1970年8月8日から26日
夏休みに帰省した「僕」の物語です。
発行以来、何度か読み返しているはずですが、今回はいろいろ発見がありました。
舞台は恐らく神戸
1978年、29歳になった「僕」が当時を振り返る形で描かれます。
この年の夏はとても暑かったという設定ですが、本に書かれている気温がなんと37度。
70年代にそんな気温が観測されたのかと調べたところ、この年の神戸地方の最高気温は7月22日の36.1度。
30度を切る日もあったようですから、当時の体感としてはすごく暑かったのではないかと思います。
そりゃ、ビールがうまいわな。
帰省した僕は毎日、友人の「鼠」と「ジェイズ・バー」で飲み、知り合った女性と語ります。
全体が淡々とした文章なので、なんとなく「僕」もあっさりした人間なのかとばかりと思っていたら、今回読んで感じたのは、なんだかしつこい男。
洗面所に倒れていた女性を家まで送り、そのまま朝まで帰らないとか、5年前にレコードを借りたクラスの女の子の電話番号を調べてまわるとか……
小説に出てくる女の子が、なんとなくイライラしていているのは、村上がつきあっていた女がそうだったからでしょうか。
短い小説ですが、盛りだくさんです。
アメリカの飛行機、戦場、終戦の二日後に自分の埋めた地雷を踏んで死んだ叔父、昔の天皇の墓。
はじめて読んだ頃、私の周りにはこの作家を評価する人は皆無でした。
わけがわからないとか、三島由紀夫のほうがいいとか、宮尾登美子のほうがいいとか……
比べるなよ(笑)
新刊が出るたび読んでいたのは『1Q84』までだったでしょうか。
当時、ある宗教に関わっていた私は、その内容に衝撃を受けました。
自分が信じていることを悪く言われるのは嫌なものですね。
でも、今思えばそれも覚醒のきっかけになったのかもしれません。
「汝らは地の塩なり。」
「?」
「塩もし効力を失わば、何をもてか之に塩すべき。」
鼠はそう言った。
おつき合いありがとうございます。