10/20 ブルームバーグ 記事
本株は資源中心に反発、米株高値に恐る恐る追随-新興軟調(終了)
10月20日(ブルームバーグ):東京株式相場は反発。石油輸出国機構(OPEC)の原油生産削減の合意を受けた原油価格の反発傾向を背景に、資源関連株の値上がりが目立った。米ダウ工業株30種平均が終値で初めて1万2000ドル乗せとなり、高値圏で推移する海外株式相場との比較感から出遅れ感を意識する買いも先行した。
もっとも、東証1部の売買高は概算で15億5430万株。TOPIX構成銘柄の売買代金は1兆9513億円と、12営業日ぶりに2兆円を下回り、市場エネルギーは盛り上がりに欠けた。国内外の相次ぐ中間決算発表などを控え、様子見姿勢も強い。ブルームバーグ・ニュースの調べによると、東証1部の売買単価は9月 13日以来となる1300円割れとなり、一部短期資金は値幅取りの狙いやすい低位株志向を強めた状況がうかがえた。
日経平均株価の終値は前日比100円27銭(0.6%)高の1万6651円63銭。TOPIXは同8.38ポイント(0.5%)高の1644.15。日経平均は小幅高で始まった後、徐々に上げ幅を拡大した。
東海東京証券エクイティ部の鈴木誠一マーケットアナリストは、「米景気の先行きが軟着陸するかどうか、確証が持てないまま米国株が上昇しているため、ついて行っている状態。TOPIXが9月高値を抜けるか重要だ。市場エネルギーが盛り上がっていないことも気になる」と話していた。
国際石油開発帝石ホールディングスなどの鉱業株、三菱商事などの大手商社株、新日本石油などの石油石炭株が高い。米株式相場の高値推移を背景にした米景気の軟着陸への期待感から、トヨタ自動車などの自動車株も高い。スズキは上場来高値を更新。東証業種別33指数は、27業種が上昇した。
OPECが予想上回る減産
この日の取引では、資源株の上昇が目立った。ニューヨーク原油先物相場はアジア時間20日の時間外取引で続伸。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物11月限は、日本時間午前8時15分現在の時間外電子取引で、90セント(1.5%)高の1バレル=59.40ドルまで上昇した。OPECは予定していた石油減産の規模を拡大し、日量120万バレルで合意した。また、12月にも追加減産を実施する可能性を示したため、買いが優勢となった。19日の11月限終値は、前日比0.85ドル(1.47%)高の1バレル=58.50ドルだった。
OPEC最大の産油国、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相はカタールのドーハで記者団に対し、同国がOPEC全体の減産の約3分の1を実施すると述べた。また、同グループのモハメド・バルキンド事務局長代行は19日、米国の供給拡大を「懸念」しており、OPECが12月の追加減産の可能性を否定できないと語っていた。
米ダウ指数高値で出遅れ感
海外株式相場との相対比較による出遅れ感も意識された。19日の米国株式相場は上昇し、ダウ工業株30種平均は初めて終値ベースで1万2000ドルを突破した。清涼飲料水大手の米コカ・コーラの四半期利益がアナリスト予想を上回るなど、企業業績の好調を評価した。市場では「海外市場に波乱がないことで、日本株の相対的な出遅れ感に着目した買いが優勢となっている」(丸和証券の小林治重調査情報部長)との声が聞かれた。
年始から前日までの上昇率では、米ダウ工業株30種平均が12%、ナスダック総合指数が6.2%となっているのに対し、日経平均株価は3.1%、TOPIXがマイナス0.6%にとどまっている。
新東工や関西ア銀が急伸、ソニーの下げ限定
こうした中、中間決算発表が本格化しており、業績面で好材料を出した個別銘柄が買われた。上げが目立ったのが、通期業績予想を上方修正した新東工業。素材産業を中心におう盛な設備投資の恩恵を受けた。中間期と期末配当を各5円 50銭から6円50銭に引き上げた。
また、米投資ファンド会社ダルトン・インベストメンツが株式公開買い付け(TOB)を実施している情報通信機材の専門商社サンテレホンが大幅反発。もっとも、サンテレホンはTOBに反対の意見を表明している。このほか、ゴールドマン・サックス証券が19日付で、投資判断を3段階評価の最上位に当たる「買い」に新規設定した関西アーバン銀行が急騰した。
全般的に個別材料に反応するケースが目立っているほか、売買単価の低下傾向を示すように、東証1部の売買高上位には丸善、山水電気、日立造船、アツギなどが並び、いずれも高かった。
