令和6年5月20日発行

幻冬舎文庫

790円+税

 

日経新聞の日曜版に載る中谷美紀さんのエッセイがいいのです。得難い経験を的確な言葉で綴る、知性に裏打ちされた表現力。

 

これは、まとまった文章を読みたいと、本書を手に取りました。

 

井上靖原作『猟銃』の3度目の舞台はニューヨーク。

伝説のダンサー・パリシニコフとの共演です。

 

中谷さんが演じるのは、妻、愛人、その娘の1人3役!

通訳もつけず、単身乗り込みます。

 

かっこいい。

 

とはいえ、初演から10年、最後に演じたのは2016年で、「千穐楽にはもう二度と『猟銃』を演じることはないだろう」と心に誓ったほど、「苦しく、困難な作品」の上演には想像を超えるハプニングが続発。

 

自身の心身の不安も含めた、舞台裏を明かす語り口はなかなか饒舌です。

 

女優さんでエッセイを書く方はたくさんいらっしゃいますが、みなさん、文章がうまい!

 

台本という作品に向き合い、日々、じっくり考えることが、その人ならではの表現を生むのでしょうか。

 

 

いかに大量にかき集めても、自分の頭で考えずに鵜呑みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考え抜いた知識のほうがはるかに価値がある。(ショーペンハウアー『自分の頭で考える』)

 

 

最近、日経の夕刊に載る松重豊さんの文章も好きだなあ。

 

本書をきっかけに井上靖の『猟銃』も読んでみました。

 

 

 

芦屋の素封家の物語です。

 

ひとりの男が受け取った3人の女からの別れの手紙。

1通は妻から、もう1通は妻の従妹から。

 

妻の従妹と男は10年以上の愛人関係にあります。

 

そして、その妻の従妹の娘から。

 

ちょっとややこしい(笑)

 

井上靖、はじめて読みましたがおもしろかったです。

 

 

みんな人間は一匹ずつ蛇を持っている

 

そんなものなんでしょうか。

 

 

来年は巳年だな。

 

 

 

 

 

 

おつき合いありがとうございます。