前回の続編です。調子に乗って今回も小説風にしてみました。興味のない方はスルーでお願いしますね。
晩御飯の準備をしていると、彼女の携帯電話が鳴った。表示している番号は固定電話のものだった。番号からパソコンを預けたお店の番号だと容易に想像できた。期待と不安が入り混じった気持ちで、すぐには電話をとれなかった。一呼吸おいて出た。
やはりお店からだった。修理できるのか、できないのか、ちょっと震える声で返事をした。「はい」。
内容はショックなものだった。「予想以上に壊れていて、修理には17万円かかるそうです。」
嫌な予感はあった。でも、8万円くらいだろうと言われていたので、いっても10万円くらいではないか、それなら修理しようと思っていた。店にも前にそう伝えていた。マザーボードに、キーボードに、Wi-Fiをつなぐ部分、色々壊れているそうだ。確かに修理できるのはうれしいけれど中身はすべて変わってしまう。しかも想定よりもかなり高額だ。
でも、大切な夫のパソコン、未練がある。黙っているともう一つの提案があった。
「こちらの想定よりもかなり高額ですので、修理予定額の10万くらいで今のパソコンよりもいいものを準備できますが。」買い替えか。話を聞くと、かなり努力していいものを用意してくれるようだった。それならば出すべき結論はわかってはいたけれど、それでもこの時は決めることはできなかった。
子どもにも、新しいパソコンを勧められた。何よりも夫はこういう時どちらを選択するかわかっていた。でも、自分のミスで壊したことの申し訳なさが大きすぎていったんは修理に心が動いた。ただ、パソコンは終生使えるものではない、いずれお別れが来る、ならば夫の出すであろう結論に従うしかないのかもしれない。
3日ほど悩んで結論をだした。悩む必要のない結論でも、踏ん切りをつけるためには彼女には必要な時間だった。
「そちらでパソコンを用意してください。条件は今と同じ大きさで同じ機能のあるもの。」そう伝えた。色は指定できないと言われていたので我慢した。前の白色は気に入っていたけれど、自分でしでかしたから仕方ないと納得した。
修理の見積もりに出していたパソコンが戻ってきたという連絡を受け、取りに行った。預けた日もかなり雨が降っていた。取りに行くと約束した日はさらに大雨だった。晴れ男の夫、やはり壊したことを怒っているのだろうか・・・。
借りていたパソコンを返し、新しいパソコンを受け取った。色は残念ながら黒だった。説明や手続きで1時間以上かかった。日曜日だったのでこんな大雨でも客はそこそこ多かった。晴れていなくてよかったのかもと思いながら手続きを済ませた。
最終的には消費税もあったので11万円になった。大切に大切に使おうと心に誓った。
家に帰りつくと、とにかくほっとした。大雨でも無事に帰れた安堵感というわけではなく、パソコン問題がベストではなかったけれどようやく解決したからだ。
とりあえずパソコンを開いて、Wi-Fiをつないだ。ブラウザを開くとヤフーだった。使い慣れたものなのでうれしいと思う間もなく、またパソコンが吠えた。
「このパソコンはトロイの木馬ウイルスに感染しています」
このおちに彼女は苦笑いするしかなかった。
終わり
借りていたパソコンは、電源を切っても切っても叫び続けるのでずっとヤフーが使えませんでした。吠えなくなるのに2週間ほどかかりました。でも怖くてずっとグーグルでした。今回は新しいからか電源を切るともう吠えなかったです。今はなんだか懐かしい気持ちでヤフーを使っています。
トロイの木馬ウイルスさんはヤフーがお気に入りなんでしょうかね。シュリーマンもびっくりしているでしょうね。