1月に読んだ本を読書メーターでまとめてもらいました。

全部おもしろかったです。


読んだ本の数:22
読んだページ数:6120


神学でこんなにわかる「村上春樹」

神学でこんなにわかる「村上春樹」

著者の経験とキリスト教の知識により『騎士団長殺し』を解いていく。顔のない男は神を連想させ、「免色は悪を体現する」などの見方は興味深い。そこに思いが至らなかったせいか、私は「まりえ」の危険を認識できず、主人公の試練との関連がわからなかった。本文からの引用は自説を展開するのに都合のいいところだけ、という印象は免れないが、小説をどのように読むかは読者次第だろう。/「屋根裏が荒野だから、(~中略~)みみずくが住み着いたのである」村上が読んだら、「違う!屋根裏は屋根裏だ」と言うに違いない。
読了日:01月26日 著者:佐藤優

 


子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本

子どもとの関係が変わる自分の親に読んでほしかった本 (日本経済新聞出版)

子どもの言動にイライラしてしまうとき、それは目の前の子どもに怒りを覚えているのではなく、過去の自分の経験からその行動を許せないからかもしれない。人の感情が生まれる背後には「対・子ども」に限らず、そういうことがあるのだろう。アンガーマネジメントの役にも立ちそうだが、無意識にパワハラをしてしまう人は読まないだろうな。
読了日:01月24日 著者:フィリップ・ペリー


すごい地層の読み解きかたすごい地層の読み解きかた

古代に起きた大規模な海底地すべりを記録するコラージュのような地層、地層に残る「えぐり跡」や「引きずり跡」。地層についての用語から丁寧に解説。写真も迫力がありわかりやすかった。今なお判明しない層状チャートの不思議に迫る幾つかの説の解説もありおもしろかった。現地に行きたくなる。
読了日:01月24日 著者:小白井亮一


雨露

雨露

上野の西郷さんの先の彰義隊戦死者碑に最近気づいた。それが何かもわからなかったが、幕末、ここは戦場となったのですね。本書では絵師として生きることを決意しながら、彰義隊に加わった小山勝美を主人公として、彰義隊の内部から、戦に至る当時の状況が描かれる。死が迫る中、師や兄とのやりとりが切ない。「忘れてはならないのだ」「慶応四年旧暦五月十五日。この地、上野で確かに戦があった」
読了日:01月23日 著者:梶よう子


事務に踊る人々

事務に踊る人々

たまたま図書館から借りてあったのだが、阿部公彦さんの著作だった。実はこの人の紹介で、西村賢太を手に取ったのだ。事務の人材として、西村賢太はスウィフト、ディケンズ、メルヴィル、川端と並べられており、本文でも扱われている。漱石や三島の部分もおもしろかった。
読了日:01月22日 著者:阿部公彦


どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)

どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)

毎月のように作家の墓参りをして、一時はその地にアパートを借りてしまう。多額の費用をかけて墓標を東京に持ち帰る。ついには作家の墓の隣に自分の墓を建ててしまう。藤澤清造に対する思い入れのすごさに唖然。一緒に暮らす女には生活費を稼がせ、手をあげる、殴る、蹴る。当然、女は出ていくが、出ていかれれば、実家まで追いかけるしつこさ。このなさけなさ、やるせなさを文章にする力が凄まじい。藤澤清造の短編も手に取ってみたが、影響を受けていることがわかった。
読了日:01月22日 著者:西村賢太


切手で読み解く地図の世界: 小さな地図の博物館

切手で読み解く地図の世界: 小さな地図の博物館

地図を図案とした切手がこんなにあるとは!本文も深いです。
読了日:01月20日 著者:西海隆夫

 


日本ビール缶大全 (タツミムック)

日本ビール缶大全 (タツミムック)

