臆病者は、ほんとうに死ぬまでにいくたびも死ぬが、勇者は一度しか死を経験しない。
ー シェイクスピア
略歴:イングランドの劇作家、詩人。最も優れた英文学の作家とも言われている。俳優として活動するかたわら次第に脚本を書くようになる。高等教育を欠いてはいたものの、長らくジェントルマンの地位を求めていた。彼の経済的成功により、シェイクスピア家は紋章を手にすることができた。晩年、次女ジュディスの婚約者に関するスキャンダルで苦労した。
改めて自分を顧みれば、間違いなく臆病者だと思います。子供の頃は怪談や怖い話は、とても聞けませんでした。宿泊学習会での肝試しも、ビビりまくって最悪でした。それでも、怖くても立ち向かって行かなければならない場面が、人生にはあるものです。
ゴルフ場再建の仕事をしていた時、ある業者F社とトラブルになりました。F社はゴルフ場の管理資材のメーカーで、当方は、管理資材を仕入れる側です。
F社は、とあるコース管理資材につき「独占的に、 F社の言い値で」納入することを要求してきていました。当時のゴルフ場の購買規則では、全ての仕入は相見積もりを取ることとなっていました。私はゴルフ場側の事情を説明するためにF社の社長と面談しましたが、これが本当に大変でした。社長が激怒しているという話は事前に聞いていましたが、その激怒ぶりが半端ではありませんでした。
名刺交換を終えた瞬間から、社長の怒号。過去からの経緯とか、なぜ「独占的に、 F社の言い値で」買うことが必須なのかを、延々と言い続けました。面談の開始は午前10時で、終わったのは午後1時。その間ほぼ切れ目なく、社長は私に怒りをぶつけ続けました。世の中、こんなに長時間怒り続けられる人がいるんだ、と感心しました。お茶は、最初に緑茶、11時にまた緑茶が出て、12時にはコーヒーが出ました。昼飯は出ませんでした。
臆病者の自分がよくそんな場に一人で行ったものだと思いますが、今は懐かしい思い出です。この時に学んだことは「怒りでは人は動かせない」ということですね。F社社長の怒りはよく伝わりましたが、私は、だから「言う通りにしよう」という気にはなりませんでした。会社同士の理屈が異なっていますから。あの時は私は一度、精神的に死んだのかもしれません。けっこう衝撃を受けましたから。でも幸いに今も生きています。世の中には想像を絶するタイプの人がいますから、心の準備はしておいたほうが良いでしょう。