10/10 ブルームバーグ 記事
日本株は小幅高、北朝鮮と機械受注下振れ吸収-コア30高い(終了)
10月10日(ブルームバーグ):3連休明けの東京株式相場は小幅高。北朝鮮による地下核実験の実施を受け、日経平均株価は下落して始まったものの、先物主導でプラス圏へ浮上すると、一時は184円高まであった。5月12日以来、約5カ月ぶりに1万6600円台を回復する場面が見られたが、午後2時に発表された機械受注は市場予想を下回り、取引終了にかけては伸び悩んだ。
日経平均株価の終値は、前営業日比41円19銭(0.3%)高の1万6477円 25銭。TOPIXは同0.62ポイント(0.04%)高の1634.83。東証1部の売買高は概算で16億8962万株。
ただ、機械受注を受けて一時マイナス圏に沈んだ状況と比較すると、終値ではプラス圏を維持し、底堅さを指摘する声も聞かれた。 T&Dアセットマネジメント株式部の衣川明秀チーフ・ファンドマネージャーは、「北朝鮮の核実験の影響で下げると思っていたが、意外と強かった。弱かった9月の相場で織り込んでいた可能性がある。機械受注は単月で見ても意味がない統計。国内企業のキャッシュフローは強く、設備投資のトレンドは続いている」との見方を示した。
質への逃避も
TOPIXニューインデックスシリーズを見ると、コア30とラージ70指数が上昇した一方、スモール、ミッド400指数は下落。ジャスダック指数が年初来安値を更新するなど新興3市場も軟調だった。東証1部の騰落状況は、値下がり銘柄数(1236)が値上がり銘柄数(530)を大きく上回り、時価総額の大きい銘柄を買う流れが続いた。時価総額や流動性、業績面で安定感の強い銘柄を志向する「質への逃避」を指摘する声もが多かった。
三菱UFJフィナンシャル・グループやトヨタ自動車、アステラス製薬などが高い。中間決算が接近する中、業績面で好材料の出した銘柄も人気化し、半導体材料の好調で今期営業利益の上振れが報じられた信越化学工業が上場来高値を更新。
このほか、原油価格の上昇を受け、新日鉱ホールディングスなどの石油・石炭株、国際石油開発帝石ホールディングスなどの鉱業株、三菱商事などの大手商社株の上げが目立った。アステラス製薬などの医薬品株のほか、電気・ガス株、食料品株といったディフェンシブ業種も買われた。TOPIXの医薬品指数は52週高値を更新。
東証1部の上昇率上位では、石川製作所などの低位防衛関連株の一角のほか、女性服の販売の伸びで好業績が確認されたパルコ、日中首脳会談を受けた外交関係修復への期待で、ユニオンツールやブラザー工業など中国関連銘柄の一角も堅調だった。
受注残が増えて業績が好調だった東建コーポレーションが上場来高値。ビルや工場の電気工事が好調で、今期業績と配当を増額修正した東芝プラントシステムズが急伸した。
イオンが続落、過去最大規模の公募増資の観測報道
これに対し、東証1部市場で個別に材料が出て下げた銘柄では、イオンが続落。7日付の読売新聞朝刊は、イオンが公募増資を中心に同社して過去最大規模となる千数百億円の資金調達を検討していることが明らかになったと報じた。同社は7日午後、「当社では適切な資金政策について常に検討しており、現時点でお知らせすべき事実はない」とするコメントを発表している。
クレジットカード事業などを手掛けるジャックスもストップ安(値幅制限いっぱいの下落)。東証1部で値下がり1位。カード発行費用や貸倒関連費用がかさむとして、今期業績予想を下方修正したことで失望売りが膨らんだ。その他金融株への売りも波及した。
このほか、新社長よる衣料や雑貨の強化策の発言を受けて戦略転換が警戒視されたダイエーが大幅続落。
アジア株にも落ち着き
北朝鮮リスクはひとまず吸収された。北朝鮮が核実験を実施したとの発表を受け、地政学的リスクの高まりから、前日に不安定な動きを見せたアジア株相場は反発する動きとなった。東京時間午後3時現在の韓国総合株価指数は前日比0.8%高。9日は約4カ月ぶりの大幅下落となっていた。また、シンガポールST指数は同0.7%高、香港ハンセン指数は同0.9%高となった。
もっとも、アジア株の動きなどを受け、投資家心理は改善したものの、内閣府が午後2時に発表した8月の機械受注統計が市場予想を大きく下回り、株価指数の上げ幅は先物主導で急速に縮小。マイナス圏に沈む場面もあった。
