7/12 ブルームバーグ
【経済コラム】日本はボルカーよりグリーンスパンが必要-W・ペセック
7月12日(ブルームバーグ):与謝野馨経済財政政策・金融担当相によれば、ゼロ金利は「異常」な政策なのだそうだ。日本経済について考えるとき、この点が忘れられがちだが、日本では中断はあるものの1990年代末以来、異常な政策が続いてきたのだ。
経済大国、それも主要7カ国(G7)の1つである国が、コストゼロの資金を提供するべきではない。今や日本経済は再び成長軌道に乗り、銀行は安定した。物事を正常に戻すべきときであることは明らかだ。そういうわけで、日本銀行は早ければ14日に、2000年8月以来で初の利上げを実施する公算だ。
利上げは日本の将来に影を落とすどころか、日本経済のサイクルが一巡し、危機とデフレを経て成長軌道に戻ったことを示すものだ。0.25ポイントの利上げは、世界に向けて日本株式会社の戦線復帰を宣言することになろう。
しかし、投資家は先走るべきではない。日銀当局者も同じだ。確かに日本経済は、投資家が15年間、期待し続けてきた回復をおう歌しているように見える。大手銀行は健全性を回復し、企業のバランスシートは引き締まり、賃金も上昇している。とはいえ、プラス側への日本の復帰はまだ道半ばであり、日銀はこれを阻んではならない。
例えば、デフレはまだ完全に克服されてはいない。家計部門の消費もエコノミストが期待するほどに活発ではない。事実、6月の消費者信頼感は事前予想より大幅に低下した。
成長の原動力となる複数の部品がやっと調子を合わせて回り始めたところで、景気過熱を心配するのはばかげている。日銀当局者がわずかでもタカ派的になる必要があるような物価上昇は、日本では起こっていない。にもかかわらず、当局者らは物価が突然に上昇することを恐れているようだ。
バブル恐怖症
現在の状態は、1980年代の逆だ。当時は日本当局者の辞書に「バブル」という言葉はほとんどなかった。それに対し、今日の日銀は資産バブルに対する恐怖症に取りつかれている。ある意味で、日本に今必要なのはボルカー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長ではなく、グリーンスパン前議長なのだ。1979 -1987年のボルカー議長の仕事はインフレを抑え込むことであり、1987-2005 年のグリーンスパン議長の仕事は、経済が成長できるように手綱を緩めることだった。
つまり、日銀は少なくとも若干の利上げをするべきだが、それはインフレのリスクがあるからではない。コストゼロの資金への中毒を断つ必要があるからだ。政府当局者はまだ、借金中毒が治っていない。日本の政府債務は対国内総生産(GDP)比で151%。債務圧縮についての真剣な議論はいまだに行われていない。借り入れを減らす気がないならば、せめてゼロ金利だけでもやめるべきだ。
日銀が利上げを開始しても、行き過ぎには歯止めがある。その1つは、福井俊彦日銀総裁の村上ファンドへの出資問題だ。同総裁の辞任を求める声が高まるなかで小泉純一郎首相は総裁を強く擁護し、日銀総裁は政府に借りができた。もう1つの歯止めは「常識」だ。デフレと同様に、インフレが根付くには長い時間がかかる。日銀はより強くブレーキを踏む前にまず、少なくとも数四半期は消費者物価指数(CPI)の上昇を容認すべきだろう。
冷静がベスト
冷静さこそが、世界の市場にとってプラスになる。日本が前回、一定期間続けて金利を引き上げたのは10年前だ。日銀の利上げ決定により他の諸国の債券利回りにも上昇圧力がかかる可能性がある。日本の復活は世界の債券市場にとって大きな問題になる。
日銀が責任ある行動を取れば、日本の金利上昇が世界に壊滅的打撃を与えることはない。日銀はまだ、数カ月後に撤回する羽目になった2000年の利上げの苦い記憶を噛みしめている。投資家は、日銀が今度こそ、成長を阻害するのではなく後押ししてくれることを切に願うばかりだ。
早ければ14日にもゼロ金利が解除されることは、今や既定の路線だが、日銀が誤りを繰り返さないという保証は、まだない。(ウィリアム・ペセック・ジュニア)
