10/19 ブルームバーグ 記事
日本株は反落、米ハイテクに収益懸念-HOYA反応も冷やす(終了)
10月19日(ブルームバーグ):東京株式相場は、午後に下落基調を強めて反落。前日の米国市場で半導体大手、アドバンスト・マイクロ・デバイシズの粗利益率低下が確認されたことを受け、東京市場でも収益先行きへの懸念が先行した東京エレクトロン、アドバンテストなど半導体製造装置関連を中心としたハイテク株が安い。午後1時にHOYAが発表した7-9月期業績は予想より良好だったものの、株価が下落基調を強めたことで、投資指標面などから日本株の上値余地が限られるとの見方も広がった。
日経平均株価の終値は101円64銭(0.6%)安の1万6551円36銭、TOPIXは2.97ポイント(0.2%)安の1635.77。東証1部の売買高は概算で15 億3332万株。値上がり銘柄数は1028、値下がり銘柄数は544。
岡三投資顧問の伊藤嘉洋常務によると、「決算発表で業績相場の第2ステージ入りが予想されていたが、HOYAの下落で中間決算に対する期待感がそがれた。来週の主要企業の決算発表で新たな支援材料が出てくるのか、米国株がダウの1万2000ドル達成で目標達成感となるのかを見極めたい」という。
HOYAショック
米国の物価指標の落ち着きや好調な企業業績から米ダウ工業株30種平均が最高値を更新した流れを受け、午前は不動産や海運など業績期待の強い業種・銘柄を中心に堅調にスタート。その後は強弱観が対立し、もみ合いで推移した。
立花証券の平野憲一執行役員は「現在の為替水準や原油価格の下落などを考えると、企業業績は上方修正される可能性が高い。ただ日経平均株価のPERは20倍超と、米ダウ工業株30種平均の16倍などと比べて高く、この水準から本格的に上値を追うには実際の1株利益がどれだけ上積みされるかの確認が必要」という。
相場のこう着ムードに変化が見られたのが午後1時のHOYAの決算発表。国内できょうから始まる9月中間決算の方向を占うとして注目されたHOYAは、発表後に下げ幅を縮める場面もあったものの、上値の重さが認識されるとともに下げ幅が拡大。それを見て株価指数先物に売りが出ると、現物株との裁定解消売りが膨らみ、指数の下げが広がった。
SMBCフレンド証券投資情報部の松野利彦次長は、「HOYAの決算に対する反応が材料出尽くしとなったことで、足元の企業業績好調は株価に織り込まれたとの懸念が強まった。今後は、期待を上回るサプライズが出てくるかどうかが焦点になりそうだ」と見ていた。
高水準の裁定買い残に警戒広がる
こうしたHOYAの動きを見て市場に高まったのが、需給面での高水準の裁定買い残高に対する警戒感。先月末からの株価上昇局面では業績期待を背景とした裁定買いのつみ上がりによってもたらされた一面もあり、東京証券取引所が18日発表した13日時点の裁定取引に伴う現物株の買い残高は、約4兆 8300億円と約半年ぶりに過去最高となっている。
新光証券エクイティ情報部の三浦豊シニア・テクニカルアナリストは「先物安に伴う裁定解消売りへの警戒が必要。今後出来高が増加しなければ影響を受ける可能性がある」と警鐘を鳴らす。 新光証券調べによると、12日現在の裁定買い残高の東証1部時価総額に対する比率は0.94%まで高まった。1992年以降の同比率のピークは01年5月の 0.98%、04年4月の1.01%と1%前後が目安となっているという。
半導体製造装置株は大幅安、フォスタ電は急落
マイクロプロセッサー(MPU、超小型演算処理装置)世界2位の米アドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)が18日発表した2006年7-9月(第3四半期)決算は、同業最大手の米インテルからシェアを獲得し、前年同期比77%増益となったが、収益力の低下が明らかになり、株価は時間外取引で一時13%安と売り込まれた。この影響で、東エレクやアドテスト、ニコン、東京精密など半導体製造装置関連株が総じて大幅安。ハイテク株ではロームや村田製作所なども安い。
