岩波新書
元新聞記者が定年後にバルセロナで豆腐屋に!?
テレビ朝日「ニュースステーション」のコメンテータも務めていたそうですから、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
その方が何で、バルセロナで豆腐屋に?
凶悪犯罪を取材していた30代のとき、突然、「世界名画の旅」取材班に配置換えされます。
絵画の知識はまったくなく、戸惑いながら海外取材で行った都市で一番よかったのが「バルセロナ」
アジア人に対する奇異の目が感じられなかったのはここだけだったそうです。
退職したらバルセロナに住みたいという思いがふくらみますが、問題となったのは食べ物。
「豆腐や油揚げ、納豆が大好きで、それらを何年も我慢することはできそうにない」
では、どうするか。
いくら考えても答えは一つしか思い浮かばなかった。
ーバルセロナで豆腐屋になる。
えええーーーー
そうなの?
2007年に定年退職すると、スペイン語学校に通い、近所の豆腐屋で修業し、2010年4月、バルセロナで豆腐屋を開業してしまうのです。
開業直前に機械が故障するなど、トラブル見舞われながらも無事に開店を迎え、お客さんが来てくれた場面では、思わず涙が出そうになります。
その後もいろいろあって、やっぱり商売は大変だなと思うのですが、清水さんはとても楽しそう。
配達もあり、1日に歩く歩数は平均2万歩前後。
92キロあった体重が75キロまで落ち、すこぶる健康体へ。
流水不濁 忙人不老
流れる水は濁らない、忙しい人は老け込まない
という意味だそうです。
本書では、バルセロナの食事情も紹介されます。
北部の村で「あきたこまち」と「コシヒカリ」を栽培するアルベルトさん、カタルーニャ州で日本酒を醸造するカンピンズさん、さらには本格ラーメンを出す「ラーメン屋ヒロ」などもあり、日本食は人気です。
北極から来店した和田さんや漫画家の井上雄彦さんなど、店を訪れるさまざまな人のエピソードもおもしろいです。
定年後にバルセロナで豆腐屋を開こうという夫についてくる妻、この人もすごいなと思いながら読んでいたのですが、最終章では「カミさん」のことが書かれていました。
やっぱりこの人はすごかった。
この章は涙なしには読めません。
これは、少し前に読んだスペイン関係の本。
スペインのこんがらがった歴史を知ることができておもしろかったです。
おつき合いありがとうございます。