震災直後のある日、正義感の強い少年と対立した

「たすけたい!どうにかしたい‼︎」

具体的に何がしたい?

「なんでもいい!自分にできることならなんだってするよ」

結論から言おう…
君にできることは祈ることと、義援金に募金することしかない

「なんでだよ!」

どうやって現場に行く?
道路は寸断され、鉄道も動いていない…免許もない、車も持ってない
ヒッチハイクか?

「……」

よしんば行けたとして、何が出来る?
今の被災地は君が行ってどうにかできる状況ではない

「生命が助けられるかもしれないじゃないか!」

消防のレスキューも、海保のレスキューも組織で動く
更に言うなら、人命に関わるには専門知識に加え、資格が必要だ

「な、なにか出来ることくらい…」

海保や消防のレスキューは訓練と装備によって自らの安全を担保した上、救助の知識と経験に裏付けられた活動だ
組織として動き、どうやったら安全に救助できるかを組織として培ってきた
そして自らも生きて帰るという最低限のルールがある
災害直後の今の状況は、高度な訓練を積み重ね、充実した装備の専門家でも救えない生命があり、逆に装備がないゆえに救えない生命もある
個人がどうにかしたいという思いだけでどうにかできる状況ではない!

「じゃあアンタはこのまま見てるだけかよ?」

被害の状況がわかり、どんな支援が必要なのかがわかり始めれば被災地に行く
とはいえ、自分も身体を動かすくらいしかできないけどな…

「俺と何が違うんだよ!」

そう大した違いはないな…分別がつくかつかないかくらいだろう

「俺はアンタとは違う!俺は…」
「こんな時、ルールや資格がなんだってんだ………」

ルールは守る為にある
なにより、こんな時だからこそルールは守らねばならない
知識も技術も、ましてや経験も無いヤツが、都合良く人命救助できるのはフィクションの世界だけだ

「……」




悔しそうな目をしていたな…

あれ以来会えてない

今どうしているだろう