2023年1月25日発行

晶文社

 

 

2016年、アメリカでは6万4000人が薬物の過剰摂取で死亡

年間の過剰摂取死の数は、2021年に10万人を超えている

 

 

死亡者数が増えたのは、近年になって特に強力な合成オピノイドが登場したためで、2021年の時点で、「過去20年間にこの薬物の過剰摂取で死亡したアメリカ人は約254万人にのぼる」そうです。

 

製薬会社が製造し、医師が処方した合法的な医薬品によってです。

 

 

本書は、この問題に最初に光を当てたジャーナリスト、バリー・マイヤーによる、製薬会社・パーデュー・ファーマー社の闇を暴くノンフィクションです。

 

長年の取材に基づく内容は、具体的で細部にわたります。

登場人物も多くて、読むのに難儀しました。

(冒頭に登場人物一覧があるんですが、『カラマーゾフの兄弟』より多いんじゃない?)

 

危険な麻薬を安全な薬と誤認させ、若者を含む多くの人を依存症におとしいれる内容は、正直読んでいて楽しいものではありません。

 

製薬会社の恐るべき手口に戦慄します。

 

 

1952年、アーサー・サックラーが製薬会社を買収し、設立した会社・パーデュー・ファーマー社。

 

アーサーは、1933年、ニューヨーク大学を卒業すると、同校の医学部に進み医学の学位を取ります。

 

製薬会社のコンサルタントとなったアーサーは、リブリウムとバリアムという、どちらもベンゾジアゼピンを成分とする薬をまったく違った薬であるかのように巧みに宣伝し、多額のボーナスと無利子の融資を得て巨万の富を築きます。

 

 

製薬会社がわずかな金額で作った薬を大きな利幅で販売して裕福になっていくのを見てきた彼は、自分もその恩恵にあずかろうと、設立した会社を弟たちに運営させます。

 

 

パーデュー社のやり方は、虚偽のデータを用いたり、金で雇った医師たちに自社製品の安全性を宣伝してもらうなど、とにかく利益が優先。

 

医薬品の製品化に許可を与えるFDA(食品医薬局)は欺かれていたのか、金を受け取っていたのか、その辺はわかりません。

 

危険な薬物を害がないかのように偽り販売していた同社ですが、さすがに被害が大きくなり、2000年代に入ると、連邦政府や州当局からも取り調べを受け、マスコミも監視の目を光らせるようになります。

 

しかし、パーデュー社は、「批判的立場の者や将来的に敵になるであろう人間に、金を渡し、職を提供し」「味方に引き込み、懐柔」するという方法でのらりくらりと危機を切り抜けていきます。

 

2003年に本書の初版が発行されてから、パーデュー社が破産に追い込まれるのは2019年。

 

1999から2018年までで、米国でオピオイド中毒による死者は45万人。特にパーデュー社はシェアが高く、過去の積極的な販売手法が明るみに出ていたといいます。

 

当時の日経の記事によると、計画には創業家サックラー一族による45億ドル(約4900億円)の資金拠出が含まれ、それによって一族は民事上の責任を免れるそうです。

 


 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。