誰もが知っている物語『シンデレラ』

 

1950年公開のディズニー映画でも有名です。

原案になっているのは、17世紀の宮廷詩人シャルル・ペローによる『サンドリヨン、または小さなガラスの靴』(ペロー童話集)

 

太陽王ルイ14世に仕えたペローは、宮廷で読まれる童話集を編み、その中には「赤ずきんちゃん」「長靴をはいた猫」などとともに「シンデレラ」も入れられました。

 

庶民伝承の素朴なお話が貴族受けする物語につくり直されます。

華やかな舞踏会での衣装など、宮廷色が満載なのだそうです。

 

ディズニー版では、その宮廷色はバッサリと切り捨てられ、フランスっぽさもなくし、20世紀のアメリカ人に受入れられるものになります。

 

美しいシンデレラは善で、醜い継母と姉たちは悪という二元論は、ディズニーがかけた魔法という中野さんの指摘は興味深いです。

 

シンデレラの類話は、世界中に300とも700ともあるといわれています。

 

誰もはけないガラスの靴などは、中国の纏足からきている可能性もあるようです。

日本の「鉢かづぎ姫」や「米福粟福」もサクセス・ストーリーのヒロインといえるそうです。

 

本書ではグリム版「シンデレラ」についても詳しく取り上げられます。

 

グリム版のシンデレラは恵まれない境遇を嘆いて、助けが来るのを待っているだけではなく、自ら行動する女性です。

 

ペローやディズニーの女性像と比べて、「グリム版シンデレラは、男性に伍して働かなければならなかった時代の庶民階級の女性、彼女らが否応なく身につけた賢さとたくましさが未来を切り拓く力となった姿そのもの」と中野さんはいいます。

 

では、どちらがヒロインとして愛されているか

 

誰もが知っているのはペローのシンデレラです。

 

「自主性がなく、受け身で自己主張もせず、みじめな境遇を変える努力すらしないヒロイン」

 

強い相手の横暴に耐える日々。非力な自分は泣くことでしか抵抗できないが、いつか奇跡が起こって全てが逆転し、復讐は果たされる・・・そんな夢。多くの人がこの物語に求める形がそれです。努力などせず叶う夢だから癒されるのです。努力は日常。夢でまで努力はしたくない。

 

 

なるほど

 

なんの努力もしないで奇跡のように報われる。

おとぎ話の癒し効果はそこにあったのか。

 

中野さんは子どもばかりでなく大人も、男性も女性もそんな夢を見たいのではないかといいます。

 

それこそが物語の醍醐味だと。

 

 

 

 

 

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