6/22 ブルームバーグⅡ
日本株(終了)日経平均が15000円回復、米景気安心-上昇銘柄は最高
6月22日(ブルームバーグ):東京株式相場は急反発。日経平均株価はの上げ幅は500円に迫り、終値ベースで6月7日以来、1万5000円台を回復した。上昇率、上げ幅とも1月27日以来の大きさ。前日の米国市場で、企業業績の好調確認を通じて景気の先行きに楽観的なムードが広がった影響を受けた。ファナックやアドバンテスト、東京エレクトロン、京セラなど外需依存度の高いハイテク株中心に幅広く上昇。トヨタ自動車など自動車株も買われ、相対的に輸出株の上げが目立った。
三菱UFJフィナンシャル・グループなど銀行株、野村ホールディングスなど証券株の上げも目立ち、東証業種別33指数はすべて上昇。東証1部の騰落状況をみると、値上がりは1607銘柄と過去最高水準に達した。値下がりはわずか60銘柄にとどまる。
もっとも、投資家の様子見姿勢は依然として強く、売買は薄かった。東証1部の売買高は概算で17億602万株に過ぎず、先物主導で相場が動きやすい状況にあった。
日経平均株価は、前日比491円43銭(3.4%)高の1万5135円69銭。TOPIXは同43.61ポイント(2.9%)高の1549.12。
先物が支配、買い手の迫力はいま一歩
日本アジア証券の黒川達夫投資情報部長は「米国株高に刺激され買い先行で始まり、先物主導で一段高の展開となった。ただ、先物に支配された状態で、あす以降の相場の方向感は出ていない。当面の底は6月14日の安値1万4045 円で付けたが、外国人投資家が買い越しにならない限り、持続的な上昇は難しいだろう。買いの手がいま一歩足りない」と話していた。
米景気の鈍化懸念はひとまず後退
米景気の腰折れリスクがひとまず後退した。前日の米国株式市場では、証券大手のモルガン・スタンレーなど、市場予想を上回る企業決算が相次ぎ、利上げ局面でも企業業績は順調に拡大するとの見方が広がった。ダウ工業株30種平均は100ドル以上の上昇となり、終値ベースで3日ぶりに1万1000ドル台を回復。中でも、ハイテク株の指数寄与度の高いナスダック総合株価指数が1.6%高と相対的に堅調だった。
投資家が警戒していた米国の金利上昇による企業業績鈍化の懸念がひとまず和らぎ、東京市場でも買い安心感が先行した。北米依存度の高い業種を中心に幅広い銘柄に買い戻しの動きが見られ、TOPIXの上昇寄与度上位には、電機と自動車株が並んだ。
ちばぎんアセットマネジメントの安藤富士男専務は「米景気は失速しないだろう。移民などで人口は約2%伸びており、潜在成長率を押し上げている。住宅販売が減少したところで、景気減速を意味しているわけではない」とみていた。
市場エネルギーは指数ほど熱帯びず、デッドクロスの重し
それでも、今後の相場の先行きは不透明との声は多い。前日の米国株相場は堅調となったものの、日米の金融政策をはじめ外部環境は完全に晴れてはおらず、投資家の様子見姿勢は強い。この日のTOPIX構成銘柄の売買代金も2兆2082億円、出来高は概算で17億602万株と、1日で活況とされる「売買代金3兆円、出来高20億株」には届かなかった。
新興市場を含んだ52週高値更新銘柄を見ても、11銘柄にとどまっており、指数は大幅上昇となったものの、相場は今ひとつ盛り上がりに欠けたと言える。
市場関係者の間では、一本調子の上昇を予想する見方は少ない。日経平均は5月8日の直近高値から1カ月半で約3000円も急落し、投資家の戻りを待った売り圧力は強いためという。このため、「市場エネルギーは減少しており、戻り売りをこなすことは難しいだろう。国内の需給環境は改善しているとは思えない。信用買い残が5兆円を割れたとはいえ、下げ相場ではまだ重い」(野村証券金融経済研究所の若生寿一シニアストラテジスト)との声が多い。
テクニカル分析上でも上値の重さが指摘されている。前日の日経平均は投資家の中期的な平均売買コストである25日移動平均線が、長期的な平均売買コストの200日線を上から下に抜ける「デットクロス」を形成。これは相場の調整が長引くシグナルとされている。
先行してデットクロスを形成した米ナスダック指数は25日線が上値抵抗線となり、調整が続いている。日本株も25日線を上回らないと、再度の下振れリスク警戒せざるを得ない局面も訪れそうだ。
外国人の小幅売り越し続く
