10/26 ブルームバーグ コラム
【米経済コラム】米政策金利はかなりの期間据え置きか-J・ベリー
10月26日(ブルームバーグ):米金融当局は25日、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25%に据え置くとともに、かなりの期間同水準にとどめる可能性があることを示唆した。
2日間の連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に発表された声明のキーワードは「緩やか」。当局は「この先の経済は緩やかなペースで拡大する可能性が高い」との見通しを示した。
さらに、コアインフレ率については「数値が上昇してきたほか、高水準にある資源利用の下でインフレ圧力が続く可能性がある」としながらも、「インフレ圧力は時間をかけて落ち着く可能性が高い」との認識を示した。経済が実際に緩やかなペース-金融当局者が考える潜在成長率を若干下回るペース-での拡大を続ければ、コアインフレ率は徐々に低下すると予想されている。
こうした予想に狂いがない限り、政策金利は5.25%のまま据え置かれる可能性が高い。
当局は2004年6月以降、17回連続で実施していた利上げを8月8日の連邦公開市場委員会(FOMC)で休止したが、その理由の1つは利上げと利下げの両方の柔軟性を確保したいとの考えがあった。
リッチモンド連銀のラッカー総裁は、過去2回のFOMCと同じく今回も 0.25ポイントの利上げを主張し、反対票を投じた。前回9月20日のFOMCの議事録によると、同総裁は「政策金利を据え置いた場合よりも速いペースでインフレ率を低下」させたいとの考えを示していた。
インフレ減速予想
他のFOMCメンバーの間では、コアインフレ率が徐々に低下するとの楽観的な見通しが多いが、それでも今回の声明はインフレ率低下を確実視する見方をあらためてけん制し、「委員会はなお、一部インフレリスクは残ると判断した。こうしたリスクを是正するため、追加的な金融引き締めが必要になる可能性があるが、その程度と時期については、これから明らかになる情報に基づくインフレと経済の見通しの変化に左右される」と指摘した。
金融当局者の多くは、雇用やモノの需給がややひっ迫しているものの、トレンドを下回る成長ペースが最終的にはインフレ圧力の若干の緩和につながるとの見方を示している。
確かに、27日発表される7-9月期の国内総生産(GDP)統計は緩やかな成長ないし、景気の弱さを示す見通しだ。調査会社マクロエコノミック・アドバイザーズ(セントルイス)が25日発表した予想によると、7-9月期のGDP伸び率は前期比年率1%と、4-6月期(同2.6%)や1-3月期(同5.6%)を下回る見込みだ。
25日のFOMC声明は、成長鈍化のほかにもコアインフレ率が低下する理由を指摘。エネルギー価格の影響低下と「インフレ期待の抑制、金融政策の累積的効果、その他総需要を抑制する複数の要因」を挙げた。
住宅市場の減速継続による個人消費悪化の可能性も、コアインフレ率低下見通しの根拠の1つだ。全米不動産業者協会(NAR)が25日発表した9月の中古住宅販売件数は同月比1.9%減の年率618万戸だった。
住宅の売れ残り在庫が積み上がっていることから、エコノミストの間では、住宅セクターが来年末まで景気の足かせになるとの見方が多い。一方で、住宅市場の減速ペースは落ち着き始めてきた可能性もある。
新築住宅建設の落ち込みは、4-6月期のGDP伸び率を0.75ポイント押し下げた。7-9月期はその影響がさらに大きかった可能性が高い。
金融当局者の間には、住宅資産が目減りしていることや、住宅担保ローンが受けにくくなっていることが、ある時点で個人消費の縮小につながるとの懸念がある。ただ現在のところその懸念が現実化している様子はない。
一部専門家は懐疑的
一部のエコノミストの間では、金融当局とは異なりインフレ鈍化に懐疑的な意見や、次の当局の一手は来年初めの利下げになるという声がある。モルガン・スタンレーのデービッド・グリーンロー氏は前者だ。
グリーンロー氏は25日、顧客に対して「われわれは引き続き、短期的には成長ペースが再び加速するとみている。最近のエネルギー価格の大幅な低下がその主な原動力になる」と指摘。「消費者物価ベースのコアインフレ率が徐々に上昇するとみている」と予想した。
同氏はまた、「そうした状況になれば、来年初めには、引き締め気味の政策スタンスを続けている金融当局が再びゲームに参戦してくることになる可能性が強い。たとえその認識が間違っていて、潜在成長率を下回る成長ペースが続いたとしても、当局が来年半ば以前に利下げに転じるとは考えにくい」との認識を示した。
これに対して、メリルリンチのエコノミストは、成長鈍化を見込んでいるため、当局が来年1月に利下げを実施すると予想していた。ただ25日には、ガソリン価格の低下に伴う個人消費の拡大で利下げ時期が3月にずれ込むだろうとの見方を示した。来年末の政策金利の予想は4%だ。
モルガン・スタンレーとメリルリンチの予想に大きな隔たりがあることは、政策金利を据え置いた25日の金融当局の判断が正しかったことを示唆している。現在の金融政策はどちらの可能性にも対応できるように位置づけられているのだ。(ジョン・ベリー)