中央公論新社
歴史研究者でもあり、作家でもあるオリガ・ホメンコさんが、日本語で書いたエッセイ集です。
(はじめに)には、ロシアによる侵攻以来、日本のメディアから受けた多くの取材に気分が悪くなり、「取材を全部断って自分で書くことにした」とあります。
その質問の幾つかは本書に書かれていますが、かなり無神経なものです。
ディアスポラ(移民)史を研究しているというオリガさんは、まさか自分の研究テーマが自身の現実になるとは夢にも思っていなかったそうです。
オリガさんが目にしたり聞いたりした、今もウクライナに残る人々、外国で生活する人々の暮らしが描かれます。
ウクライナの国旗のこと、一日に何度も確認しなくては気が済まないスマホのニュースのこと。
あからさまに言葉にできないことを美術で表現するなど、戦時下の人たちの力強い抵抗も知ることができました。
戦争は大変悲しいことだけれども、「よく笑って冗談を言い合」うことが大切だともいいます。
「どうして?なんで襲われたのだろう」
ロシアによる攻撃が始まって最初の数週間、多くの人が感じた疑問のようです。
その答えは、本書を読んでもわかりませんでした。
独立から30年、一生懸命築いてきた穏やかな日常。
その生活が突然破壊され、家族が分断されなければならないということに、納得のいく理由なんてあるはずがないのです。
最近、日本では「ウクライナはかわいそう」という言い方がされることがある。それを聞くと複雑な気持ちになる。(~中略~)ウクライナの人々は自分の故郷を、そして尊厳を守るために懸命に戦い、今回のトラウマを成長の糧に変えようとしている。その姿を見てかわいそうと思わずに、応援し続けてほしい。
おつき合いありがとうございます。