力強い相場動向となるためには外国人投資家の買いが期待されるが、直近では小幅な売り越し姿勢が継続している。この日の朝方の外資系証券経由の売買動向は380万株の小幅な売り越しとの観測。売り越しは4営業日連続となった。 また、財務省が朝方発表した前週1週間の対外・対内証券売買契約等の一覧表によると、海外勢は157億円の小幅な売り越し。前の週は4308億円の売り越しで、売り越しは2週連続となった。
新光証券エクイティ情報部の瀬川剛エクイティストラテジストは「先週以降、外国人投資家の動きは静かになっている。今は日本株を買うか、それともポジションを減らすかをヘッジファンド自身も迷っているところだと思う。このため今後の動きを予測するうえで注目されるのは来週のFOMCの声明文だろう」と指摘していた。
7&ⅰHDは小幅続伸、東芝も高い
個別では、セブン&アイ・ホールディングスが小幅続伸。22日付の日本経済新聞朝刊は、同社の06年3-5月期の連結営業利益は前年同期のイトーヨーカ堂連結決算に比べ16%増の670億円程度になったもようと報じた。子会社化したミレニアムリテイリングが貢献、コンビニ、スーパーも利益を伸ばしたという。
東芝が2.8%高と上昇。調査会社ガートナーが21日発表したリポートによると、米アップルコンピュータが今年の年末商戦前に、携帯デジタル音楽プレーヤー「ⅰPod(アイポッド)」の新機種を投入する可能性があるという。日本の関連メーカーとしては、東芝がNAND型フラッシュメモリーを供給している。
戸田建が急反発、モルガンSが強気判断
値上がりが目立つのが、モルガン・スタンレー証券が「EQUALWEIGHT」から「OVERWEIGHT」に投資判断を変更した戸田建設。株価は一時8%以上の上げとなった。04年2月13日以来の上昇率となり、東証1部の値上がり7位に入った。
上下水道用機械専業大手の前澤工業が急反発。一時ストップ高(値幅制限いっぱいの上昇)の前日比100円(13%)高の865円まで買われた。21日に06 年5月期の業績予想を大幅に上方修正したことが好感された。同期の連結純利益は従来予想より5割多い6億円となったもようだ。もっとも、取引開始時が最も高いいわゆる"寄り付き天井"の格好となった。
新興3市場が上昇、上場3日目のアドウェイズは値付かず
新興市場では、東証マザーズ指数が9.56ポイント(0.7%)高の1440.94、大証ヘラクレス指数は35.27ポイント(1.6%)高の2299.43、ジャスダック指数は1.35ポイント(1.4%)高の101.07といずれも上昇した。
東証マザーズ市場では、インターネットイニシアティブ、トランスジェニック、アイディーユー、ACCESSなどが上昇。一方、アルデプロ、アンジェスMG、サイバーエージェント、アプリックスなどが下落した。
東証マザーズに20日に新規上場した際、立花証券による誤発注があったアドウェイズは、上場3日目も初値が形成されず、227万円のストップ高(値幅制限いっぱいの上昇)買い気配で取引を終了した。東京は22日、あす23日もストップ高となり、比例配分も行われずに売買高がゼロとなった場合には、上限のみ制限値幅の拡大を行うと発表した。
大証ヘラクレス市場では、エン・ジャパン、大阪証券取引所、ダヴィンチ・アドバイザーズ、ファンダンゴなどが高い。半面、ソフトウェア・サービス、ゼンテック・テクノロジー・ジャパン、エネサーブ、アセット・マネジャーズなどが安い。
ジャスダック市場では、楽天、イー・トレード証券、日本エイム、スパークス投信などが買われた。一方で、朝日インテック、日清医療食品、理想科学工業、アスクプランニングセンターなどが売られた。
記事についての記者への問い合わせ先:
東京 常冨 浩太郎 Kotaro Tsunetomi ktsunetomi@bloomberg.net
訂正:日銀委員、金利調整は非常にゆっくり慎重に行われるべきだ(4)
(クレジットの日付を訂正します)
6月22日(ブルームバーグ):日本銀行の西村清彦審議委員は22日午後、長崎市内で会見し、政策金利の調整について「非常にゆっくりした形で、非常に慎重に行われるべきだ」と言明。その一方で、「非常にゆっくり慎重に」という言葉の意味からは、数カ月以内のゼロ金利解除は排除されるのか、という質問に対しては「そういうことではない。(金利の調整の)判断そのものは、その時点その時点で、しなければいけないときには、しなければいけない」と語った。
