COLLAGE
#5 Cherokee
ヒサタカ君から届いたビートは後に2021年8月13日にエムラスタ ソロシングル第一弾としてリリースすることになる”Cherokee”のビートだった。
テーマについても、「いまCherokeeに乗ってるんならそれをテーマにしよう。MVも作りやすくなるから。」とのコメント付きだった。
僕は本当に好きなビートだったし、早速リリックを書いてみようと思った。
しかし、これまで複数人で1曲を制作してきたため、改めてソロで1曲分のリリックを書くにあたり、途方もなく長い道のりに感じた。
3MCの頃はおおよそ1人16小節を書いて持ち寄った。
僕はいつも16小節の中でいかに自分のカラーを出せるかということに集中してきた。
ひとまず何とか16小節を書いてみたが、これ以上、言うことがない…
よし、2曲作る気持ちで書いてみよう。
と意気込んだが、残りは8小節しか書けなかった。
構成的にこの8小節は頭にもってくることにして、とりあえずこれを聴いてもらおう。
久しぶりのラップを人に聴いてもらうことにとても緊張した。
僕はラフ録りした音源データをLINEにアップし、ヒサタカ君へ目を瞑りエイッと送信した。
しばらくすると既読になった。
返信を待つ手は震えていたように思う。
ヒサタカ君から返信があった。
「とりあえずザーッと聴いたよ。発声にそんなにブランクは感じなくて良いと思った。ラップの内容は後半の方が好きかな。前半はちょっと具体的過ぎ。あと言葉の置き方はちょっとだけアップデートさせよか。
もうちょっとスペースを置いた方が良いかな。全部の小節では無いけど一拍目発声しないとこ作るとか。
口出すとこなのかどうかアレなとこもあるけどよろしくです!笑」
という、詳細にそしてだいぶ気を遣っていただいていることが分かるコメントをいただいた。
僕は何が正解かまったく分からない状態にあったので、言われたことを忠実に反映できるように努力してみた。
そして2回目のラフ音源を送った。
「めっちゃ良くなってる!
ちゃんと一拍目空いてるとこ!
言ってる事の内容もちゃんとエムラスタらしくて良いよ。
これこれ、感ある。
口出し過ぎたかなー、って心配してたんやけど。ちゃんと期待に応えてもらえて良かった。」
とのコメントをもらった。
僕は軽く泣いていたんじゃないかと思う。
それから何度かスタジオに入って練習し、レコーディングをすべくVINYL7へ向かった。
レコードに囲まれながら、ヘッドフォンをかけてコンデンサーマイクの前に立った。
レコーディングは練習の甲斐あって1時間もかからないうちに終了した。
ヒサタカ君はまたとても褒めてくれた。
それから数日後、お次はヒサタカ君がMVを撮影してくれることになった。
レコーディングの時も、MV撮影の時も、僕はまるでRomancrewの最初のEP”mi familia”を作っていた時のように、音楽で心から遊んでいると感じた。
初期衝動というものは20代前半までの宝物だと思っていたのに、40代にも初期衝動が舞い降りたことに心底驚いた。