10/14 ブルームバーグ 日銀福井総裁の記事 | 20年間で5000万作る資産運用方法を考える・・・>゜)))彡◆

10/14 ブルームバーグ 日銀福井総裁の記事

福井日銀総裁:年内利上げの可能性を問われれば否定はできない(7)
  

 10月13日(ブルームバーグ):日本銀行の福井俊彦総裁は13日午後、定例会見で、追加利上げの時期について「経済・物価情勢次第であり、これ以上に言いようがないが、年内の追加利上げの可能性を問われれば、これを否定することはできないと思う。しかし、かと言って、現時点で利上げの時期を特定して考えているわけでもない。従来通り極めてオープンだ。毎回の政策決定会合で経済・物価情勢を丹念に点検した上で、適切に判断していきたい」と述べた。

  福井総裁は景気の現状について「内外の需要面から見ても、あるいは供給サイドから見ても、引き続き日本経済は緩やかな拡大のパスを着実に歩んでいる」と指摘。先行きについても「恐らく、生産、所得、支出の好循環が働く下で、今までに出している展望リポートや中間評価で示した見通しに沿って、景気は息の長い成長を続けていく可能性が高いと思っている」と語った。

        金融政策の基本スタンスは変更せず

  金融政策運営については「これまで出てきている経済・物価に関するデータは、私どもの金融政策の基本スタンスの変更を迫るものではない。今後とも、経済・物価情勢を丹念に点検しながら金融政策を運営していきたい」と指摘。

  その上で「間もなく新しい展望リポートを出す時期が近づいているが、経済・物価情勢が展望リポートに沿って展開していくと見込まれるのであれば、金利水準の調整については、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に行う」と述べた。

  福井総裁はさらに「この場合、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと判断している。金利水準の調整は、経済・物価情勢をよく見極めながら、ゆっくり進めていく。これに尽きる」と語った。

        米国経済はソフトランディングの範囲内

  米国経済については「米国経済全体で見ると、これまでのところ住宅市場の調整の進展がある程度加速している状況ではあるが、個人消費や米国経済全体への悪い影響はかなり限定的にとどまっている。経済全体としては、いわゆるソフトランディングのシナリオの範囲内で、これまでのところは動いているのではないかという印象だ」と語った。

  福井総裁はさらに「世界経済全体としては地域的な広がりをもって順調な拡大が続いている。米国経済の中の住宅市場の調整がさらに進んだ場合、米国経済自身のその他の部門で調整圧力をどれくらい吸収できるかという問題と、世界経済全体で米国の限度をどの程度吸収できるかという、二重のフィルターの強さを照らし合わせながら、今後の状況を見ていく必要がある」と述べた。

          米国経済には上振れリスクも

  米国経済が失速した場合の金融政策運営に与える影響については「ゆっくり金利水準の調整を図っていくという基本スタンスに響くほどの強いショックになるかどうか分からない」としながらも、「今後の金利調整を進めていくペースそのものを調整することによっても、吸収可能な幅は非常にある」と言明。

  その上で「何かシナリオが少し狂ったときに、金融政策運営のシナリオまで一挙に塗りかえるというようなリスクは、それほど大きくないのではないか」と語った。

  福井総裁は一方で「米国経済について、やはりアップサイドリスクということも考えておかなければいけない」と指摘。「ある期間が経過した後、潜在成長能力のパスにスムーズに戻っていくという好ましいシナリオの可能性もまた十分ある」と述べた。

  福井総裁はさらに「(その場合は)インフレ圧力が根強く残るというリスクがある」とした上で、「多分、連銀のボードメンバーの方々も、こちらの方のリスクも等しく頭に置きながら推移を見ているのではないかと思う。日銀でも、両サイドのリスクを等しく頭の中に置いて見ていきたい」と語った。

