本当の自分って?

 

大人はあまり考えないようにも思われますが、監修の千葉雅也さんによると、定年退職した後の人でも問題になることがあるといいます。

 

歴史のある時期までは人それぞれにわかりやすくあった「役割」が崩壊して、「自由」になった今、「何をしたらいいかわからない」という状況になった。

 

アイデンティティの問題ですね。

 

 

NHKの「哲子の部屋」という番組で、放送された内容が本になったものです。

 

哲学者の千葉雅也さん、マキタスポーツさん、清水富美加さんが「本当の自分って何?」というテーマで語ります。

 

同シリーズとしては3冊目、2015年発行です。

 

千葉さんによると、「哲学」とは、日常のなかでなんとなく信じていること、信じ「させられている」こと、納得している「かのうよう」であること……にあえて疑いを向け、問題を整理し、言葉づかい(概念や倫理)を整理し、そうして「考えて生きるしかたをリセットする」のだそうです。

 

 

哲学とつきあいを続けるなかで、他の分野でなにかするときにも思考の「解像度が上がる」そうです。

 

 

なんかいいんじゃない。

 

 

番組ではサカナクションの『アイデンティティ』という曲や映画『変態仮面』などを教材に、「自分らしさ」について考察します。

 

 

「自分らしさ」にこだわる清水さん、自分らしさなんて自分で決めなくていいと悟っているかのようなマキタスポーツさん、ドゥルーズの現代哲学をわかりやすく紹介する千葉さん。

 

ドゥルーズは「人格」や「キャラクター」は着替える、要は「変態する」といいます。

 

「変態」とは、その都度、「仮の自分」にハマること

 

この「仮固定」という言葉を千葉さんの著書ではよく見かけるんですが、この辺が鍵なんでしょうか。

 

着地点としては、ハンパな自分を肯定し、追求するのではなく「中間」で良しとする

 

それでいいかと思うのですが、清水富美加さんは納得していない様子。

若さゆえなのか、いろいろ考えるたちなのか。

 

 

〆のロゴス

「人はみないろんなパンティーをかぶっている?」

 

 

たとえば、自分が「嫌いな人」っていうのもね、その人がずっとね、本質的にすごく嫌いな奴だって思い込んだらもう耐えられないじゃないですか。でも、その人もいろんな変化をしていて、「たまたまこの人、今日は嫌いなパンティーをかぶっているんだな」というぐらいに思えば、多少楽になるかもしれないし。

 

 

こういうふうに考えるのっておもしろい。

 

薄い本ですが、ちょっと深い話です。

 

 

お読みいただきありがとうございます。