不動産株の上昇も目立ち、三菱地所、野村不動産、三井不動産が52週高値を更新した。
パソコン用電池の回収とゲーム事業の不振を受け、通期業績予想を下方修正したソニーは0.6%安の小幅な下落にとどまった。市場では、「業績下方修正したソニーの下げ幅が小さいことから見ても、相場は予想以上に強い印象だ」(マネックス証券の藤本誠之マネジャー)との声もあった。
目先には「窓」
日経平均は、5月11日の取引時間中の安値(1万6840円)と12日の高値(1万6655円)の間に空いた「窓」に上値を抑えられた格好となっている。「窓」は相場が急落したときに開くため、急落局面で損失を抱えた投資家からの売りが出やすくなる。心理的な節目である1万7000円を達成するためには、戻りを待った売りをこなしながら、この「窓」を埋めることが必要となる。
新興市場が軟調、USENが赤字転落
新興3市場が軟調に推移した。ジャスダック指数、東証マザーズ指数、大証ヘラクレス指数は朝方からマイナス圏に沈んでいる。いずれも1%以上の下落率となり、この日の安値圏で終了した。
企業業績の下方修正が相次ぎ、業績不振から売られた。この日の相場の下げのきっかけをつくったのがUSEN。映像・コンテンツ事業でコンテンツ制作費や広告宣伝費の先行投資が収益を圧迫し、06年8月期連結純損益は89億円の赤字となった。従来予想は10億円の黒字だっただけに、市場では、USENの赤字転落を受け、「会計不振などの影響から指数全体がディスカウントさせられる可能性がある」(いちよし証券投資情報部の宇田川克己課長)との声が聞かれた。
ジャスダック指数は前日比1%安の89.13、東証マザーズ指数は同2.2%安の 1208.75、大証ヘラクレス指数は同1.3%安の1954.29。
ジャスダック市場では、人材獲得競争の激化で中間業績予想を大幅減額したパソナテックが上場来安値。天候不順の影響で通期業績予想を大幅減額したホーブも上場来安値。 半面、電子部品市場の回復を背景に通期業績予想を上方修正したエノモトがストップ高(値幅制限いっぱいの上昇)。主力のネット広告事業の好調で、通期業績予想を増額修正したセプテーニも反発。親会社のUSENの大幅安の影響でインテリジェンスも9営業日ぶりに反落した。
東証マザーズ市場では、日本ベリサイン、ACCESS、フィンテックグローバル、サイバーエージェントなどが安い。半面、ディー・エヌ・エー、サミーネットワークス、アンジェスMG、テクノマセマティカルなどが高い。
大証ヘラクレス市場では、アセット・マネジャーズ、エン・ジャパンなどが安い。半面、再生不動産の一部案件の販売時期が上期に前倒しになり、中間業績予想を増額修正したラ・アトレが3日続伸。大阪証券取引所、デジタルアーツなどが高い。
TOPIX浮動株調整の影響
トヨタ自動車やスズキ、三菱商事など時価総額の大きい一部銘柄の上昇について、市場では今月末に予定されているTOPIXの浮動株調整の影響が再び取り沙汰され始めた。浮動株比率調整の詳細についてはすでに今月初に明らかになっているが、実際の入れ替えは月末時点で行われるため、機関投資家資金が動きだす可能性があるため。今回、比率の調整が行われたのは1-3月に決算を迎えた銘柄で、「東証1部の上場銘柄およそ1700のうち、1400から1500の大部分が対象になっており、インパクトが大きいイベントと見られている」(大和総研・橋本純一シニアクオンツアナリスト)。
橋本氏は、「パッシブ資金からは1週間前から動きが出てくる場合が多く、そうなると、来週から注目される」と話していた。 同総研のまとめでは、上場時価総額に占める割合が大きく、実際のウエートが上がり、プラスのインパクトがある銘柄としては三井住友F、トヨタ、NTTドコモ、スズキ、三菱自動車、イビデン、みずほ信託銀行、セブン&アイ・ホールディングス、三菱商、エルピーダメモリなど。また、売買代金が通常は多くないため、パッシブ資金が動いた場合の大きな買い需要発生が見込まれる銘柄としては、コロナやあみやき亭、ハードオフ、シモジマ、富士機工などがあるという。
S&P:ソニーの格付け見通しをネガティブに下げ-業績下方修正(3)
