6/26 ブルームバーグ
【経済コラム】日産自動車の「ゴーン神話」は本物か?―D・レビン
6月25日(ブルームバーグ):日産自動車のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は、救いようのない死に体企業を再建し、ビル・ゲイツ氏やウォーレン・バフェット氏のように伝説的人物としての地位を築いた。
だが残念なことに、日産自動車の業績は再び勢いが衰えている。ゴーン神話は本物だったのか、それとも誇大広告だったのかと疑う人も出てきている。日本の人気漫画の中でも経営手腕が詳述されたゴーン氏は先ごろ、米テネシー州ナッシュビルに1億ドル(約116億円)を投じて建設する米国本社ビルの起工式に出席したが、こうした心配はいささかも見受けられなかった。
ロサンゼルスからの米本社移転計画を受けて同社営業トップを含む58%のスタッフが退社する事態を招いたことに関する記者団の質問に、ゴーンCEOは「2、3年先を見据える必要がある。その時に今回の決定が正しかったかどうかが分かるだろう」と語った。
米国の思想家デービッド・ヘンリー・ソローと同様、私も新本社ビルにはいつも疑問を抱く。大建造物が皮肉にも、その企業が脱輪したことを知らせる警鐘となり得るからだ。ただ今回は、CEOが自分の記念碑を建てたりはしていないようだ。
業績悪化
確かに今は、日産の現状を記念するものを残すような状況ではない。日産の米国販売は5月までに3%減少し、市場シェアも低下した。同社はこのほど、日本国内の販売不振に対応するため、国内組み立て工場2カ所での減産を発表した。ゴーンCEOはナッシュビルで、今年度上期の業績は前年同期を下回る見通しを示した。新モデルの発売が少ないためだという。
ただ一部には、フランスの経済紙記者から「コストカッター」という異名をもらい、日産再建の立役者として称賛されたゴーンCEOは、健康体の企業を経営する適切な技量は持ち合わせないと指摘する声もある。製品デザインコンサルティング会社、米カー・ラブのエリック・ノーブル社長は、「ゴーン氏の決断はうまくいかなかったケースも多い。例えば、ミニバンの『クエスト』がそうだ」と語る。クエストの米国販売は5月までに33%減少した。
理想的には、まとめて数モデルを発表するよりも、数カ月ごとに規則的に新モデルを発表すべきであり、そうすることで、個々の新モデルに対する消費者の関心をもっと高めることが可能だ。複数の新モデルの発表が集中してしまうのは、自動車部品メーカーと最終組み立て工場、立案者、技術者の協力不足も一因だ。
米国の新本社についてゴーンCEOは、幹部と設計者をテネシー州スマーナ工場とミシシッピ州キャントン工場に近づけることで、車両開発に同時性を持たせ、時間と資金を節約する狙いがあると説明する。
説明責任
ゴーン氏の処方せんは適切なのだろうか。日産が破たん寸前状態だった 1999年に日本の終身雇用制に異議を唱え、慣例を無視した経営手法を見せつけたゴーン氏は就任当初、日産が1年目で黒字転換できなければ経営陣とともに辞任すると約束した。
2001年度以降黒字化した日産は今、08年4月をめどとする新3カ年事業計画「日産バリューアップ」を推進中。この計画の下、日産は世界販売420 万台と営業利益率で業界トップクラスの実現を目指している。
ゴーン氏の評判とともに、1999年から1月までに日産の株価はほぼ3倍に上昇した。だが5月以降は、日産の業績不振を反映して株価は約20%下落している。ゴーン氏は数字で自らを判断するよう懐疑論者に求めている。「バリューアップ」が失敗すれば、ゴーン氏は身を引くだろうと思う。
そうすればゴーン氏は、一定水準の説明責任を受け入れたことになり、ライバルのゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターのCEOとは一線を画すことができる。GMとフォードのCEOは、利益目標を達成できなかったのに、辞意を表明していないし、テネシー州メディア界の最新スター、ゴーン氏と交代したいと考えているのかもしれない。少なくともゴーン氏は、壊れたものを再生できることは証明している。(ドロン・レビン)
(ドロン・レビン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Nissan's Carlos Ghosn Confronts Real Versus Hype: Doron Levin(抜粋) {NXTW NSN J18UL007NBB5<GO>}