           円がかなり安い方向に行っている

  為替相場の円安が日本経済に与える影響をみるか、という質問に対しては「為替相場はそれぞれの国の経済の実体、あるいは今後の方向性、それからインフレ率の現状と将来変化する方向への期待、そして金利差と、金利差の将来の変化の方向と、さまざまな要因が市場の中で消化されて決まってくる」と指摘。

  福井総裁はその上で「今、確かに円の為替相場は対ドルで見ても、対ユーロで見ても、あるいはその他通貨も全部含めた実効為替レートで見ても、過去との比較でかなり円が安い方向に行っているなと思うが、これを固定して、将来の影響を全部推し量るということにどれほど意味があるかどうか、私は少し疑問に思っている」と述べた。

  福井総裁はさらに「ここから先はさらに円安に行くのか、少し円高に戻るのか分からないが、相場は基本的に振れながら、常に新しい均衡点を求めて動くものであり、相場そのものが逆に経済に対して決定的に悪い影響を及ぼし続けるというようなものではないのではないか」と語った。

            安倍政権との関係

  安倍政権との関係については「一部報道では金融政策に対する制約が強まると伝えられているが、本当かなと思っている」と語った。その上で「幸いこれまでのところ、政府と日銀の間では経済・物価情勢についての基本的な認識に相違はない。それのみならず、物価安定の下での持続的成長を実現していくという方向性についても考え方を共有してきた」と指摘。

  さらに「新しい政権では、それぞれの分野について深い経験と見識をお持ちの方々が重要ポストに就任されて、ご発言などをうかがっていると、こうした日銀と政府の関係についてよくご理解いただいているのではないかと感じている」と語った。

  福井総裁はその上で「日銀としては、政府と緊密に連絡を取りながら、経済・物価に関する認識を共有することが基本だ。さらにその努力を強めるとともに、引き続き政策判断そのものは、自らの責任の下、適切に決断し、かつ適正に実行してまいる」と述べた。

         「慎重に」は「丹念に」と同じ意味

  福井総裁が12日の参院予算委員会で、金利水準の調整について「あくまでゆっくり、慎重に調整を進めさせていただきたい」と述べ、「慎重に」という表現を使ったことで、市場では日銀がより慎重に追加利上げを行うのではないか、という憶測も出た。

  「慎重に」という言葉を使った真意をうかがいたい、という質問に対し、福井総裁は「そういう報道を拝見して、ごく最近のところは、市場は材料があまりないのかな、と率直に感じた。私は特に新しい意味を込めて答弁したつもりは全くない」と述べた。

  福井総裁はその上で「いつも諸情勢の変化を丹念に点検しながら、ゆっくりと必要な調整を進めていく、という言い方をしている。慎重に、と言ったとすれば、それは丹念に情勢を点検しながら、と言ったのと同じ意味だと理解していただければよいと思う」と語った。

  主な一問一答は次の通り。

――経済・物価情勢の判断をお聞かせください。

  「内外の需要面から見ても、あるいは供給サイドから見ても、引き続き日本経済は緩やかな拡大のパスを着実に歩んでいる。先行きについても、恐らく、生産、所得、支出の好循環が働く下で――この次の政策決定会合で新しい展望リポートをお示しするが、今までに出している展望リポートや中間評価で示した見通しに沿って、景気は息の長い成長を続けていく可能性が高いと思っている」

――先日の武藤敏郎副総裁の京都での記者会見などを受けて、金融市場で年内利上げの可能性が浮上しているが、どうお考えか。

  「これまで出てきている経済・物価に関するデータは、私どもの金融政策の基本スタンスの変更を迫るものではない。今後とも、経済・物価情勢を丹念に点検しながら金融政策を運営していきたい。間もなく新しい展望リポートを出す時期が近づいているが、経済・物価情勢が展望リポートに沿って展開していくと見込まれるのであれば、金利水準の調整については、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に行う。これが基本スタンスだ」

  「この場合、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと判断している。これも従来通りだ。あらためて申し上げるが、金利水準の調整は、経済・物価情勢をよく見極めながら、ゆっくり進めていく。これに尽きる」

