北海道日高・浦河町。

「サラブレッドの町」として知られ、多くの競走馬を生産する「優駿のふるさと」でもあります。約100年の名馬生産の歴史を持ち、町内には約200の牧場があるそうです。

 

装蹄師の平野敬は引退した馬が暮らす養老牧場を営んでいました。

 

もともとこの牧場は、敬の幼馴染・和泉亮介の実家でした。

しかし、中央で騎手として活躍していた亮介は覚せい剤所持の罪で刑務所に入れられ、亮介の父親は不肖の息子の代わりに、敬に牧場を託します。

 

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千歳グループは、日本競馬会の異端児と呼ばれた中村栄吉が千歳市の郊外に作った千歳牧場を母体とする大牧場の集合体でした。栄吉の3人の息子たちが、それぞれ千歳牧場、ノール・ファーム、登別ファームという三つの牧場を率いて、中小の生産者たちを圧倒する成績を挙げていました。

 

日高では、打倒千歳グループが悲願となっていました。

 

装蹄師としての敬が、超一流の素質を秘めていると興奮したのは「エゴンウレア」という馬です。

 

プライドが高く、人間に従うことをよしとしないエゴンウレアは、競馬ファンから〈シルバーコレクター〉と呼ばれていました。

 

G1などの重賞でも活躍し、二、三着には来るが勝ちきれない……

レースで手を抜いていると、敬は見ていました。

 

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刑務所から出所してきた亮介や敬、牧場主が、エゴンウレアのG1制覇を目指して繰り広げるドラマです。

 

競馬をまったくわからない人にも親切に書かれているので、楽しめると思います。

 

 

賭け事らしくヤクザも登場するのですが、その辺はちょっとご都合主義的な展開だったかな。

 

 

 

「競馬さえなくなれば、悲しい末路を迎える馬もいなくなる」という考えに敬が答えます。

 

 

やはり、競馬は美しい。その思いがね、消えないんだ。一頭の勝利の陰で、何十頭、何百頭という馬が一勝も挙げることができずに死んでいくという現実を踏まえても、やっぱり、競馬は美しい。

 

 

馬って、やっぱり人の気持ちがわかるんでしょうね。

登場する馬が賢くて魅力的でした。

 

 

2021年12月10日発行
集英社
 

 

 

 

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