日本株(終了)小反発、世界的な業界再編期待で鉄鋼高い-閑散相場
6月26日(ブルームバーグ):週明けの東京株式相場は小幅反発。日経平均株価は下落して始まったものの、午後の取引開始直後から先物主導で上昇に転じた。大手企業間の経営統合をきっかけに、世界的な業界再編期待の高まりを受けて新日本製鐵、住友金属工業などの鉄鋼株が上昇。三菱地所などの不動産株、三菱UFJフィナンシャル・グループなどの銀行株も買われ、時価総額の大きい内需関連株に上げが目立った。
銀行株に関しては、モルガン・スタンレー証券が三菱UFJや住友信託銀行に強気の投資判断を示すという材料もあった。ミレアホールディングスなど保険株、三井物産など大手商社株も高い。
ただ今週は、米国の今後の金融政策を占う上で重要視されるFOMC(連邦公開市場委員会)の開催を控えており、積極的な売買は見送られる展開。市場参加者も減少し、相場はいまひとつ盛り上がりに欠けた。東証1部の売買高は概算で15億89万株と低調で、東証1部の騰落状況は値上がりが754、値下がりが825ときっ抗。東証業種別33指数は19業種が上昇、下落は14だった。
日経平均株価は前週末比32円16銭(0.2%)高の1万5156円20銭。TOPIXは同3.40ポイント(0.2%)高の1548.97。日経平均は1万5000円を一時割り込む場面もあった。
いちよし投資顧問の秋野充成運用部長は「どんどん買っているという雰囲気ではない。FOMC(連邦公開市場委員会)控え、売り買いが後退している中、若干の買い戻しなどでプラス圏に浮上した。反転の兆しとは思っていない」と指摘した。 その上で秋野氏は、「国内のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は変らないため、株価はだいぶ調整したことを受け、内需の銀行や不動産が買われている」と話している。
閑散相場
この日の相場も閑散だった。今週28、29日にFOMCの開催が予定されており、米金融政策の先行きを見極めようとの動きが強まった。投資家は売買を手控え、東証1部の売買高は15億株、TOPIXの構成銘柄の売買代金は1兆8814億円と、1日を通して活況と言われる「20億株、3兆円」にはほど遠い水準となった。
市場エネルギーが低調となると、相場は先物の影響を受けやすい。午前はマイナス圏で推移していた日経平均は、午後の取引時間中にプラス圏に切り返した。午前の日経平均先物9月物の売買高は2万7670枚と低水準だったが、後場は急増して、8万1312枚となった。
外国人は小幅な売り越し姿勢
売買が細る背景には、国内勢に加え、外国人の売り越しトレンドに変化が見られないこともある。朝方の外資系証券経由の売買動向は340万株の小幅な売り越しと観測され、売り越しは6営業日連続だった。
最近欧州の投資家を訪問した日興シティグループ証券・株式調査部のパトリック・モア氏は「欧州の投資家は底値を待っており、現在の市場をめったにない買いの好機とみる投資家もいる。しかし、おおむね様子をうかがっており、日本市場に戻るためには、米国の展開がより明確になる必要があるとみているようだ」と指摘する。
鉄鋼株が高い、世界的な業界再編期待
相場全体に勢いが欠ける中、資金は好材料の出た業種や銘柄に向かいやすかった。この日の相場で注目されたのが鉄鋼株。東証1部の売買高上位には、新日本製鉄や住友金属工業、神戸製鋼所など鉄鋼株が並び、株価は総じて上昇した。製鉄大手、ルクセンブルクのアルセロールがミタルの買収案を受託したことが伝わり、世界的な業界再編の期待が高まった。 製鉄大手、ルクセンブルクのアルセロールの取締役会は25日、同業最大手のオランダのミタル・スチールによる再修正後の買収案を全会一致で支持。買収価格は、約259億ユーロ(約3兆7750億円)とみられる。
富国生命保険の櫻井祐記財務企画部長は「日本の鉄鋼メーカーや鉄鋼関連産業はいま、かなり緊張感を高めているのではないか」と推察。その上で櫻井氏は、「高付加価値の高い製品を造れる日本の鉄鋼メーカーを傘下に収めたいと願う製鉄大手も多いはず。日本の鉄鋼メーカーが買収防衛策をより厳しくしていく可能性が高い」と受け止めていた。
日東網が値上がり1位、漁価回復で業績好調