10月20日(ブルームバーグ):米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は20日、ソニーの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。19日の業績下方修正により、「来期の業績回復が可能かどうかに対する懸念が広がっている」ことが理由としている。現行の長期債格付けは「A-」に、短期債格付けは「A-2」に据え置いた。
ただ、S&Pはソニーについて、ブランド力の根強さなどを理由に、中長期的には安定的で強固な収益体質を構築できると信じる、としている。
ソニーは19日、ゲーム事業の苦戦と充電池の回収負担発生を理由として、 2007年3月期の連結純利益予想を従来の1300億円から38%減額し、800億円とした。営業利益は1300億円から62%減額し500億円、税引き前利益は1500 億円から53%減額し700億円へと、それぞれ下方修正したが、売上高予想は8兆2300億円に据え置いた。
ソニーについては、英米に拠点を置く格付け会社のフィッチ・レーティングスも12日、次世代ゲーム機「プレイステーション3(PS3)」の欧州発売遅延などで、ゲーム機事業は今後3-5年間、多額の赤字が継続する恐れがあると指摘。そのうえで、ソニーの外貨建ておよび円建て発行体格付けと、無担保優先債務を「A-」から「BBB+」へと、1段階引き下げていた。
ソニーの株価終値は前日比40円(0.8%)安の4750円。
KDDI:中間期の純利益、34%増-au好調と固定の採算改善(7)
10月20日(ブルームバーグ):国内通信2位のKDDIが20日発表した 2007年3月期の9月中間期連結決算は、純利益が前年同期比34%増の1360億円となった。携帯電話の「au」の採算が契約増とコスト低減とで引き続き好調だったのに加え、固定通信事業の損失縮小も寄与した。
売上高は同9.3%増の1兆6048億円、営業利益も同38%増の2295億円だった。このうち、携帯事業の営業利益は24%増の2428億円。auの好調で5.9%の増収に対し、費用は2.2%増に抑えられたため。
一方で、固定通信事業の営業赤字は295億円から168億円まで縮小した。昨年春の開始当初には開通工事の遅れに悩まされた格安電話サービス「メタルプラス」が軌道に乗り、9月末の契約者数が前年同期の3.6倍に当たる244万1000 件まで伸びたことが寄与した。
中間期末配当は前年同期比1000円増額し、4500円とする。この結果、年間配当も前期比1000円増の9000円を予定している。
通期は据え置きながら
通期の純利益予想は前期比2%減の1860億円だが、これは05年10月にツーカー3社を吸収合併したのに伴って設備の減損を特別損失として計上し前期に課税軽減効果が発生したのに対し、今期はそうした要因を想定していないため。事業収益の観点で見れば、売上高は同8%増の3兆2930億円、経常利益は同7%増の3150億円とみている。
ただ、中間期の時点で通期予想の営業利益の72%、純利益の73%を確保した。今後は東京電力から来年1月に買収する光ファイバー事業の採算性や、24日に迫った番号継続制度(MNP)の経過をめぐり大誤算が生じない限り、上方修正される可能性が高い。
7-9月純利益は604億円
同時に発表した7-9月(2007年3月期第2四半期)連結決算は、純利益が前年同期比24%増の604億円となった。売上高は同6.9%増の8064億円、営業利益は同36%増の1075億円だった。
携帯電話事業の収益性を示す指標であるARPU(1契約当たりの月間収入)はauで音声が4700円(前年同期5300円)、データ2000円(同1890 円)。ツーカーでは3050円(同4060円)。携帯事業の営業利益は1132億円(前年同期974億円)。固定通信事業の営業赤字は、68億円と、前年同期の179億円から大幅に縮小した。
携帯快進撃で負担増も
電気通信事業者協会の国内携帯電話契約統計によると、新規契約から解約を差し引いた純増数は、KDDIが96万4000台と、ドコモの95万9300台を押さえ、上半期としては3年連続の首位となった。
第3世代への移行で技術的な利点を生かし、他社よりも音楽配信サービスや通信性能で先行しているのが、好調の主因。市場ではMNPでも、KDDIが優勢との見方が一般的だ。9月末現在のシェアは28.1%。
ただ、皮肉にも顧客流入が想定外のペースで進み、来年3月末までとしていた国内シェア30%の達成が予想外に早まれば、端末の店頭価格引き下げのための補助金である販売奨励金の支給負担も膨らむなどして、営業経費の増大につながりかねない。
料金競争は仕掛けない
