第二次世界大戦中のポーランドの話です。
夫と離れ、16歳のミンナと7歳のマルカをひとりで育てている、ユダヤ人の医師、ハンナ。
ある日、「ユダヤ人狩り」のうわさを聞き、娘たちを連れ、着の身着のままで国境を越えることに。
高熱を出して歩けなくなったマルカを知り合いに預け、上の娘とハンガリーに向かいますが、マルカを預かった人は、身の危険を感じて、マルカを追い出してしまいます。
たったひとりで見知らぬ場所に取り残されたマルカ。
飢えと寒さに耐えながら、その日その日をなんとかやり過ごしていきますが・・・
マルカは実際にいた人物です。
作者は本人から子ども時代の話を聞きましたが、実在のマルカは、つらかったときの記憶を自分の中で抑えつけ、切れ切れにしか語ることができなかったそうです。
なので、この話は作者のミリアム・プレスラーが、マルカが語ったことをふくらませた物語です。
それでも、実際に子どもたちが大変な思いをしたことは、想像できます。
過酷な経験は、末っ子で甘えん坊だったマルカをすっかり変えてしまいました。
マルカは泣きたかった。家を離れる前のように、また小さな子どもに戻りたかった。だが、心の奥で、そういう時代は終わったのだ、とわかっていた。
マルカが、母や姉と暮らしていたラヴォツネという町は、当時はドイツに占領されたポーランドでしたが、今はウクライナの一部です。
12月18日付の日経新聞で、訳者の松永美穂さんが、10年くらい前、ラヴォツネを訪れたときのことを書かれていました。
駅のベンチで列車を待っていると、近所のおばあさんがコーヒーを家から持ってきてくれたそうです。
平和な日々はいつ戻るのでしょうか。
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