個別で値上がりが目立ったのが漁業関連製品を扱う日東製網。株価は一時 33%以上となり、東証1部1位となった。同社が23日に発表した07年4月期の業績計画によると、連結売上高は前期比0.7%減の140億円と微減ながら、経常利益は2.4倍の4億円、純損益は2億5000万円の黒字に転換する。原材料価格の高騰や金利上昇懸念などが厳しいが、魚価の回復傾向など明るい兆しがみえてきた。
消費者金融株の下げきつい、グレーゾーン金利撤廃の報道
半面、悪材料の出た業種や銘柄には売り圧力が強まった。グレーゾーン(灰色)金利撤廃の報道を受け、オリックスやアコムなど消費者金融株の下げが目立った。午前の取引で下げが目立ったのが消費者金融株だ。
24日付の朝日新聞朝刊は、自民党金融調査会の幹部会が貸金業の上限金利について、現行の利息制限法の上限(年15-20%)に原則一本化する方針を固めたと報じた。出資法の上限金利(29.2%)を段階的に引き下げ、利息制限法の上限金利との間にあるグレーゾーン(灰色)金利を撤廃する。グレーゾーン(灰色)金利の撤廃による業績低下懸念が広がり、その他金融株はTOPIXのマイナスリターン・ランキング1位となった。
しまむらが大幅安、中部電も軟調
業績が市場の期待を下回ったしまむらなど小売株も安い。株価は一時7%下落し、2000年10月12日以来の下落率を記録した。ゴールドマンサックス証券は弱気の投資判断を示した。23日公表の06年3―5月期(第1四半期)連結決算によると、純利益は前年同期比8%増の39億5000万円だった。業績の伸びが投資家の期待を下回ったもようだ。
ソフトバンクが割安な光回線を開始するとの報道で、値下げ競争の激化に警戒感が先行しているNTTなど、情報・通信株も小安い。15日に起こった浜岡原発の自動停止で、タービンの羽根脱落の補修に時間がかかるとの懸念が先行した中部電力など、電気・ガス株も下落。凸版印刷などのその他製品株も売られた。
新興市場な軟調、ジャスダック売買代金は今年最低
国内の新興市場は軟調な展開となった。東証マザーズ指数、大証ヘラクレス指数、ジャスダック指数はいずれも下落した。TOPIXニューインデックスシリーズの動きを見ても、スモール指数のみがマイナス圏に沈んでおり、この日は相対的に時価総額の大きい銘柄が選好されたといえる。ジャスダックの売買代金は507億円と連日で今年最低。一般的に活況と言われるのは1000億円。
東証マザーズ市場では、ACCESS、タカラバイオ、サイバーエージェント、日本ベリサインなどが下落。半面、ディー・エヌ・エー、アルデプロ、ザッパラス、ベストブライダルなどが上昇した。
大証ヘラクレス市場では、USEN、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、ゼンテック・テクノロジー・ジャパンなどが安い。半面、デジタルアーツ、ダヴィンチ・アドバイザーズ、大阪証券取引所などが高い。
ジャスダック市場では、ジュピターテレコム、日本エイム、スパークス・アセット・マネジメント投信、イー・トレード証券などが下落。半面、リクルートコスモス、サハダイヤモンド、アルゼ、大塚家具などが上昇した。
記事についての記者への問い合わせ先:
東京 常冨 浩太郎 Kotaro Tsunetomi
ktsunetomi@bloomberg.net
5月米新築住宅販売:4.6%増の123.4万戸、今年最高-前月は下方修正(2
6月26日(ブルームバーグ):米商務省が26日に発表した5月の米新築一戸建て住宅販売(季節調整済み年率)は、前月比4.6%増の年率123万4000戸と、今年に入ってからの最高となった。ブルームバーグ・ニュースのエコノミスト調査では、114万5000戸(予想中央値)が見込まれていた。4月の新築住宅販売は118万戸と、速報の119万8000戸から下方修正された。
5月末の住宅在庫は55万6000戸と、前月の56万戸から減少した。住宅建築業者は、住宅ローン金利上昇による買い控えをカントリークラブの無料会員券提供といった特典でカバーし、販売を伸ばした。
5月の新築住宅価格(中央値)は23万5300ドルと、前年同月比3.1%上昇した。新築住宅の在庫比率は5月に5.5カ月分(前月5.8カ月分)だった。
原題:New Home Sales in U.S. Rose 4.6% to 1.234 Million Pace in May (抜粋) {NXTW NSN J1H07J0D9L35 <GO>}