中国の鳥インフルエンザ、中東のコロナ ウイルスなど、パンデミックの脅威が跡を絶ちません。ところで、もっと私たちの健康に甚大な被害をもたらす可能性があるのが、「抗生物質耐性菌」であるということをご存知でしょうか。
「抗生物質耐性菌」とは、その名の通り抗生物質に耐性を持った、抗生物質が効かない細菌のことです。抗生物質を投与しても、最近は変異により抗生物質に負けない強さを身につけます。最高致死率50%という「殺人細菌」も存在します。これにより、米国立衛生研究所で感染者18人のうち6人が死亡しました。
北米では毎年約10万人が院内感染で死亡しています。これは日本の年間自殺者数の約3倍です。南米 ペルー、ボリビアでは半分以上の院内感染症が抗生物質耐性病原菌によるものです。タイでは年間14万件以上の抗生物質耐性病原菌感染症が発生し、3万人以上が死亡しています。
この原因はいくつかありますが、ひとつは抗生物質の乱用です。医師の判断能力不足から、抗生物質が過剰に処方される場合があります。また、国によっては過剰な処方を促すような医療制度が存在します。処方すればするほど医院は儲かるわけです。また、多くの国では抗生物質が薬局で処方箋なしに買えてしまいます。
また、抗生物質は家畜や養殖魚に成長促進剤として与えられています。抗生物質耐性病原菌はこれらを通じて人体に伝染します。
恐ろしいのは、1987年以降、新しい系統の抗生物質が一つも発見されていないことです。耐性菌はどんどん変異するのに、抗生物質の開発がついて行けていません。
抗生物質耐性菌はある意味で、パンデミックよりも身近にある脅威かもしれません。まずは、できるだけ入院をすることがないよう、日頃の健康管理には気をつけたいと思います。