2024年1月16日発行

講談社+α新書

 

今年92歳になる評論家の樋口恵子さんと高齢者専門の精神科医、和田秀樹さんの対談です。

 

常々、和田さんが主張していることを樋口さんの鋭いツッコミですっきり理解することができました。

 

 

健康寿命について

「健康寿命」という言葉が注目されるようになったのは2000年代に入ってから。

和田さんによると、厚労省の言う「健康寿命」の定義というのは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」の平均年齢のことだそうです。

 

この基準があいまいで、実はアンケート調査で決められているとのこと。

 

全国から無作為に選ばれた男女に「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」と質問し、「ない」と答えると「健康」、「ある」と答えると「不健康」とみなして算出するのだそうです。

 

「その人の主観」によって、「健康寿命」が決まるというのですから、○○歳までという基準も全然気にしなくていいことがわかります。

 

老い方は千差万別

「個人差が大きいというのは、高齢期の最大の特徴ですね」と、和田さん。

 

10代の人に100メートル走をやってもらうと、タイム差はあっても大体の人は走り切れます。ところが高齢者になると、マラソンにチャレンジしている人がいるかと思うと、青信号で渡り切れない人もいる。

 

「これほど個人差が出る時期はないというのが高齢期」

これを受けて、「人と比べてもしょうがない」と樋口さん。

 

おっしゃあるとおりです。

 

 

「足腰」や「記憶力」より先に衰えるのは「意欲」

多くの人は、もの忘れをしたり、記憶力の低下が始まって、脳が老化したと心配するものですが、実はそれ以前に前頭葉では老化が進んでいるとのこと。

 

順番としては「覚える意欲」が低下し、その後、「記憶力」が低下するそうです。

 

前頭葉は、意欲のほか、思考、創造、理性などにも関わっていて、この部分が衰えると、感情のコントロールが利かなくなったり、予想外の出来事に対応するのが難しくなったりするのだそうです。

 

和田流・前頭葉の鍛え方

1 ものごとを両面から考える

2 自分の考えを言葉で表現する

3 いつもと違うことにチャレンジする

 

樋口流・意欲を低下させない他力本願作戦

1 人に誘われたら、エイヤッと受ける

2 億劫でも予定を入れる

3 おしゃれで心をウキウキさせる

 

日本はそもそも前頭葉をあまり使わないでも生きていける社会、すなわち「言われたとおりにやるのが優等生」みたいな社会なので、より注意が必要という和田さんの言葉になるほどと思いました。

 

 

 

対話は、高齢者施策にも踏み込みます。

 

若い人がお金がなくて結婚できない、子どもがつくれないなどの話を聞くにつけ、高齢者は優遇され過ぎなのではないかと思っていたのですが、お二人のお話によれば、そんなことはないそうです。

 

高齢者の福祉を削らなくても、若い世代が暮らしやすくなる政策はとれるはず。

 

高齢者を狙った振り込め詐欺や強盗事件の背景には、お年寄りのせいで「割を食っていると感じている若者がいる」との指摘もありました。

 

 

みんないつかは年をとる。

 

 

高齢者の住みやすい社会は、将来に希望を持てる社会でもありますね。

 

 

 

 

おつきあいありがとうございます。