小野寺社長は20日の会見で、中間期までの半年間で通期予想の営業利益の 72%、純利益の73%を確保したにもかかわらず年間見通しを据え置いた理由として、「MNPで想定以上に顧客が動けば、短期的には収益に悪影響が出る」ためなどと説明した。
同社長はまた、MNPが導入されても消費者側が期待した低価格競争は起こらなかった、との指摘に対しては、「MNPをやると決まってから、各社は割引サービスを導入した」と語り、これも一種の料金競争だ、と主張した。
さらにMNPで「当社から料金競争を仕掛けるつもりはない」とあらためて強調。端末1台当たりの販売奨励金支給額についても「今までの水準を守っていきたい」と語った。1台当たりの奨励金は、第2四半期で3万7000円と、前年同期や、06年3月期平均と同額になっている。
「光」の影響
ただ、同社はNTTに対抗して自前の光ファイバー網を獲得するため、来年1月に東京電力から、不採算の光ファイバー事業を買収し、KDDIの固定通信部門に統合する。昨年10月の統合表明から約1年をかけ今月12日に正式合意を発表した割には、収益の青写真が不透明だ。
小野寺社長も正式合意発表の会見で、統合により固定部門の赤字が長引く可能性を既に示しており、統合実施後の第4四半期(07年1-3月)以降の収益にどの程度響くかは未知数。ただ、20日の会見では東電とKDDIの両社の業績に「大きな影響を与えるとは思っていない」と述べた。
固定はもう「安心」
UBS証券の乾牧夫シニアアナリストは、KDDIが通期予想で固定事業の営業赤字を460億円と想定しているのに対し、上期の赤字額が168億円に収まったことを踏まえ、東電の光事業買収による採算悪化を「心配する局面は終わった」と説明。固定事業の通期見通しについては「安心していい」と述べた。
また、乾氏は携帯事業について「MNPによりKDDIのシェアが現状から変わらなければ、年間営業利益の1000億円の上方修正も可能だ」と指摘した。会見での小野寺社長の発言どおり、シェアが急上昇すれば販売費用が増えるが、その悪影響が無ければ業績が上振れるため、という。
一方、クレディ・スイス証券の早川仁アナリストは20日夕に発表したリポートで、東電の事業買収により「光ファイバー顧客を獲得しようとすればするほど損失は拡大する」と指摘。そのうえで「固定通信事業の営業損失は今後、1000 億円を突破する懸念が出てきており、移動体の増益分を相殺する可能性がある」と、慎重な見方を示している。
米キャタピラー:7-9月期15%増益、通期業績見通しを下方修正
10月20日(ブルームバーグ):建設機械最大手の米キャタピラーが20日発表した2006年7-9月(第3四半期)決算は、前年同期比15%増益となった。石油や鉱山企業からの機械需要が拡大したことが貢献した。
純利益は7億6900万ドル(1株当たり1.14ドル)と、前年同期の6億 6700万ドル(同94セント)から増加。売上高は前年同期比で17%拡大して 105億ドル。
同社のジェームズ・オーエンズ最高経営責任者(CEO)は発表資料で、住宅市場の低迷や米経済の鈍化で今後、同社の売上高に悪影響が出る見込みだと明らかにした。同氏は、一部トラック用エンジンの販売「急減」などから来年の業績はおそらく打撃を受ける見込みだと述べた。
キャタピラーは2006年の売上高見通しについて13%増と、従来目標の12 -15%増から修正した。また通期の1株利益見通しについても5.05-5.30ドルと、前回見通しの5.25-5.50ドルから下方修正した。
さらに、2007年の売上高は前年並みから最大5%増の範囲、1株利益は前年並みから最大10%増が見込まれるという。
訴訟和解金関連費用を除く7-9月期利益は1.26ドルだった。調査会社トムソン・ファイナンシャルがアナリスト14人を対象に行った調査平均値では同1.35ドルが見込まれていた。売上高見通しは平均98億7000万ドルだった。
【来週の日本株】緩やかな上昇続く、海外株高への追随-米金利を注視
10月20日(ブルームバーグ):来週(23-27日)の東京株式相場は、緩やかな上昇傾向が続きそうだ。米ダウ工業株30種平均が史上最高値圏での取引が続くなど、欧米、アジア市場にまたがる世界的な株高傾向が続いており、年初来のパフォーマンスで大幅な出遅れが目立つ日本株の水準訂正の動きは継続する可能性が高い。また、国内では9月中間決算の発表が本格化。輸出関連企業を中心に為替相場は想定レートに比べて円安が進んでいるだけに、好業績への期待も相場全般の下値不安の後退につながっている。