  「こうした基本的な考え方の下で、具体的な政策のタイミングや金利水準については、経済・物価情勢次第であり、これ以上に言いようがないが、お尋ねの中にあった年内の追加利上げの可能性を問われれば、これを否定することはできないと思う。しかし、かと言って、現時点で利上げの時期を特定して考えているわけでもない。従来通り極めてオープンである。毎回の政策決定会合において経済・物価情勢を丹念に点検した上で、適切に判断していきたいと思っている」

――安倍政権が発足したが、日銀の金融政策に対するスタンスは小泉政権の時代と変わるとお考えか。

  「一部の報道では、安倍新政権の下で日銀の金融政策に対する制約が強まると伝えられているが、本当かなと思っている。日銀法では、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならないとなっている。日銀法の趣旨は非常に明確だ。日銀としては、これまでもこの趣旨を踏まえて適切に対応してきているつもりだし、今後とも基本的にはその精神でしっかり臨んでいく」

  「幸いこれまでのところ、政府と日銀の間では、経済・物価情勢についての基本的な認識に相違はない。それのみならず、物価安定の下での持続的成長を実現していくという方向性についても考え方を共有してきたと思う。新しい政権では、それぞれの分野について深い経験と見識をお持ちの方々が重要ポストに就任されて、報道ベースでご発言などをうかがっていると、こうした日銀と政府の関係について、よくご理解いただいているのではないかと感じている」

  「日銀としては、政府と緊密に連絡を取りながら、経済・物価に関する認識を共有することが基本だ。さらにその努力を強めるとともに、引き続き政策判断そのものは、自らの責任の下、適切に決断し、かつ適正に実行してまいる。こういう考え方だ」

――米国経済についてはどうお考えか。

  「米国は非常に広い国であり、住宅市場は押しなべて調整が進んでいるということだが、調整の度合いは地域によって多少ばらつきがあるという感じがするが、全体として見れば、住宅市場の調整は少し加速している。こういう感じではないかと思う。住宅価格についても、どこの国でも一本で見極められる統計はないが、さまざまなデータで見て、住宅価格の上昇がかなりフラットになり、部分的には下落を見ているという状況になっていると思っている」

  「米国経済全体についてみてみると、これまでのところ、住宅市場の調整の進展がある程度加速している状況ではあるが、個人消費や米国経済全体への悪い影響はかなり限定的にとどまっている。そういうふうな印象を持っている。経済全体としては、いわゆるソフトランディングのシナリオの範囲内で、これまでのところは動いているのではないかという印象だ」

  「ただ、今後どうなるか十分注意して見ていかなければならない。米国の中でも、住宅市場の調整がさらに深く進んだ場合、特に住宅価格の下落が大きく進んだ場合、個人消費に対して遅れて大きな影響が及ぶ可能性があると言う人と、それほど直接的に悪い影響を想定しなくてよいという人に分かれている。したがって、私どもも今後の推移については注意深く確認していかなければならない。今までのところは、ソフトランディングのシナリオで動いている」

  「米国経済は減速過程に入っているが、世界経済全体としては地域的な広がりをもって順調な拡大が続いているという状況だ。米国経済の中の住宅市場の調整がさらに進んだ場合、米国経済自身のその他の部門で調整圧力をどれくらい吸収できるかという問題と、世界経済全体で米国の限度をどの程度吸収できるかという、二重のフィルターの強さを照らし合わせながら、今後の状況を見ていく必要がある」

――米国が失速した場合の日本経済への影響をどうご覧になるか。

  「米国経済について、もっぱらダウンサイドリスクでのお尋ねだが、ダウンサイドリスクについては繰り返しになるが、住宅市場の調整が一般の予想より厳しめに推移した場合、米国経済の他の部門での吸収力を飛び越えて、あるいは世界経済のフィルターをも乗り越えて、日本経済に悪い影響を及ぼすか、この点は十分注意してやっていかなければならない」

