みか子は京都の外語大学の学生です。

ドイツ語のスピーチのゼミに参加しています。

担当のバッハマン教授は、女子学生たちを「乙女」と呼びます。

 

テキストは『ヘト アハテルハイス』

『アンネの日記』です。

 

ある日、別の授業に乱入してきたバッハマン教授は、次のスピーチコンテストの暗唱の部の課題を発表します。

 

『ヘト アハテルハイス』

「1944年4月9日、日曜日の夜」です。

 

乙女たちがスピーチの練習に励む中、弁論の部のエキスパート、麗子様に黒い噂が流れます。

 

噂は乙女達の間にある緊張状態を生み出した。乙女たちは疑心暗鬼になった。常にお互いに確認する。本当に噂を信じているのか。(中略)ちゃんと汚らわしいものを嫌悪しているのか。それを確認する方法はただ一つである。ともに噂を囁き合うことである。

 

噂はうわさを呼び、麗子様は乙女たちから疎外されていきます。

 

噂を信じることができず、麗子様の自主練に一人参加し続けるみか子。

いつも同じ場所で言葉が出てこなくなるみか子に、麗子様が言います。

 

それがみか子の一番大事な言葉なんやよ。それがスピーチの醍醐味なんよ。スピーチでは自分の一番大事な言葉に出会えるねん。それは忘れるっていう作業でしか出会えへん言葉やねん。

 

 

『じゃむパンの日』というエッセイ集で、はじめて作者を知りました。

 

エッセイもおもしろかったけど、こちらもなかなかの意欲作です。

短時間で読めますが、読み終わった後、いろいろ考えさせられます。

 

 

先日のブログ記事でご紹介した本書を、購入してくださった方がいらっしゃいました。

もし読まれましたら、メッセージからでも、こそっと感想などお聞かせいただけたらうれしいです。

 

とき~どき、ご紹介した本を買ってくださる方がいらっしゃいます。

あるいは、図書館で借りて読んでくださる方も。

 

よろしければ、読んでみてどうだったか教えていただけると、励みになります。

「おまえの紹介した本読んだけど、ぜんぜんおもろなかったわ」とかいうのも、お聞きしたいです。

 

だって、人によって「おもしろい本」って違うでしょう。

 

それがまたおもしろいと思うんです。

 

 

2010年7月25日
新潮社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。