ニューズピックス
スタートは経済メディアで組まれた「歩く」がテーマの特集です。
記事は大きな反響を呼んで、書き切れなかった内容が本になりました。
「「ウォーキングは身体にいい」みたいな、ありふれた健康書を書こうと思ったわけではない」とあります。「身体にいい」ではなく、「歩かないとまずい」んです。
現代人は平均して1日9.3時間も座っているという統計があるそうです。
これは、平均睡眠時間の7.7時間よりも長い。
直立二足歩行をすることによって「ホモ・エレクトス」と呼ばれるようになったヒトは、今や「ホモ・センタリウス」(座位のヒト)になりました。
狩猟採集民から定住へ、産業革命を経て、都市化、工業労働、オフィスワーク、自動車、スクリーンの娯楽などによってライフスタイルが変わり、都市生活者の中には1日10~15時間も椅子に座っている人たちがいるというのです。
僕たちは直立二足歩行を獲得し、解き放たれた手が道具を生み、文明を築き上げた。しかしその果実は、ただ僕たちを椅子に縛り付けることだったのだ。もっともその解決策は至ってシンプルだ。立ち上がって、歩くことである。
世界各国の「歩行事情」も紹介されます。
歩きやすさは国によって格差があり、治安が悪かったり、車の運転マナーが悪い国はやはり歩きにくい。
女性が一人では歩けないような国もあり、そこには男女格差もあります。
その中で、治安もよく道路も整備された日本は「歩く」ということに関して先進国といえます。
モータリゼーションによって歩く機会が減少した1970年以降、日本では、「身体の養生や人間性の回復を目指して」全国で長距離自然遊歩道の整備が進められていて、その距離は2万8,000キロにおよびます。
最初に完成した東海自然遊歩道は、東京・高尾山から大阪・箕輪を結びますが、その存在は感度の高いハイカーたちの間でさえ、ほとんど知られていないそうです。
私も知らなかった。
踏破したのはわずか30名、平均年齢は61.6歳ということですが、近所を歩いているとき出会う人々を見れば意外と若いなという印象です。
足の構造、歩くメカニズム、靴のことは本書の4章、5章で語られていきます。
興味深かったのは、かかとの部分が高くない「ゼロドロップ」というシューズを開発したアルトラというメーカーの話です。
一般的なランニングシューズはかかと部分がつま先より2倍は厚く、重量もかかと側が重くなっています。それはランニングの「記録」のため、推進力が出るよう作られているからです。
これを素人が履くとどうなるのか。
かかと側が高いと身体は前傾姿勢になり、自然な姿勢を崩し故障の原因になるというのです。
健康のため走ることがかえって体に悪いこともある。
靴のせいで!
人間は、外に出ることで、内面が豊かになります。自然の中で過ごす時間が増えれば増えるほど、人は健康的に、そして幸せになれる。
アルトラの創業者の一人、ブライアンの言葉です。
この章では、身体を壊さないための靴がたくさん紹介されていて、実際にお店で試してみたくなりました。
最終章は、自然の中を歩くこと。
筆者が7歳の息子と歩いたアイルランドのトレイルが写真とともに紹介されています。
自然の中でさまざまな困難を経てはじめて出会える景色が本を閉じた後も心に残ります。
さて、歩く?
ちょっと暑いよね。
おつき合いありがとうございます。