ホンダや日産自動車など自動車株も下げ、個別では価格競争の激化・資材費の高騰などによる工事採算低下が収益悪化に結びついた関電工が年初来安値を更新。先行投資的な経費の増加から9月中間期の連結業績予想を下方修正したフォスター電機は急落し、東証1部値下がり率2位。9月中間と通期の業績をともに下方修正した、だいこう証券ビジネスは同下落率首位。このほか、米TAPが前日に米国で決算発表を行った武田薬品工業、7000万株の公募を発表したイオンなども下落した。
ダイヤモンドリースとUFJセントラルリースの株価がそろって急反落。両社は朝方、2007年4月1日付で合併することで基本合意したと発表したが、リース業界全体の市場の伸びは見込めず、シナジー効果は限られるとの見方が広がった。
日立ハイテやサンテレは高い
半面、新興市場の出直りで、個人投資家の株式投資に対する意欲が回復するとの期待があることから、野村ホールディングスを始めとする証券株が高く、カブドットコム証券や松井証券などが東証1部の上昇率上位に並んだ。
4-6月期当期純利益が3大メガバンクの中で唯一の大幅増益となり、業績期待の高まっているみずほフィナンシャルグループが上昇。業績増額期待が出ているJTも連日の年初来高値。野村不動産ホールディングスが上場来高値を更新し、三井不動産も15年ぶり超の高値水準となるなど不動産株も高い。
インクジェットプリンタ事業のコスト削減などが貢献して9月中間連結経常利益見通しを増額したセイコーエプソン、電子デバイスシステム事業などが好調に推移して9月中間期業績予想を上方修正した日立ハイテクノロジーズが業績評価から上昇。
米投資ファンド会社ダルトン・インベストメンツが株式公開買い付け(TOB)を実施する意向を表明したサンテレホンはストップ高(制限値幅いっぱいの上昇)買い気配となった。ユーロ円CBの発行中止で、利益希薄化と需給悪化懸念が後退したロプロが午後に急騰し、東証1部値上がり率首位となった。
新興市場が高い、楽天はストップ高
新興市場では楽天が値幅制限いっぱいのストップ高買い気配で、1カ月ぶりの高値水準。新興3市場とも指数は揃って上昇し、ジャスダック中心に時価総額上位銘柄の上げが目立つ。
豊証券の菊池由文取締役は、「個人も信用取引の絶対期日、追い証(追加証拠金の差し入れ義務)の発生が一巡し、相場に参加しなくてはいけないと思ってきたようで、直近の中小型株の上昇につながっている」と話していた。
ただし、先行きの見方ついては意見が分かれている。立花証の平野氏が「ジャスダック市場は株価調整でPERが21-22倍まで下落し、ナスダックの28倍に比べて割高感は解消している」と見る一方、楽天証券の福永博之チーフストラテジストは「現在の反発はテクニカル的なリバウンドに過ぎず、短期的にはほぼ戻りめど水準まで到達しつつある」という。
ジャスダックは売買代金1000億円超
ジャスダック指数は1.65(1.9%)ポイント高の90.05と5日続伸し、終値ベースで1カ月ぶり90ポイント台を回復。売買代金も8月31日以来の1000 億円超えと活況。東証マザーズ指数は9.98(0.8%)ポイント高の1235.93と続伸し、大証ヘラクレス指数は29.17(1.5%)ポイント高の1978.97と6日続伸となった。
ジャスダック市場では、楽天、SBIイー・トレード証券、テレウェイヴ、オプト、インテリジェンスが上昇。午前の取引終了後に業績を上方修正したスターキャット・ケーブルネットワークは値幅制限いっぱいまで買われた。半面、ジャストシステムは反落し、スパークス・グループ、ファンコミュニケーションズも安い。