西村委員はさらに、ゼロ金利政策の解除を含む金利の調整について「そのときそのときの利用可能なデータ、そのデータの中に入っている将来の日本経済の姿を見ながら、そして、金融政策は短期的ではなくて、より長期的な影響を及ぼすことを頭の中に入れながら、その時点できちんとした判断をする」と述べた。
株価の下落が企業マインドに与える影響については「今のところ、株価の下落が今後、非常に長い間続くという状況でない限り、足元で売れているもの、販売の強さを考えれば、それほど素晴らしく強いわけではないが、やはりしぶとく続いていることからすれば、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)に対する信頼が急速に変化することは考えにくいのではないか」と述べた。
「村上ファンド」拠出問題
福井俊彦総裁の「村上ファンド」への資金拠出問題は日銀に対する信認を損ねたのではないか、という質問に対しては「金融政策は9人からなる政策委員会で行っている。したがって、日本銀行の信頼性、中立性は、9人のメンバーからなる政策委員会の信頼性や中立性だ。今のところ、この政策委員会の制度に対する信頼性や中立性は損なわれたとは思っていない」と語った。
西村委員はさらに「政策委員会はこれからも信頼と中立を守りながら、適切な金融政策を行っていく必要があるし、それをたんたんとやっていくことに尽きるのではないか」と述べた。
福井総裁自身に対する信認は損なわれたのではないか、という質問に対しては「総裁の信認に関しては、やはりいろいろな問題点が生じてしまったことは否定できないことだ。それについて、総裁自身がいろいろな形で対処していると思うし、謝罪や今後の対処についてもきちんと明確な形で話されていると思うので、私自身は総裁に対する信認は失っていない」と語った。
主な一問一答は次の通り。
――講演で「物価上昇率が低いながらもプラスに定着してきている状況で、名目利子率を極端に低いレベルに長期に置き続けることは、長期的にみると、起こる可能性は小さいかもしれないが、起きた場合には相当な問題を生じさせてしまうリスクが伴う」と発言された。ゼロ金利を長期間続けることによる弊害を指摘されたのか。
「文脈を読んでもらえばわかるが、展望リポートにあることをあらためて説明しただけだ。わたしの考えやスタンスに変化があるということではない。わたしとしては、展望リポートの第2の柱をきちんと理解していただきたいので、ここでもう一度説明した」
「第2の柱とは、長期的に見ると、1年や2年という展望リポートで考える期間を超えた長期で見ると、起こる可能性は小さいかもしれないが、起きたときに非常に大きな問題が生じてしまうかもしれない、そういうリスクについて我々はきちんと正確に把握しておかなければならない。したがって、ゼロ金利が長期化するということについても、こういった観点から、やはり分析をしておく必要がある。それが、ここで言っていることだ」
「しかし、全体のトーンそのものは、すでに何度も言っているように、非常にゆっくりとした形で、金利の調整は行われるだろうし、非常にゆっくりした形で、非常に慎重に行われるべきだと考えている。それは、2月の高松の講演でも申し上げた。極めてゆっくりとした形でやれる。なぜ、ゆっくりした形でやれるし、かつ、やらなければならないかと言うことは、講演要旨でも説明した」
「基本は、長い間の調整のプロセス、特に技術革新の影響は非常に強いと思っており、この影響がだんだんとはく落し、それが良い方向に向かっているというのが現状だとすれば、それに対応する投資の収益率も同じような動きをするはずなので、それに対応する資本のコストとしての利子率も、それと同じように動かすのが――しかも非常にゆっくりと慎重に動かしていくというのが、我々が考えている短長期的な姿だし、それは展望リポートの中にすでに入っている」
――「金利の調整は非常にゆっくりした形で、非常に慎重に行われるべきだ」と強調されたが、その言葉の意味からは目先数カ月以内にゼロ金利を解除するという姿は排除されていると考えてよいのか。「非常にゆっくり慎重に」という言葉は、少なくとも1、2カ月あるいは2、3カ月の間に、政策を変更することとは相容れない表現と受け取れるが。
