書店向け情報誌「日販通信」のエッセイ「書店との出合い」を書籍化したものです。

 

その執筆者たちがすごいです。

 

2011年2月14日発行

主婦と生活社発行

 

 

田中小実昌さん、北村薫さん、童門冬二さん、半藤一利さんといった60名の作家さんたちによる「書店との出合い」が載せられています。

 

1988年の山際淳司さんから、2010年の宮部みゆきさんまで、時系列に並びます。

 

みなさん、書き手さんである前にすぐれた読み手さんで、本屋さんへの思いはそれぞれたくさんありそうです。

 

 

中学3年生で野球をあきらめてめちゃくちゃ本を読み出したという周防正行さん。

プラモデルを見るために本屋さんに行って、たまに本を立ち読みしたという森博嗣さん。

500円の予算でまったく脈絡のない本を買ってむさぼり読んだという町田康さん。

 

 

子どものころは、そもそも本屋というものがなかったという養老孟司さんは、本屋なら古本屋。

 

生まれ育った鎌倉の若宮大路の露天で、『十五少年漂流記』を買ってもらったときは大変嬉しかったのを覚えているそうです。

 

 

「現在のように毎日たくさんの書籍が店頭に出る時代ではありませんでしたから、「新刊本」が一年二年はフツーに並べられていましたし、文庫本では、古本屋さんとどっこいどっこいの床しいものが、ページの端っこが黄ばんだりしながらも、棚に収まっていました」という宮部みゆきさんのお話には、そうだったかもと、かすかな記憶がよみがえります。

 

 

よく、こちらがどこどこへ行ったよなんていう話をすると、そうそう、あそこはねなんて、自分語りを始める人がいますが、これを読んでいると本屋さんにまつわる自分の思いがあふれてきます。

 

 

お金の神様・邱永漢さんがひょんなことから、本屋のオヤジさんをやっていた話もおもしろかったです。

 

 

無印良品のデザインなどで知られる原研哉さんは高校時代、文学好きの仲間と競い合って難しい本を読んでは文学談義をしていたとか。

 

その中で比較的読書傾向がマイルドだった同級生が後に作家になった原田宗典さんだったというのも興味深い。

 

 

分量にして1人3ページ。

同じテーマで、いろいろな方の「書店との出合い」を読むのは楽しいものですが、後々並べられることになるとは、作家さんにとっては少し恐怖かもしれないですね。

 

 

どの人の話も興味深くて一気読みしてしまいましたが、やっぱりうまい!と思う方はいらっしゃいました。

 

 

お読みいただきありがとうございます。