2)
11月10日(ブルームバーグ):経済財政諮問会議(議長:安倍晋三首相)の民間議員は10日の会議で、急速な高齢化や団塊の世代の退職などにより増加が見込まれる社会保障費の改革について、医療・介護などのサービスを提供する側のコスト削減を図るため、2007年度から5年間で実行する「高コスト構造是正プログラム」の策定が必要だと提言した。
民間議員は、柳沢伯夫厚生労働相に今年度中を目途に同計画を作成し、諮問会議に提出することを求めた。同計画の策定に際し提言では、「国民の負担増や給付削減」を求める前に、供給側の高コスト体質の是正を指摘しており、安倍内閣が掲げる国民負担の最小化を目指す方針を反映している。
具体的には医療に関して、①診療報酬体系で包括払い制度の確立②電子カルテ化などによるIT(情報技術)化の徹底と医療の標準化に向けたデータ整備③ 重複、不要検査の是正や後発医薬品の使用促進④公立病院の高コスト是正―などを挙げている。介護については、①介護施設経営への参入促進と社会福祉法人の改革②介護専門職の業務内容の高度化・省力化-を求めている。
政府は7月に「骨太の方針2006」で、2011年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化達成のために、必要な財源不足額16兆5000億円の最大9割は歳出削減を通じて解消することを決めている。このうち社会保障費は、5年間で1兆6000億円程度(うち国が1兆1000億円)の自然増を抑制する。
民間議員は、国による1兆1000億円抑制の改革努力のうち、社会保障コスト是正計画を通じ、どの程度達成可能であるか数値目標を明示するよう求めている。さらにコスト削減やサービスの質向上に関する目標を毎年設定し、PDCA(目標設定→実行→評価→反映)サイクルを当てはめ、同5年間の数値目標を達成するべきだとしている。
会議後に記者会見した大田弘子経財相によると、会議に参加した柳沢厚労相は民間議員の提言に対し、高コスト構造を是正することには同意したものの、数値目標を定めることには反対した。このため今後は、数値目標の代わりに民間議員が一定の推計を出し、それを基に計画策定を検討していくことを決めた。大田経財相は策定の時期について、年度内を目指す考えを示した。
3%削減継続は困難
骨太の方針で、今後5年間でマイナス1%から3%の削減を定めた公共投資については、民間議員が07年度予算では前年度比3%削減を行うべきだと提言し、さらにその後4年間についても3%削減を継続することを求めた。
経財相は同提言に対し、07年度予算については3%削減することで会議では一致したと述べた。ただ、会議に出席した冬柴鉄三国土交通相から08年度以降については、デフレ脱却による資材価格の上昇が予想されることなどから、08 年度以降継続して3%削減するのは困難との見解が示されたという。