  「ただし、もう1つ、日本経済そのものも、かつてに比べると、やはり相当ショックに対する耐久力は強まっているということがある。日本経済の海岸線で波を受け止める能力を入れれば、フィルターは三重にあるのかなと思うが、決してわれわれは楽観的にものを見たり、安心し過ぎるということではなくて、ご指摘のようなリスクの可能性は少なくともあり得るということは十分念頭に置いて、これからのことを考えていかなければならない」

  「ゆっくり金利水準の調整を図っていくという基本スタンスに響くほどの強いショックになるかどうか、これは分からないが、具体的に今後の金利調整を進めていくペースそのものを調整することによっても、吸収可能な幅は非常にあるのだろうなと思っているので、何かシナリオが少し狂ったときに、金融政策運営のシナリオまで一挙に塗りかえるというようなリスクはそれほど大きくないのではないかと思う」

  「一方、米国経済について、やはりアップサイドリスクということも考えておかなければいけない。住宅市場の調整がさらに進んでも、意外にその他の部門での吸収力が強く、米国経済そのものはいわゆるソフトランディングの範囲内で比較的ビナインなというか、好ましいパスをたどって――もちろん、ある経過期間が必要だが、ある期間が経過した後、潜在成長能力のパスにスムーズに戻っていくという好ましいシナリオの可能性もまた十分ある」

  「この場合に、米国の経済の中で今感じられているインフレ圧力がどれくらいスムーズに経済の中に吸収され尽くされるほど、ソフトランディングのプロセスの中で米国経済に適度なスラックが生じて、インフレ圧力まで食ってしまうかどうか。食いきれないときには、インフレ圧力が根強く残るというリスクがある。アップサイドリスクとして。こちらの方も可能性を否定し去りがたいところがある」

  「多分、連銀のボードメンバーの方々も、こちらの方のリスクも等しく頭に置きながら推移を見ているのではないかと思う。日銀でも、両サイドのリスクを等しく頭の中に置いて見ていきたい」

――昨日、参院予算委員会で、金利水準の調整について「あくまでゆっくり、慎重に調整を進めさせていただきたい」として、「慎重に」という表現を使われた。これを受けて市場では、日銀は追加利上げをより慎重に行うのではないか、という憶測も出ているが、「慎重に」という言葉を使われた真意をうかがいたい。

  「そういう報道を拝見して、ごく最近のところは、市場は材料があまりないのかな、と率直に感じた。私は特に新しい意味を込めて答弁したつもりは全くない。いつも申し上げているのは、諸情勢の変化を丹念に点検しながら、ゆっくりと必要な調整を進めていく、という言い方をしている。慎重に、と言ったとすれば、それは丹念に情勢を点検しながら、と言ったのと同じ意味だと理解していただければよいと思う」

――円安が日本経済に与える影響をどうお考えか。

  「為替相場はそれぞれの国の経済の実体、あるいは今後の方向性、それからインフレ率の現状と将来変化する方向への期待、そして金利差と、金利差の将来の変化の方向と、さまざまな要因が市場の中で消化されて決まってくるものだ」

  「今、確かに円の為替相場は対ドルで見ても、対ユーロで見ても、あるいはその他通貨も全部含めた実効為替レートで見ても、過去との比較でかなり円が安い方向に行っているなと思うが、これを固定して、将来の影響を全部推し量るということにどれほど意味があるかどうか、私は少し疑問に思っている」

  「為替相場は基本的には振れるものだ。しかし、異常な振れで人々の経済行動の振幅になるのは好ましくないが、ここから先はさらに円安に行くのか、少し円高に戻るのか分からないが、相場は基本的に振れながら、常に新しい均衡点を求めて動くものであり、相場そのものが逆に経済に対して決定的に悪い影響を及ぼし続けるというようなものではないのではないか」

  「為替相場にしても、長期金利にしても、あるいは株式相場にしても、実体経済の運営に強いほころびを見せるということがない限り、経済を徹底的に殺しに来るということはないのではないか、というのが私の基本思想だ」