2023年3月15日発行
産業編集センター
保育園の給食のおばちゃんが、在モンゴル日本大使館公邸料理人に!
国家資格の専門調理師全六部門を取得したという、食いしん坊の筆者のモンゴル滞在記です。
156万4,100k㎡という日本の約4倍広さの土地に暮らす人の数は340万人。
人口密度にすると、1k㎡に2.2人。
実に日本の150分の1です。
モンゴルは地方に行くほど旅人を受け入れる土地柄だといいます。
「目の前を通り過ぎたら、いつ人に会えるかわからない環境」で、「生きるための助け合い」「情報交換」だというのです。
そんなモンゴルで、遊牧民のゲルに泊めてもらい、彼らの食べているものを次々に求めていく筆者の行動力は刺激的です。
例えば、シベリア鉄道に乗って首都ウランバートルから、皮加工で有名なダルハンまで出かけます。
泊めてもらうのは養鶏家のバトさんの家です。
市場で手に入りにくい鶏肉を分けてほしいという筆者の申し出に、どこか歯切れが悪いバトさん。
どうやら鶏は卵を産むためのもので、家族の一員だと気づいた筆者は、自分の「食いしん坊」を黙らせます。
モンゴルでは動物たちとの暮らしがごく自然です。
羊も牛も食べるけど、血の一滴も無駄にしない。
『サピエンス全史』で読んだ、家畜が工業製品になる前の暮らしがそこにはありました。
気球に乗って見渡す草原には数えるほどのゲルと羊、山羊たちがちっぽけに見える。
こんなダイナミックでマクロな視点を体験すると、日々の些細なことなどどうでもよく思える。そして眼下の自身を含む地上の小さな生活やいのちを思う時、世界が一つの愛おしいものに変貌する。広い世界からすれば、私たちの暮らしはそれがどんな喜怒哀楽に満ちていようとも、小さい目の前の世界を懸命に生きている小さなとても小さな粒に過ぎない。
ホテルのロビーで頼む「コスモポリタン」というカクテルが毎回、同じ名前かと思うほど違っている。
五感からの情報を思索に昇華するには?蒐集とは別に頭で考える余白のような時間が多く必要だ。(中略)モンゴルの先人たちが自然のゆったりとした時間の中で培った知性を知るにつけ、情報に追われることで失われるものがあると知った。
見た目、日本人とそっくりな彼らが営む私たちとは異なる暮らし。
ご紹介したい言葉がたくさんありました。
お読みいただきありがとうございます。