今週の日本株は日経平均株価が0.7%高と、週間ベースで4週連続の上昇。強弱入り混じる経済統計や相場の高値警戒感から、米国株は伸び悩むと見られていたものの、じわり上昇したダウ30種平均は終値ベースで史上初の1万 2000ドル台に乗せた。本国市場の好調で、リスク許容度が増した外国人投資家は日本株への買い姿勢を継続。国内要因では、株価の下落傾向が続いていた代表的なジャスダック銘柄である楽天株が反発し、新興市場全般の下落に歯止めがかかったことも、個人投資家の心理と手口好転にひと役買った。
東海東京調査センターの隅谷俊夫シニアストラテジストによると、「日本株の出遅れ修正はまだ終わっていない。中間決算での上方修正が下値を支える格好となり、日経平均株価は5月安値時の窓(チャート上の空白)を目指す展開が予想される」という。
相場が緩やかに動く可能性を示すデータでは、オプション取引などで使われる将来の変動率予測指標、いわゆる「インプライド・ボラティリティが」があり、今年のピークだった6月の29%と比べると、現在は20%割れの低水準にある
米景気の軟着陸期待、来週はFOMC開催
米ダウ30種平均のほか、独DAX指数や英FT100指数、香港ハンセン指数など主要各国、地域の株価指数が軒並み年初来高値圏で推移。世界同時株高を演出したのは米国経済の軟着陸期待で、原油価格の調整持続でインフレ懸念が後退したほか、長期金利の安定で景気の減速も予想ほど進んでいないことが安心感につながった。
景気が特に強くもなく、弱くもないほど良い状態での相場を「ゴールディロックス(Goldilocks)相場」と呼び、市場では1995年以降の米国株の急上昇時と類似性があるとの見方が出ている。直近で発表された米国企業の7-9月期業績も、半導体最大手のインテルをはじめ相対的に良好と受け止められており、米国株相場は短期過熱が指摘されながらも、目立った調整には到らなかった。 ボストン・アドバイザーズで23億ドルの資産運用に携わるティモシー・ウールストン氏は、「インフレは引き続き抑制されており、多くの企業業績は絶好調に見える。株価は上昇するはずだ」と述べている。
来週の米国市場では、金利動向やインフレ心理に影響を与えそうな連邦公開市場委員会(FOMC)の開催や、住宅販売を示す指標などの発表が予定されている。東海東京調査センターの隅谷氏は、「FOMCは金利据え置きが有力と見られるため、市場の注目度は高くない。むしろ、住宅販売の低迷で長期金利が低下するなら、株価にとってプラス効果になる」と見る。
出遅れ修正とPER
米国を中心とする海外株式の上昇傾向は9月からすでに鮮明化しており、 19日までの年初来の株価上昇率は米ダウが12%、独DAX指数が15%、香港ハンセン指数が21%となっている。これに対し、日経平均株価は3.4%にとどまる。 安田投信投資顧問の磯正樹株式運用部長は、「現在の外国人買いは、グローバル・エクイティ・ポートフォリオを運用している機関投資家が、相対的な出遅れに着目して修正を行っている表れ」と指摘する。
もっとも、株価が企業収益の何倍まで買われているかを示し、低いほど割安とされるPER(株価収益率)は米ダウ30種平均が15倍、独DAXが14 倍なのに対し、日経平均は20倍に達する。 安田投信の磯氏は「世界景気が拡大局面入りしていない状況では、日本株のPER20倍は許容範囲の上限」と強調。株価が本格的に上値を追うには、PERが低下する必要があると受け止めている。
来週から中間決算が本格化
PERの低下には企業収益の増額修正が必要で、そのカギは中間決算の動向が握っている。大手精密機器メーカーのHOYAが19日に発表したのを皮切りに、3月本決算企業の9月中間期の発表は、来週末時点で全体の12%が発表を行うなど、次第に本格化してくる。全体の業績の方向感が見えてくるのは。 11月第2週(6-10日)当たりとみられる。来週の主な予定企業は、23日に信越化学工業や花王、24日にJSR、25日にシャープ、ホンダ、26日に新日本製鉄、キヤノン(第3四半期決算)、27日に松下電器産業など。業種では、電機を中心に鉄鋼、証券、化学などが比較的多い。
企業収益の好調は株式市場でも予想されており、決算発表を機に株価がどういう反応を示すかが注目される。HOYAでは会社計画を上回る7-9月期営業利益を達成しながらも、株価は発表後に下げ幅を広げた。このため市場では、「主要企業の決算発表で新たな支援材料が出てくるのか見極めたい」(岡三投資顧問の伊藤嘉洋常務)との姿勢が強まっている。