「そういうつもりで申し上げているわけではない。ゆっくり慎重に、というのは、まさにゆっくり慎重に、ということで、しかし、判断そのものは、その時点その時点で、しなければいけないときには、しなければいけない、ということだ」
「それは当然のことだが、そのときそのときの利用可能なデータ、そのデータの中に入っている将来の日本経済の姿を見ながら、そして、金融政策は短期的ではなくて、より長期的な影響を及ぼすことを頭の中に入れながら、その時点できちんとした判断をするということだ」
――株価の下落が企業マインドに与える影響をどうみるか。
「非常に難しい問題だ。やはり、株価の上下運動は激しいので、今日は上がっている。そういったものが企業マインドにどういった影響を及ぼすかは難しい問題だ。まったく関係がないということはないと思うが、どの程度関係があるのか。つまり、企業経営者が株価の今の動きの裏にあるファンダメンタルズの動きについて何か情報を得ているかどうか、ということだと思う」
「わたしは今のところ、株価の下落が今後、非常に長い間続くという状況でない限りは、やはり足元で売れているもの、売れている力、販売の強さを考えれば、それほど素晴らしく強いわけではないが、やはりしぶとく続いていることから考えれば、ファンダメンタルズに対する信頼が今回のことで急速に変化することは考えにくいのではないかと思っている」
「ただし、これは企業経営者の方が実際の企業経営の場で判断されることなので、我々は非常に慎重に短観などのデータを判断していくことになると思う」
――福井総裁の「村上ファンド」への資金拠出は金融政策への影響があるか。
「金融政策については、9人からなる政策委員会で行っている。したがって、日本銀行の信頼性、中立性は9人のメンバーからなる政策委員会の信頼性や中立性だ。今のところ、この政策委員会の制度に対する信頼性や中立性は損なわれたとは思っていない。同時に、政策委員会がこれからも信頼と中立を守りながら、適切な金融政策を行っていく必要があるし、それをたんたんとやっていくことに尽きるのではないかと思う」
――福井総裁の進退問題も取りざたされているが、この問題についてどう考えるか。
「これは個人の問題であり、いろいろな議論があることも承知している。いろいろなご批判があることも承知している。今後、いろいろな形で検討がなされて、そしていろいろと内部、それから外部を含めた議論がなされている中で、こういった問題が解決されていくと思っている。したがって、現在の段階で、何かわたしが申し述べるのはあまり適切ではないと思う」
「これに関しては、日本銀行に対する信頼は非常に重要な問題だし、日本銀行総裁は日本銀行の執行部のトップなので、当然きちんとした検討がなされて、それに対する適切な対応がなされると考えている」
――「日本銀行総裁は日本銀行の執行部のトップなので、当然きちんとした検討がなされて、それに対する適切な対応がなされると考えている」と発言されたが、これは総裁の進退についての話だと理解してよいのか。
「武藤副総裁をトップとする検討委員会の中で、きちんとした検討がなされると理解している」
――総裁の進退もそこで話し合われる、ということか。
「進退は当然のことながら、これは総裁がお決めになることだから、わたしや委員会がとやかく言うことではない。わたしが申し上げているのは、きちんとした内規、もしくは規定が明確になって、それに対する対応がきちんとなされるということだ。総裁も政策委員会の一員として当然、服されるということだ」
――確認だが、「総裁は日本銀行の執行部のトップなので、当然きちんとした検討がなされて、それに対する適切な対応がなされると考えている」という発言は、内規についてであり、総裁の進退についてではない、ということか。
「そういうことだ」
――日銀への信頼は損なわれていないということだが、福井総裁自身への信頼は損なわれたとお考えか。
「総裁も記者会見で皆さんに申し上げていたように、総裁の信頼、信認については、やはりいろいろな問題点が生じてしまったことは否定できないことだと思う。それについて、総裁自身がいろいろな形で対処していると思うし、謝罪や今後の対処についてもきちんと明確な形で話されていると思うので、私自身は総裁に対する信認は失っていない」
記事に関する記者への問い合わせ先:
長崎 日高正裕 Masahiro Hidaka mhidaka@bloomberg.net