2015年12月1日発行

ぴあ

 

 

「ポピュラー音楽や映画、本などについての文章を商業雑誌に寄稿することで生計を立てている」筆者が、生まれ育った「神戸」をテーマに書いた108の文章が載せられています。

 

第1章 「食べたり呑んだり、神戸」では、「信州そば 長野屋」や「丸玉食堂」といった、観光で行っても、ちょっと入りにくそうなお店が紹介されます。

 

第2章「ぶらぶら歩く、神戸」では、「灘温泉水道橋筋店」や今はなき「トンカ書店」

 

第3章「神戸を読む、観る、聴く、買う」では、この地をロケ地とした映画などが紹介されます。

 

ウルトラセブン「警備隊西へ」(1968年1月7日、14日放映)は、「東洋一のマンモス港、神戸はいま、侵略の嵐を前に深い眠りから目覚めようとしていた」というナレーションで始まるそうです。

 

「自分の住んでいる町が、毎週楽しみにしているテレビドラマの舞台になる」のを、5歳の筆者が喜ぶ姿が目に浮かびます。

 

全編、神戸ロケをうたった58年の日活アクション映画『赤い波止場』、淡路島出身の渡哲也を主演にした『紅の流れ星』(67年)、やはりオール阪神ロケの『麻薬3号』(58年)など、観たことはないのですが、紹介の文章がおもしろいです。

 

神戸といえば、やはり阪神・淡路大震災。

 

当時、灘区八幡町2丁目の古いマンションに住んでいた筆者の目から見た被災の様子は、どこか他人(ひと)ごとのように淡々とつづられる文章にリアリティを感じます。

 

 

私が愛した神戸の多くのものは姿を消したけれど、神戸が面白くなくなったとは言わない。その言葉は必ず私に返ってくるのだ。

 

 

タイトルはもちろん、内山田洋とクールファイブの「そして、神戸」をもじったもの。

 

筆者はこの曲を聞いても、神戸の町を思い浮かべることはできないといいますが、それでもこの曲が大好きだそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安田謙一

1962年神戸生まれ、神戸在住の「ロック漫筆家」

 

 

おつき合いありがとうございます。