昨年と同様なら好反応も
ただ、野村証券金融経済研究所の松浦寿雄ストラテジストによれば、「昨年も期待感から株価が大幅上昇しながら、決算発表後も好材料出尽くしとはならなかった。HOYAのケースは個別要因の可能性もある。過去のデータ検証から見て、今回も好決算発表企業はプラスの株価反応が出る公算が大きい」という。 同研究所の試算では、昨年の中間決算発表時である10月末のPERは同社予想ベースで19.7倍と、現在の19.8倍とほぼ変わらない水準にあった。昨年は業績期待や小泉政権の構造改革加速期待から、株価は8月から10月中旬まで日経平均株価は約16%上昇。そこでいったん足踏みしたものの、好決算を評価する形で年末にかけて23%高となった。
日本銀行の9月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の今期為替レートは1ドル=111円。足元では円安が一服しているとは言え、計画比では大幅な円安水準。電機や自動車など輸出関連企業の決算発表が多いだけに、為替による収益底上げの状況が確認されるケースは多そうだ。輸出株の中でも、民生エレクトロニクス企業については「在庫状況に改善の兆しが見られるか」(松浦氏)も焦点になる。
このほか、来週の日本株に影響を与えそうな材料は、米国では24日から 25日に開催されるFOMCのほか、25日に9月の中古住宅販売、26日に9月の新築住宅販売、27日に7-9月期実質GDP(国内総生産)事前推計値などの発表がある。国内では、27日に9月全国消費者物価指数が予定されている。
官房長官:金融政策は日銀が判断-物価参照値を諮問会議で議論せず(3)
10月20日(ブルームバーグ):塩崎恭久官房長官は20日午後の記者会見で、金融政策について「金融政策は日銀の所管。その手段は日銀で議論され、判断が下される」との認識を強調した。「自民党の中川秀直幹事長が、先日の経済財政諮問会議の議論を踏まえ、政府と日銀の間で名目成長率について意見交換すべきだとか、望ましい物価安定の参照値の新しい枠組みに関して議論を深めていく必要があると問題提起しているが」との質問に答えた。
また、「具体的な名目成長率や物価安定参照値について経済財政諮問会議で取り上げる予定はないか」とも聞かれ、「具体的な計画は特にない。諮問会議は広く議論をする場ではあるが、日銀の専管事項であり、手段については世界どこでも中央銀行が自ら決めるのが当然だ」と述べた。
諮問会議の福井総裁発言に反応-中川幹事長 中川幹事長は自身のウエブサイトに掲載している日記「トゥデイズアイ」に 19日、「第1回経済財政諮問会議について」をテーマに、経済政策について持論を展開。この中で、中川幹事長は、13日の同会議議事録に日銀の福井俊彦総裁の「気持ちの上で少し気になるのは、『成長なくして未来なし』というフレーズが、一般の国民の皆さんにちょっと耳ざわりがよすぎないか」との発言が掲載されていることを「注視する」と指摘。さらに、「『成長なくして日本の未来なし』は自民党総裁選における安倍政権構想の基本理念であり、それに対して『耳ざわりが良すぎる』と公式の場で発言されたことは、単なる経済政策議論を超えた政治的意味合いを含んでいる可能性があるのか、ないのか」などと福井総裁に問いかけている。 そのうえで、中川幹事長は「政府と日銀はマクロ経済政策目標を共有し、その共通の目標の中でこそ、政策手段の独自性を維持すべきである。政府と日銀の間で名目成長率について忌憚のない意見交換が行われるべきである」と注文を付けている。 また、中川幹事長は自民党財政改革研究会の2006年6月の最終報告書が、今後の成長戦略に関し、「『新たな成長』におけるインフレ懸念を払拭し、インフレになりそうな場合に早期に対応するために効果的であるだけでなく、再度デフレに戻らないための政策手段としても有効と考えられている、望ましい物価安定の参照値などの新しい枠組みに関して、議論をさらに深めていく必要がある」と言及している点を紹介。「こうした党の観点からも、昨日公開された経済財政諮問会議議事録で議論されていることの今後の推移に、引き続き注目していきたい」と述べている。 中国・唐氏と金総書記の会談 一方、塩崎長官は中国の唐家セン国務委員と北朝鮮の金正日総書記との会談に関し、中国政府から日本政府に対して20日午前に報告があったことを明らかにした。ただ、具体的内容については「特に申し上げるのは差し控えたい」と述べた。