小川村から山を越えて鬼無里の村へ
その昔、平安の頃
京の都から水無瀬(現 鬼無里)にやってきた貴い女性がいた
鬼無里の住人達は美しく教養もあり、読み書きを教え、病やケガを治してくれる女性を敬愛し、山深い土地に京の地名を付け、内裏屋敷を作りと女性のためにできうることをして女性の無聊を慰めようとした
しかし京での華やかな生活を忘れられない女性にやがて鬼の心が宿り、妖術を使い山賊を従え、夜な夜な付近の村を襲い始めた
その女性は名を紅葉と言い、豊かな教養と琴の名手でもあった
紅葉の奏でる琴の音色は京で評判を呼び、源経基の御台所に認められ、その琴の妙技と教養から御台所の局(侍女)となった
やがて経基に寵愛されるようになった紅葉は、御台所が邪魔となり、御台所に呪いをかけて病に至らしめる
比叡山の僧にその呪いを見破られ、紅葉は戸隠へと流罪となった
戸隠の鬼女の悪業は京にも及び、朝廷は討伐令を下した
勅命を受けた 平維茂(たいらのこれもち)は、上田に本陣を置き、討伐隊を二度送ったものの鬼女の妖術により二度とも撃退された
維茂は別所の北向観音に鬼女討伐のために参籠し、降魔の剣を授かるとその剣をもって鬼女の妖術を封じ、紅葉を退治せしめたと言う
それ以降、水無瀬と呼ばれていたこの地は、鬼の居ない里 鬼無里と呼ばれるようになったとか…
事実なのかもしれない…
が、時の権力はあらゆるものを利用してその権力を守ろうとし、その内側に居る者は保身の為にかつて情を通わせた者すら情け容赦なく切り捨てる…
自分はこの鬼女伝説に、紅葉の哀しみを感じてならない
鬼無里から山を越えて戸隠へ
鏡池より戸隠山