東証マザーズ市場ではブイ・テクノロジー、アイディーユー、ディー・エヌ・エーが高い。前日人気化したテクノマセマティカルは値幅制限いっぱいまで上げた。共同開発した生体適合性高分子ナノ粒子を用いたクリーム製剤が、アトピー性皮膚炎に有効性であることが動物実験で確認できたと発表したアンジェスMGは5日続伸。一方、日本M&Aセンター、サイバーコミュニケーションズ、メディアシークが安い。 きょう上場したノバレーゼの初値は公募価格比27%高の57万2000円、アクロディアの初値は公募価格比55%高の20万1000円となった。
大証ヘラクレス市場は、ドリームテクノロジーズ、デジタルアーツ、USEN、夢の街創造委員会が買われた。半面、ゼンテック・テクノロジー・ジャパン、スター・マイカ、アドバンスクリエイトが下げた。
このほか、名証セントレックスにきょう上場したゼットンの初値は公募価格比8.7%高10万円。
海外勢買い・個人売りの構図続く、二極化相場を反映-10月2週需給
10月19日(ブルームバーグ):東京証券取引所が19日に発表した10月第2週(10日-13日)の投資部門別売買動向によると、東京、大阪、名古屋3市場の1・2部合計で、海外投資家は金額ベースで1461億円を買い越した。買い越しは3週連続。対照的に個人投資家は3週連続の売り越しとなり、売り越し金額は2411億円だった。
第2週は週初が祝日による休場で、営業日は1日少なかったものの、最近の海外勢買い・個人売りの構図が持続。米国のダウ工業株30種平均が史上最高値を更新したほか、欧州、アジア主要市場も含めた世界的な株高基調の中で、海外勢のリスク許容度の高まりが確認された格好だ。市場では、原油市況の調整本格化で主要国金利の上昇一巡感が広がり、10月からの新たな四半期入りに伴って株式市場に資金が流入していると見られている。
米大手証券メリルリンチが17日に公表した10月の世界のファンドマネジャー調査でも、今後1年間の世界のコアインフレ見通しは、上昇と見る比率から低下と見る比率を引いた数値がマイナス14%と、前の月のプラス3%から急低下。これは、物価が低下傾向になると見る向きが増えたことを示す。また、短期金利見通しも、前月のプラス5%からマイナス2%に下がった。
調査結果を受けて、メリルリンチ日本証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは「最近の世界同時株高が、インフレや金利上昇に対する懸念の低下によって引き起こされた金融相場であることを示す」と指摘している。
一方、日経平均株価は週末13日におよそ5カ月ぶりに終値ベースで1万 6500円台を回復した。これに対し、ジャスダック指数など新興市場の下落傾向が深刻化。資金量の多い機関投資家に優位な1部大型株の上昇、個人投資家が積極的な新興市場の下げという二極化進行の中で、個人は痛手を被っているとされる。また、日経平均が4月7日に年初来高値1万7563円を付けた前後の局面で、信用取引を通じて買った向きは6カ月の決済期日が迫っていただけに、個人の売り圧力が高まりやすい状況をうかがわせる結果となった。 個人の現金、信用取引別の差し引き売買状況を見ると、現金は2128億円、信用は283億円のそれぞれ売り越しだった。
ただ、そうした観点からすれば、信用売り越し額は前の週の661億円から減少。豊証券の菊池由文取締役によると、「個人は絶対期日、追い証(追加証拠金の差し入れ義務)が終わり、相場に参加しなくてはいけないと思ってきている」という。
このほかの主体別の売買動向では、買いでは証券自己が1241億円、投資信託が217億円、信託銀行が12億円、その他金融機関が36億円のそれぞれ買い越しを記録。投信は5週連続の買い越しだった。 売り主体では、事業法人が15億円、生保・損保が86億円、長銀・都銀・地銀等が64億円、その他法人等が166億円の売り越しとなっている。