(ウィリアム・ペセック・ジュニア氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:More Greenspan, Less Volcker, Needed in Japan: William Pesek(抜粋) {NXTW NSN J29PSE07NBB5 <GO>}
中国外務省:対北朝鮮金融制裁で米国に「譲歩」求める-劉報道官
7月12日(ブルームバーグ):中国外務省の劉建超報道官は12日、北朝鮮がマネーロンダリング(資金洗浄)に関与しているとして米政府が発動している金融制裁について、米国側が「譲歩」を検討するよう呼び掛けた。
劉報道官は北京での記者会見で、「米国が制裁措置について譲歩することで、6カ国協議再開に向けた具体策を進めることを期待する。われわれはこの行き詰まりが永遠に続くのを目にしたくはない」と述べた。
米財務省は昨年10月、北朝鮮企業8社が大量破壊兵器拡散に関与していたとして、これら企業の米国内の資産を凍結。北朝鮮は、米国がこうした制裁措置を解除するまで、6カ国協議には復帰しないと表明している。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議には、米朝のほか、日本、中国、韓国、ロシアが参加している。
北朝鮮が5日に強行したミサイル発射実験に対応するため、中国を訪れているヒル米国務次官補は12日、中国の李肇星外相と会談。ヒル次官補は、李外相と「非常に良好な協議ができた。中国が懸命に努力しており、6カ国協議再開に向けとても真剣に責任を果たそうとしていることは、非常に明確だ」と語ったものの、北朝鮮への制裁措置で米政府は譲歩する意向はないと強調した。
ヒル次官補は、「残念ながら、北朝鮮が中国や韓国、日本などのほかの参加国と同様に6カ国協議を重視している兆候はない。率直に言って、非常に残念だ」と述べた。
ロシアのインタファクス通信は12日、ロシアのラブロフ外相がモスクワで、北朝鮮に対する制裁決議案に反対すると述べたと報じた。
5月の米貿易収支赤字:638億ドルに増加、予想より小幅-輸出が好調(2)
7月12日(ブルームバーグ):米商務省が12日に発表した5月の貿易収支統計によると、財とサービスを合わせた貿易収支(国際収支ベース、季節調整済み)は638億ドルの赤字となった。4月の赤字幅は633億ドル(速報634 億ドル)に修正された。ブルームバーグ・ニュースがまとめた5月貿易収支の予想中央値は649億ドルの赤字だった。輸出は2005年4月以来最大の増加となった。輸入も原油の輸入増を反映して増加した。対中貿易赤字も拡大した。
エコノミストは、欧州やアジアの景気拡大ペースの上昇で米国からの輸出が拡大し、同時に、米消費者支出の鈍化で輸入品購入が抑制されていることから米貿易赤字が横ばい状態になりつつある可能性があると指摘した。さらに、昨年はドルが4%下落したことからも、米国製品が海外で割安になっている。
野村セキュリティーズ・インターナショナルのチーフエコノミスト、デービッド・レスラー氏は、「これは海外からのしっかりした需要がみられていることを確認するものだ」とし、「今後も輸出の一層しっかりした拡大がみられよう。というのも、われわれの貿易相手国の経済が改善しているからだ」と指摘した。
5月には原油価格は一層上昇し、米企業が原油輸入を増やしたことから、5月の全体的な貿易赤字拡大につながった。原油や他の財・サービスの価格上昇を除くと米赤字は縮小したことになる。
5月の価格変化調整後の赤字額は569億ドルと、昨年8月以来の小額に縮小した。
輸出・輸入ともに拡大
5月の輸入は前月比1.8%増の1825億ドル。エネルギーや原材料などの輸入増がけん引した。一方、輸出は同2.4%増の1187億ドル。5月の米企業の資本財輸出は8億300万ドル増の341億ドルとなった。商業用航空機と通信機器の増加が寄与した。
5月の貿易収支の国・地域別内訳(サービスを除く通関ベース、季節調整前)を見ると、中国に対する赤字が177億ドルと、前月の170億ドルから拡大した。5月の対中輸出は4.6%増の45億ドル。一方、中国からの輸入は4.1%増の223億ドル。
