2022年9月30日
新潮社
ニットデザイナーの三國万里子さん、初のエッセイ集です。
ちょっと変わったご主人との出会いから始まり、大きな仕事が片づいた記念に買った「へび子さん」というアンティークの腕時計の話(なんとバティック・フィリップ!)
ニットブック『編みものこもの』出版のくだりでは、思わず涙ぐんでしまいました。
フランスで長く暮らしていた「ひろしおじ」のこと
ひろしおじが紹介してくれた秋田の温泉宿での住み込みのこと
◇◇
三國さんは、寝るとき片手で座布団を抱きしめて、もう片手は後ろ枕の根元に当てていることが多いのだとか。
眠くなると呼吸が浅くなり、後ろ頭がずーんと重くなるという三國さん。
「それが、横になり、頭の根元に手を当てて目を瞑ると、その重さの「もと」が手から吸われて、体の回路に戻っていく感じがするのだ」そうです。
昼寝から覚めるたびに、地球というとても巨きな生き物が持つリズムに、呼吸に、自分が調律されているのを感じる。潮の満ち干に同調するのか、わたしの中にも安らかに潮が巡るようだ。それが「生かされている」という状態なんだと思う。
編むようにつづられた文章がなんとも味わい深いのです。
おつき合いありがとうございます。