7月の同統計は大幅に悪化し、相場調整の引き金となっただけに、景況感の先行きを占う上で注目度は高かったが、市場予想を大幅に下回った。8月の機械受注統計は前月比6.7%増。ブルームバーグ・ニュースが民間調査機関29 社を対象に調査したところによると、前年同月比11.2%増が予想されていた。
中小型株は軟調、ジャスダック指数は年初来安値
大型株に買いが入る一方で、中小型株は軟調だった。TOPIXニューインデックスシリーズの動きを見ると、スモール指数、ミッド400指数のみがマイナス圏に沈んだままだ。
新興3市場では、ジャスダック指数、東証マザーズ指数、大証ヘラクレス指数はいずれも安値圏で終了。業績の下方修正が相次いだ。ジャスダック指数が前週末2.2%安の85.51、東証マザーズ指数は同4.03%安の1125.60、大証ヘラクレス指数は同3.42%安の1828.68。ジャスダック指数は04年12月28日以来の安値となった。
新興3市場の個別の動きをみると、ジャスダック市場では、UBS証券が目標株価を引き下げたSBIイー・トレード証券が52週安値を更新。業績下方修正を発表した薬王堂、ウエストホールディングスが売られた。半面、市場予想を上回る決算を発表したマニーが6営業日ぶりに大幅反発した。
東証マザーズ市場では、夏休みの宿泊予約数などが伸び悩み、今期業績予想を下方修正した一休が連日の上場来安値。下方修正を発表したブイ・テクノロジー、TCBテクノロジーズも安い。半面、フィンテックグローバル、インターネットイニシアティブなどが高い。
東証マザーズ市場にこの日に新規上場した日本M&Aセンターが、公開価格(115万円)比28%高の147万円で初値を付けた。ただ、終値は公募比ストップ安水準の127万円で終了。
大証ヘラクレス市場では、業績を下方修正したデジタルアーツ、ドーンが安い。半面、プレステージ・インターナショナル、シンワアートなどが高い。
9月街角景気:現状判断は51.0、2カ月連続改善-先行きも改善(2)
10月10日(ブルームバーグ):内閣府が10日発表した9月の景気ウォッチャー調査によると、3カ月前と比べた景気の現状判断DIは51.0と前月の50.2 から0.8ポイント上昇した。2カ月連続の改善で、横ばいを示す50を2カ月連続で上回った。
2-3カ月先の景気判断DIは、前月から1.3ポイント上昇し52.8に改善、2カ月連続で50を上回った。景気ウォッチャーによる判断では、景気は回復しているという。
調査は、北海道、東北、北関東、南関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の11地域で、小売り、飲食、サービス、住宅など家計動向や、企業動向、雇用など経済活動項目の動向について、景気ウォッチャー2050人を対象に実施。景気ウォッチャーは、タクシー運転手など景気動向を反映しやすい仕事に携わる人から選定した。今回の調査は9月25日から30日に実施、有効回答率は86.5%。
現状判断では、企業動向関連DIが前月から2.1ポイント上昇し51.2と、改善したほか、雇用関連DIも前月から1.4ポイント上昇し61.2となった。家計動向関連DIも前月から0.1ポイント上昇して49.2となった。家計動向関連について内閣府では、コート、ブーツなど季節を先取りした商品の動きは良かったものの、全体をけん引するには至らず、おおむね横ばいで推移したとしている。企業関連については、原油、原材料の価格高の影響が続いているものの、製造業の受注持ち直しで改善したという。
サドラ・マリン、アザデガン油田開発に参加準備-イラン・デーリー
10月10日(ブルームバーグ):10日付のイラン紙、イラン・デーリーは、イラン企業のサドラ・マリン・インダストリアルがアザデガン油田の開発に参加する準備をしていると報じた。同油田については、国際石油開発の保有権益が引き下げられる予定。
国際石油開発は6日、開発を進めているイラン南西部のアザデガン油田の保有権益について、従来の75%から10%に引き下げる方向で調整することで合意したと発表した。
アジアの富裕層:資産の24%を株式に投資、代替投資は23%-調査