5月の対日赤字は71億ドルと、前月の78億ドルから縮小。石油輸出国機構(OPEC)に対する赤字は102億ドルと、前月の81億ドルから拡大した。
最大の貿易相手国であるカナダに対する赤字は58億ドル(前月62億ドル)。対メキシコは55億ドル(同49億ドル)。
原題:U.S. Trade Deficit Widened to $63.8 Billion in May (Update2) (抜粋) {NXTW NSN J2AKB93TCF0H <GO>}
Eトレード証、楽天証、SBI証:夜間取引市場開設を共同で準備(2)
7月12日(ブルームバーグ):インターネット証券大手のSBIイー・トレード証券と楽天証券、SBI証券の3社は12日、共同で夜間取引市場の開設準備を行うことで合意したと発表した。今後3社は共同準備チームを発足させ、早期のサービス開始を目指す。
発表によると、3社は私設取引システム(PTS)のシステム提供会社の共同設立のほか、それぞれがPTS認可取得に向けた準備などを検討する。また、オリックス証券も共同準備チームに参加する方向で検討しているという。
Eトレード証によると、3社間で検討に入ったのは今年初め。「個人投資家に活発な取引を提供するには提携した方がよりよい環境を提供できる」(社長室の鈴木建主任)と判断した。具体的なサービスの内容は今後詰めていくが、早ければ2007年初頭のサービス開始を目指すという。
楽天証券によると、6月末時点のEトレード証と楽天証を合計した口座数のシェアは約49%と個人取引で半分を占める。
夜間取引市場については、カブドットコム証券が12日午前に競売買(オークション)によるPTSの認可を金融庁から取得したと発表している。8月にも東京証券取引所と同等の売買ができる夜間取引市場を開設するという。
買収ファンド競争は激化へ、日本への資金流入が急増-コラーの水野氏
7月12日(ブルームバーグ):日本企業を標的とした買収ファンドが相次いで資金調達を実施しているため、今後1-2年の間は、日本のプライベート・エクイティ(未公開株、PE)市場で需給バランスが崩れる懸念がある。経済回復への期待が高まる日本には、大量の資金が流入しており、ファンド間の案件獲得競争が予想される。買収価額がつり上がれば、高い利回りを達成してきた買収ファンドの収益が損なわれる可能性もある。
英PEファンド投資大手のコラー・キャピタルによると、日本向けの買収ファンド設定額は2006年、「30億ドルに達する」(水野弘道パートナー)との見通しで、05年の推定17億ドルから急増する。これに加えて、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、ベイン・キャピタル、パーミラ・アドバイザーズといった、欧米の大手投資会社のグローバル・ファンドからも資金が日本に向かう可能性が高く、投資銀行による自己資本投資も含めると、約60億ドルの資金増加が見込まれるという。
買収ファンド運営で米最大手のカーライル・グループは7日、日本向け買収ファンドとして最大級となる総額2156億円を調達したと発表した。投資会社ロングリーチも4月に825億円を調達している。このほか、アドバンテッジ・パートナーズなどの国内大手投資会社も今後、資金調達を実施する可能性がある。
国内の企業買収市場が拡大しているとはいえ、急激な資金増加に見合う案件が国内にあるのかどうかが、関係者の間では最大の懸念事項になっている。「資金供給が多いため、今後1-2年はバランスが崩れる可能性がある」(水野氏)。
大量の資金が投資ファンドに流入している背景には、欧米で投資ファンドが株式市場を上回る投資実績を達成してきたこともある。過去10年間の米PEファンド利回りは、手数料控除後で年率12.4%に達し、同期間のS&P500種株価指数の年率7.7%を大幅に上回った(ナショナル・ベンチャー・キャピタルおよびトムソン・ベンチャー・エコノミックス)。
とはいえ、欧米に比べて市場規模がまだ小さい日本の企業買収には、中長期的にみると、大きな成長余地がある。「3-5年後には確実に買収案件が増加するだろう」(水野氏)。特に、経営陣による企業買収(MBO)や株式非公開化でのPEファンド活用が増加するとみている。