箱入り嫁さんのご紹介で読んでみました。

 

沢野ひとしさんは1944年生まれのイラストレーター、エッセイスト、絵本作家です。

 

ほのぼのとした画風ですが、本書の語り口もとってもおもしろいです。

 

 

モノを書く人というと、仕事場が散らかっている印象があるのですが、沢野さんのアトリエはスッキリです。

 

 

 

 

 

朝10分片づけ

朝起きて洗顔をしたら、リビングルームや机の上をまず片づける。このことをほぼ習慣にして、日課のごとく体を動かしている。

 

 

 

片づけも、一汁一菜

毎日行う片づけというものは、人を羨ましがらせたり幸せを見つけたりするためのものではない。自分が快適で心地良く、健康で幸せに生きるためのつつましい日課である。

 

 

 

明窓浄机(めいそうじょうき)の部屋

不要なものを周りに置かないことがなぜ大切なのか。それは、年齢を重ねるとよくわかる。常日頃「あれは大切」「これは思い出」などと色々なものを取っておくと、それらは年月を経て地層のように重なり、探すことすら不可能になる。若いうちはまだ探す体力だってあるだろう。しかし、物が溢れて検索不可能になる頃には、体はすっかり老いて動かなくなるのだ。そんなことでは清く静かな生活からはほど遠い。

 

 

 

洋服タンスの定期点検

定年退職しても明るく元気に生きている人は、タンスの中も明るいはずだ。タンスはその人の人生の鏡である。

 

いつまでたっても異性にもてたいと思うジジイこそ、充実した毎日を送れるものだ。

 

 

 
 

書籍は1階に3,200冊、2階に800冊の計4,000冊。

数を把握しているのがすばらしいです。

 

 

古本屋に売るときに価値がなくなることはわかっていながら、高価な美術書の箱をはぎ取って捨ててしまうなど大胆な沢野さんですが、原稿用紙は捨てられないとか。

 

 

何でも取っておく奥さんや、使ってないものを実家に置いてっちゃう子どもたちに悩みながら、やっぱりその語り口はユーモラスです。

 

 

ジジイは古い革靴を捨てたい。大事にしていたカメラももう捨てたい。十年前の携帯電話もレコード盤も捨てたい。帽子もコートも捨てたい。

 

机の中のすべてを捨てて、野山をパンツ一丁で駆けめぐりたい。その時こそ、きっとジジイはジジイであることの自由を満喫する。

 

モノを手放したことでいっとき寂しくなっても、ジジイの体と心は喜んでいるはずだ。朝日が眩しいように、一番大切なものが燦然と見えてくるからだ。

 

 

モノの片づけは、心の片づけでもある。

 

 

「ジジイの片づけ」は本人も周りの人も幸せにするそうです。

(まえがきより)

 

 

箱入り嫁さん、ご紹介ありがとうございました。

 

 

2020年10月10日第一刷発行

集英社