2022年8月30日

NHK出版

 

 

虫が減っている

 

ある年齢以上の方なら、言われてみればそうだと思うのではないでしょうか。

 

 

著者のデイブ・グールソンは1995年生まれ。

英サセックス大学の生物学の教授で、王立昆虫学会フェローです。

 

 

集約農業や森林伐採による生育域の減少に急激な気象変動が加わり、昆虫の存在は危機に瀕しているそうです。

 

 

 

昆虫がいなくなるとどうなるか

 

・昆虫は地球上の種の大部分を占めるから、昆虫の多くを失えば、地球全体の生物多様性が大幅に乏しくなる

・昆虫は地球上のあらゆる食物連鎖と密接にかかわっていて、いなくなれば鳥類や爬虫類、両生類、小型哺乳類、魚類の食べるものがなくなる

・送粉者である昆虫がいなくなることにより、膨大な数の植物種が結実できなくなる

 

 

とまあ、いろいろと支障があるわけですが、虫の中にはまだ知られていない種も多く、どの虫がどれだけ消えているか把握するのも大変そうです。

 

 

昆虫の減少はここ数十年で急激に進んでおり、それにはさまざまな原因が絡み合っています。

 

人の一生の間に相当数の種が消えてしまっているという現実を突きつけられると、人類の一人として申し訳ない気持ちになります。

 

 

 

まずは知ること、都市に緑を取り戻すこと

 

著者は「まだ手遅れではない」と言います。

私にもできることがあるでしょうか。

 

・草刈りの頻度を減らす

・タンポポなどを「雑草」と呼ぶのをやめて生えっぱなしにさせる

・在来植物を組み合わせた生け垣を作る

・果樹を植える

・庭では農薬を使わない

・コンパニオンプランツを用いる

・何もせず自然のままにする「ワイルド」な一画を設ける

・食べ物の残りでたい肥を作る

 

などが提案されています。

 

 

重いテーマを扱っていますが、ユーモアあふれる文章でとても読みやすいです。

合間に《私の好きな虫》というコラムもあって、変わった虫が紹介されます。

 

オスを光で誘って食べちゃう「ファム・ファタル」と呼ばれるホタルのことや、ある種のハサミムシのオスがペニスを2つ持っていることなど、興味深く読みました。

 

日本の一部地域ではハサミムシのことを俗に「チンポキリ」というのだそうですね。

ご存じでしたか?

 

 

「人間は自然の一部であり、自然に対して仕掛けた戦争は自分自身との戦争になる」~レイチェル・カーソン

 

 

お読みいただきありがとうございます。