わたしは地球人 Az-rider
今回は東京に来ている
と地図を渡された
随分とアバウトな地図だ
親の方針で電話とメールに限定されたフィーチャーフォンしか持たせてもらえず、頼みの地図もわかりにくいときている…
道案内をすることにした
その間、いろいろと話しをしてくれた
中学校の演劇部に所属し、地元の小さな劇団で演技の稽古をしていること
「オーディション…なかなか通らなくて…」
演技をみてもらえずに終了することもあるとか…
落ち続けるオーディションに自信を失いかけたところ、とあるオーディション会場でスカウトされたという
事務所の説明を受けるために渋谷まで来た
「私、将来は女優さんに…Mさんといつかお芝居をしてみたいんです」
とても真剣に、まっすぐに語る彼女の目は とても澄んでいる
とあるマンションに着いた
事務所はこの7階だ
エレベーターを待っている間、緊張が伝わってくる…
「文字通り背中を押してあげよう」
「え⁈」
少し震えている背中をエレベーターの扉が開くと同時に押した
彼女がエレベーターの中で振り向き、
「おじさん、ありが…」
そこでエレベーターの扉が閉まった
人生は一度きりだ
ならば、自分の納得する時間を過ごす方が良いに決まっている
なんとなくだが、彼女はやり通す気がする
名前を聞いておくべきだった…
ただ、やはりわたしは“おじさん”なのか…
この素晴らしきロクでもない世界…
缶コーヒーPOSS