10月10日(ブルームバーグ):アジアの富裕層は2005年に、7兆6000億ドル(約905兆円)の資産の24%を株式に投資していたことが、10日に公表された情報処理サービスの仏キャップジェミニと米証券のメリルリンチ調査から分かった。調査によると、プライベートエクイティ(未公開株)やヘッジファンド、骨董品などの代替投資商品への資金配分は23%だった。
調査によると、シンガポールの5万5000人の百万長者(投資資産100万ドル超)は資産の37%を代替投資商品に投資し、同比率は調査対象の8市場のなかで最大だった。インドネシアと台湾の同比率はそれぞれ34%と32%だった。また、シンガポールでは成人人口の1.48%が100万ドル超の投資資産を持ち、富裕層の比率も地域で最高だった。キャップジェミニとメリルはアジアの富裕層の資産配分について初めて年間調査をまとめた。
両社の6月付リポートによると、アジア太平洋地域の富裕層の数は7.3%増の240万人に増えた。資産総額は年率6.7%増え10年には10兆6000億ドルに達する見通し。増加率は世界の6%を上回るとみられる。
10日公表されたリポートによると、百万長者1人当たりの平均資産は香港が530万ドルで域内最高。中国が500万ドル、シンガポールが470万ドルだった。
【個別銘柄】信越化、JT、KDDI、ダイエー、機械株、カプコン
10月10日(ブルームバーグ):株式市場の主な銘柄の動向は以下の通り。
信越化学工業(4063):1.7%高の7920円で終了。一時は8000円まで買い進まれ、株式分割等考慮後の上場来高値を付けた。半導体需要の拡大を受けて世界シェア1位の半導体材料が伸びており、今期業績が会社計画を大きく上回るとの期待が高まっている。日興シティグループ証券が目標株価を8700円から9300円に引き上げたことで、株価上昇に弾みが付いた。
JT(2914):一時2.3%高の49万8000円まで買われ、株式分割等考慮後の上場来高値を更新した。時価総額が大きいうえ、日本を代表する銘柄として知名度も高いため、投資資金が流入しているとの見方が継続している。経済成長を背景とした中東やアジア地区でのたばこ事業拡大が見込まれており、JTの国際展開力にも注目が集まっているもようだ。
KDDI(9433):1.8%高の79万8000円と年初来高値を更新。一時は 80万8000円まで上げ、2000年9月20日以来、約6年ぶりの高値水準に。足元で携帯電話の販売が好調なことを背景に、今月24日の番号継続制度(MNP)導入後も他社からの顧客の取り込みが有利に進むとの期待が広がっている。
ダイエー(8263):6.3%安の2075円。産業再生機構が同社の経営再建に乗り出した2004年秋以降、食品分野に経営資源を集中する戦略を採ってきたが、丸紅出身の西見徹社長は6日の就任会見で、衣料品や雑貨などの強化を図る意向を示唆。戦略転換に伴う運営上のリスクなどが警戒視された。
機械株:TOPIX機械株指数は午後2時以降に下げ幅を拡大、結局 0.7%安の1299.26ポイントで終了した。午後2時に公表された機械受注は前月比6.7%増となり、事前のブルームバーグ予想(11.2%増)を下回った。コマツ(6301)は1.4%安の2095円、SMC(6273)が2.3%安の1万5850円。
カプコン(9697):一時5%高の1820円と大幅続伸し、年初来高値を更新した。「Xbox360」など次世代据え置き型ゲーム機向けのソフトで優位性を発揮しているほか、有力ソフトの海外市場におけるアピール力が高まっており、年末に向けて発売される新商品の拡販などに期待感が広がっている。クレディ・スイス(CS)証券では前週末6日、強気の業績見通しを背景にカプコンの目標株価引き上げを行った。終値は4.8%高の1818円。
国際石油開発帝石ホールディングス(1605):1.5%高の90万1000円。イランのアザデガン油田の開発交渉で、国際石油開発とイランが日本の開発権の大幅引き下げを大筋合意したことで、先行き不透明感が後退したとの見方が出ている。前日の海外市場で原油先物相場が上昇したことも追い風となった。
東芝プラントシステム(1983):午後1時に業績予想を上方修正、買い注文を集めた。終値は8.5%高の590円。ビルなどの電気工事の好調や販売管理費の削減が寄与するとして、07年3月通期の連結経常利益予想を42億円から 56億円(前期比14%増)に引き上げたほか、配当予想を10円から12円に増額した。
