物事を完成させるという尊い考え方と共に、手をつけずに放っておくという尊い考え方もある。
人生の知恵の本質は、不必要なものを取り除くことにあるのだ。
ー 林 語堂
略歴:中華民国の文学者・言語学者・評論家。魯迅など多くの文学者・学者と接触を持ち、政治論文やエッセイを書いた。文学・政治・教育等で諷刺とユーモアがこめられた小品文を流行させ、「幽默(ユーモア)大師」と称された。
これまで社会人として生きてくるなかで、色々と資格試験を受けてきました。たくさん資格がある方が就職・転職でも有利ですからね。いわば会計・法務・語学など様々な分野での武器を持っている方が、優秀そうに見えるということです。ことに長い不景気下での競争社会では、誰もが生き残りに必死でした。武器がないがゆえにリストラされた人は数知れないでしょう。
そんな資格至上主義はある意味で仕方がないことですが、武器をたくさん持っていることが人間として優れていることだ、と思い込む人がいます。これは思い違いで、スキルが豊富だからといって人間の中身が優れているとは限りません。時折、「オレ優秀」オーラを全身から無理に出している人に出会いますが、気の毒になりますね。理解が深みに至っていません。
私たちは裸で生まれて裸で死んでゆきます。成長するにつれて、生きていくために必要なスキルを身につけることは大切です。そして、人生も峠を越えておおむね先への見通しも立ったら、後半は一つづつ手放していかないといけません。もうそんなに生き死にの戦もないのに、鎧を着て、槍も弓矢も大小の刀も持っていたら、重くてしょうがないでしょう。
人生の後半は、飾り物を捨てていく道です。人が褒めてもけなしても、そういうのは相対的なものです。自分がやりたいことを、自信を持ってやれば良いでしょう。寸鉄帯びず裸で風呂に浸かっていて、不意に襲われても平然としていられる。そういう芯からの自然体と強さが理想です。装飾品で見栄えを良くしなくても、内面から輝く素の自分を磨きたいものです。