ビール缶コレクターの筆者が集めた日本のビール缶の数々。きっかけはペンギンさんの缶ビール(懐かしい痛みだわ)。ご当地ビールの缶は見たことのないものがたくさんあった。日経文化面の記事では、収蔵は40年で1万本を超えると紹介されていた。缶コレクターはプルタブは引かず、裏側に缶切りで穴を2つあけて飲むそうだ。上から見たときに缶を新品に見せるための技だそうです。最近の私はクラフトビールに凝っていて、瓶ビールが多くなっている。空き瓶はお店か醸造所に持っていくと回収してくれます。
読了日:01月19日 著者:長谷川正人


ニコライの日記(上)――ロシア人宣教師が生きた明治日本 (岩波文庫)

ニコライの日記(上)――ロシア人宣教師が生きた明治日本 (岩波文庫)

NHKの「100de宗教論」で最相葉月が紹介していておもしろそうだったので読んでみた。上巻は1870年ペテルブルグから1892年まで。東北、九州、四国など、各地をまわっていて、外国人から見た当時の日本もうかがえる。巻末の注からは、ロシアの宗教事情を知ることもできた。熱心な宣教師ニコライは「率直な態度でものを言う」ことを師から注意されているが、日記の文章は辛辣。信仰がないように思える人に対する言葉は厳しい(笑)「ロシアはいまもむかしも豊かな悪口雑言文化の国」なのだそうだ。
読了日:01月19日 著者:ニコライ・カサートキン


青年 (岩波文庫)

青年 (岩波文庫)

地方から東京へ出てきた青年というと、漱石の『三四郎』を思い描いてしまうが、実際、鷗外も漱石を意識していたのだろう。『三四郎』は田舎者を小ばかにしているような印象だったが、『青年』の小泉純一は尊厳をもって扱われる。男子の貞操を守ろうとしながら、坂井夫人に近づいていく自らの心情を分析する態度も明晰でさわやかな印象。こちらは眉誘亭さろんさんのご紹介で。
読了日:01月18日 著者:森鴎外


藤田嗣治がわかれば絵画がわかる (NHK出版新書)

藤田嗣治がわかれば絵画がわかる (NHK出版新書)

自画像、裸婦、猫、戦争画、子どもの絵、宗教画など、フジタの絵の変遷、乳白色、線などの画法の裏にあったものを推察する。あくまで著者の考えなので、これでフジタがわかるということではなく、謎は謎のまま残り、フジタの魅力が増した感じ。黒田清輝から「黒を使うな」と言われたフジタが、最晩年、黒を手放したという指摘など、興味深かった。
読了日:01月18日 著者:布施英利


おりたたみ自転車はじめました

おりたたみ自転車はじめました

コミックエッセイです。もともと運動が得意ではなかったという筆者が、軽い気持ちで購入したおりたたみ自転車で世界を広げていく。「輪行」で四万温泉まで日帰りだって?私にできるかしら。
読了日:01月17日 著者:星井さえこ


これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集

これで死ぬ アウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集

タイトルのとおり、山や川・海での事故で亡くなった実際例が紹介されている。山での事故として、滑落、落石、土砂崩れなどはわかるが、「疲れて死ぬ」なんてあるんですよ。2章「動物にあって死ぬ」で意外なのは、「カタツムリやナメクジに触って死ぬ」3章「毒で死ぬ」では、「カニを食べて死にそうになる」。参考になった。
読了日:01月16日 著者:羽根田治

 


新カドタ式家庭の生ごみで簡単土づくり (Gakken Mook)新カドタ式家庭の生ごみで簡単土づくり (Gakken Mook)
1リットルの土と米ぬかを0.5リットルの水で混ぜ、土のう袋に入れて口をねじってレンガなどを並べた上に置いておく。夏なら翌日、冬は四、五日でタネができるので、あとは水を切った生ごみにまぶしてまぜ、熟成させる。虫もわかず、ベランダでも簡単にできそう。稲垣さんの近著で紹介されていたので手に取ったが、実用書ながら文章も魅力的。
読了日:01月15日 著者:門田幸代

