暗い世界に明かりが灯る。

釣り針か、燭台か1

明かりを掲げて、<そこ>をのぞき込むと、
<そこ>には明かりの灯った燭台を持った自分の姿が見えた。

釣り針か、燭台か2

<そこ>は水面なのか?

水面ならばどのくらいの深さなんだ?

<そこ>のそこを覗こうと、燭台の明かりを近づける。

<そこ>に映った自分が、笑ったように見えた気がした。

釣り針か、燭台か3

水面に手を近づけたとき、
燭台の火が大きく揺らいだ。

それに驚いて、慌てて手を引っ込めた。

これで消えてしまったらたまらない。

もう一度火を見ると、火は元の勢いに戻っていた。

…そうだ。

そもそも、ここは何処なんだ?

何故、自分は明かりを持っているのだ。

釣り針か、燭台か4

<そこに>目をやると

水面に映った自分は酷く歪んでから
舌打ちをして消えた。

釣り針か、燭台か5

あれはきっと、
深淵の入り口か何かだったのだろう。

見えるからと言って、闇雲に近づいてはいけないのだな。

そう思いながら、途方もない道のりを照らした。

釣り針か、燭台か