2023年2月25日

NHK出版

 

 

ややこしい。

とってもややこしいです。

 

西暦1世紀、時の支配者・ローマに敗れ、国を追われヨーロッパ各地に散らばったユダヤ人。

 

キリスト教の支配するヨーロッパにおいては常に異端者であり、キリストを殺した民族として迫害や暴力を受け、特定の地域に追いやられることもしばしば。

 

にもかかわらず、ユダヤ人社会は発展し、東欧では活気あふれるイディッシュ文化も生まれます。

 

第二次世界大戦中の大虐殺を受けて高まる、自分たちの国をつくらなければ根絶やしにされるという意識、それ以前に始まっていたシオニズム(エルサレムに帰ろう)もあって、多くのユダヤ人がパレスチナに向かいました。

 

この「シオニズム」ひとつとっても、いろんな立場の「シオニスト」さんがいて複雑です。

 

さらに、ユダヤ人といっても、もともとパレスチナに残っていた人たち、ヨーロッパから戻ってきた人たちにはかなりの違いが生じていて、差別もあったりするわけです。

 

パレスチナ人が暮らしているところに、ここは私たちの国だからと「建国」するのですから、当然摩擦は生じます。

 

侵攻した地域に民間のユダヤ人を入植させ、パレスチナ人を国外に追放したり、はっきりと差別するやり方は、「アパルトヘイト」そのもの。

 

ユダヤ人の中にも、これはまずいと感じている人もたくさんいるようです。

 

 

興味深かったのはアメリカとの関係です。

 

アメリカのユダヤ人とは別に、福音派キリスト教徒がユダヤ人のイスラエルへの帰還と国家建設を支持します。

 

アメリカ人のおよそ4分の1を占める福音派キリスト教徒の80%が、ユダヤ人の国家建設を「キリストの帰還が近いことを示す聖書予言の成就」とみなすのだそうです。

 

本当なのか?

 

福音派キリスト教徒は、トランプ政権を強力に支持したグループでもあり、トランプを、かつてユダヤ人をバビロン捕囚から救った古代ペルシャの王・キュロスの再来だとみなしていたようです。

 

キュロスは信仰心もなく、立派な人物でもありませんでしたが、ユダヤ人を救うために神に用いられました。

 

だから、トランプが「無作法なふるまいをすればするほど、彼がイスラエルのための人間だという印象が強ま」ったのだそうです。

 

 

〈世界の紛争地帯〉をグーグルで検索すると、ウクライナ1億700万件、北朝鮮9500万件、イスラエルは1億8180万件もヒットするそうです。

 

「紛争の解決を求める人びとを支援することが、中東のみならず世界にとっても重要」と筆者は言います。

 

 

断片的にしか知らなかった紛争の歴史を、流れとしてつかむことができました。

 

 

クリストファー・ノクソンのイラストによる地図や挿絵が、絶望的になりがちな話に温かさを添えて、理解を助けてくれます。

 

 

 

 

 

 

おつきあいありがとうございます。