 


図解 誰でもできる石積み入門

図解 誰でもできる石積み入門

コンクリートやモルタルを使わない「空石積み」。棚田や段畑といった日本の中山間地域の風景を支えているが、その技術は途絶えてしまっているという。徳島大学に赴任後、石積みに目覚めたという筆者が、師匠・高開文雄さん(85歳)の技を図解と写真で解説してくれる。石積み初心者「あるある」集など、実際的。日本やイタリアの石積みのある景観も紹介されている。こちらも日経文化面から。
読了日:01月14日 著者:真田純子

 


新東京文学散歩 上野から麻布まで (講談社文芸文庫)

新東京文学散歩 上野から麻布まで (講談社文芸文庫)

昭和20年1月29日の記述から始まる東京文学散歩は、名作に登場する土地をなぞるだけでなく、著者の知識と思い出を伴って濃密な空気に満ちている。藤村が『春』を書いた静かな海辺の「海水館」。漁師町の佃島にあったというが今は昔。小山内薫や佐藤惣之助、竹久夢二もいたという。電子版が出ているが紙で持っていたい。再版してくれないかなあ。
読了日:01月13日 著者:野田宇太郎

 


革命と住宅

革命と住宅

社会主義的住まいの実験としての「ドム・コムーナ」、「コムナルカ」など、のっけから、人のふつうの欲求を無視した劣悪な住宅政策におどろく。エリートたちのためには立派な「スターリン住宅」がある。一体だれのための社会主義なのだろうか。映画や小説への言及もあり、わかりやすかった。
読了日:01月12日 著者:本田晃子

 


ザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルト

ザイム真理教

全部はうのみにできないが、国家公務員の給与の仕組、民間企業が社宅を減らす中、公務員住宅は減っていないことなど、唖然とする内容だった。読みながらも、いいほうへは変わらないだろうなと無力感があったが、著者も同じように感じているようだ。自給自足と物々交換で、消費税をなるべく払わない。そんなことしか自衛の手段がないのか(笑)
読了日:01月11日 著者:森永卓郎

 


親といるとなぜか苦しい: 「親という呪い」から自由になる方法

親といるとなぜか苦しい―「親という呪い」から自由になる方法

「精神的に未熟な親」に育てられた子どもは「真の自己を黙らせ、役割としての自分やファンタージーの導きに従うようになる」さらに「その過程で現実との関わりを失っていく」親は子を持つことによって円熟するのかと思っていたが、子を持つ前に自分の中の「子ども」をなだめておく必要があるようだ。
読了日:01月09日 著者:リンジー・C・ギブソン

 


都会にフジを咲かせましょう

都会にフジを咲かせましょう

フジの歴史、フジの名所の数々、楽しく読んだ。
読了日:01月07日 著者:藤三郎

 


騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

父を殺し、神なき世界を生きるというテーマは相変わらず。本書では、騎士団長の犠牲も「わたし」の試練も「まりえ」の救出には役に立っていないように思える。試練は他人のためでなければ受ける気にならないが、それは受けた本人の役に立つということか。カルト宗教、東日本大震災などにも言及し、とっ散らかった印象ではあるが、読んでいる間は楽しかった。完成していない絵のような小説。ああ、わざとか。
読了日:01月07日 著者:村上春樹

 


騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

画家を主人公にした、これは村上春樹の芸術論であり文芸論ではないかと思った。様々な読み方をされ、いわゆるプロによる解説も多い春樹の著書だが、「隠喩は隠喩のままに、暗号は暗号のままに」(P450)というのは、彼のいつも言うところであろう。「人物を描くというのはつまり、相手を理解し解釈することなんだ」「でもそれは簡単なことじゃない。だから絵に描くんだ」(P482)免色、騎士団長、秋川まりえ、笙子といった登場人物がこれからどう動いていくのかも楽しみ。ページを繰らせる技術はさすがだ。
読了日:01月05日 著者:村上春樹


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