パルコ(8251):5.8%高の1579円。一時は7.8%高まで買い進まれ、9月13日(10.2%)以来、約1カ月ぶりの上昇率を記録した。景況感の回復に伴って、婦人服の販売が伸びていることなどが好感された。06年8月中間期の連結純利益は前年同期比16%増の26億円となり、事前の会社予想を4億7200 万円(23%)上回った。
マニー(7730):7.7%高の7880円。一時7930円を付け、7月下旬以来の株価水準に回復した。中国、ロシア、中南米などの経済発展に伴って医療費が継続的に拡大する地域が広がりをみせている。同社製品の需要拡大と業績伸長が期待できるにもかかわらず、株価は割安に放置されてきたため今後の株価上昇を見越した買いが入った。
東建コーポレーション(1766):5.7%高の9690円。一時は9730円を付け、株式分割等考慮後の上場来高値を更新した。主力の建設事業で受注残高が積み上がっていることに加え、全国的な知名度向上により新規受注高も伸びているため、今後も安定的に業績を拡大できるとの見方が広がった。東海東京調査センターの加藤守シニアアナリストは「ファンダメンタルズ(企業業績の基礎的諸条件)は良好で、株価1万円も十分達成可能」とみていた。
富士エレクトロニクス(9883):2.2%高の1844円。パソコンや携帯電話の市場拡大で同社が取り扱う半導体の需要が伸びており、中間期の連結経常利益は過去最高を更新した。通期予想は据え置かれたが、上方修正の可能性は高いとの見方が強く、株価は好材料を先取りする形で上昇。
日産自動車(7201):終値は0.2%高の1373円。前週末終値の1370円を挟んで上下1.8%以内での小幅な変動が続いた。競合のトヨタ自動車が3.6%高したことなどと比べると戻りが鈍かった。国内乗用車販売の低迷に加え、米国でも販売シェアが低下し、11カ月連続で販売台数が前年同月比マイナスとなっている。業績の下振れを見込んだ向きから売り注文が出ていたもよう。
ジャックス(8584):18%安の915円とストップ安で終了。180万株の売り注文を残した。カード発行費用や貸倒関連費用がかさむとして、今期業績予想を下方修正したことで失望売りが膨らんだ。野村証券の飯村慎一アナリストは、「ジャックスは利息制限法上限金利以下での貸し出しを行っており、過払い金返還請求に伴う利息返還リスクは乏しいことから、貸倒費用の増加が想定外だった」とみていた。
吉野家ディー・アンド・シー(9861):2.1%安の18万4000円と反落。米国産牛肉の調達量が想定より少なかったことなどを理由に07年3月期の連結業績予想を6日に下方修正したため、今後の業績が不透明とみられた。07年2月期の連結純利益は18億円にとどまる見通し。
バンダイビジュアル(4325):2.3%安の38万8000円。「ガンダム」シリーズなどのDVD(デジタル多用途ディスク)ビデオの販売が好調で中間期業績は計画を上回ったが、下期は逆に当初予想を下方修正する形となったため、業績拡大ペースが期待より鈍いことへの失望感が広がった。
一休(2450):15%安の13万7000円で終了、東証マザーズ市場の下落率ランキングで2位に付けた。一時は13万5000円を付け、連日の上場来安値。夏休みの宿泊予約数などが伸び悩み、今期増益率が大きく鈍化する見通しとなったため、成長路線は小休止するとの認識が広がった。
サマンサタバサジャパンリミテッド(7829):0.4%安の46万7000円。朝方は3.6%高まで買い進まれる場面もあったが「株価が一段高となるには、米国進出の成否やネットモールの成果を見極める必要がある」(カブドットコム証券の山田勉マーケットアナリスト)との声も出て、上昇力の鈍さが際立った。業績は好調で、新規出店効果などから8月中間期の連結経常利益は11億 9500万円になったもよう。前年同期の単独実績比では24%の増加。
日本M&Aセンター(2127):10日に東証マザーズ市場へ新規上場。初値は147万円で公開価格(115万円)を28%上回ったが、終値は初値比ストップ安水準の127万円に。出来高は8049株に達し、公開株数の2500株を大きく上回った。同社は1991年4月設立、中堅・中小企業のM&A(合併と買収)を仲介する。全国約200の地銀や信用金庫と提携し、案件を発掘するのが特徴。