2023年5月20日
文一総合出版
梅も桜もまだなのに、フジの話で恐縮ですが、
桜の名所は数あれど、まちなかに、意外と見ないのはフジの名所ではないでしょうか。
近所の公園で見かける藤棚も、しばらく花をつけていないように思います。
そうなんです。
フジってとっても難しいんですって。
著者は、中世初期にフジの名所として知られていた大阪・野田で、600年間フジを守り続けてきた「藤家」当主の藤三郎さん。
苗木の入手から、花後の管理まで、立派なフジを咲かせる技術を披露してくれます。
が、そもそもフジなんて育てる気のない私が興味深く読んだのは、第2部「フジの文化史」の部分です。
フジが最初に記録に見える『古事記』の時代から、『万葉集』に読まれたフジ、平安王朝貴族、中世の武家階級とフジなど、フジが古くから日本人と深く関わってきたことがよくわかります。
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第3部「現代のフジの名所10選」で紹介されるのは、世界一美しい「足利フラワーパークのフジ」(栃木県足利市)、日本一長寿のヤマフジ「才の神のフジ」(京都府福知山市)など。
足利フラワーパークには行ったことがあります。
園内所狭しと様々なフジが咲き誇り、すばらしい景色でした。
歌川広重の「東都三十六景 亀戸天神境内」に描かれたフジは、花房の長い大阪の野田藤を導入したものだったとか。
「近世になって周囲が工場地帯になってからこのフジは衰え」昭和14年に千葉県流山からフジガ移植されたものの、このフジも第二次世界大戦で焼失し、現在のフジは三代目なのだそうです。
私がこれまで見たフジの中で最も見事だと思うのは、「牛島の大藤」(埼玉県春日部市)
花房は長いところで2メートルを超え、根まわりは10平方メートルあるそうです。
これは本書で知ったことですが、牛島の大藤は「弘法大師お手植え」との伝承もあり、樹齢1200年と推定されるそうです。
関東にお住まいなら、一度は見ておいて損はないと思います。
見ごろは4月下旬から5月上旬。
「花時の眺めは世界一」と称賛されるそうです。
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ところで、うちのご近所には毎年見事にフジを咲かせるお宅があります。
先日、通りがかりに見てみましたら、かなり思い切って剪定されているようでした。
手間暇かけて咲かせてくれているんですね。
今年もフジが楽しみになりました。
おっと、その前に梅だ、桜だ。
おつき合いありがとうございました。